若手男優のホープ東出昌大も出演!傑作スリラー『クリーピー 偽りの隣人』

(C)2016「クリーピー」製作委員会 

最近の日本映画界における若手俳優の躍進はめざましいものがありますが、そうした注目株のひとりに東出昌大がいます。

1988年2月1日生まれ、モデルを経て2012年に『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビューして第67回毎日映画コンクールや第36回日本アカデミー賞の新人賞を受賞。

13年から14年にかけてはNHK朝のTV小説『ごちそうさん』でヒロインを演じた杏の夫役を好演して、お茶の間にも人気が広がり(15年には、その杏と結婚したことも嬉しいニュースでした)、同時に14年の『アオハライド』や『寄生獣』などの演技で第88回キネマ旬報ベストテンや日韓スポーツ映画大賞の新人賞を受賞。以後も『GONINサーガ』(15)や『聖の青春』(16)などの映画、『あなたのことはそれほど』(17)などのTVドラマに大活躍中。

今年も6月1日から『OVER DRIVE』、6月30日『パンク侍、斬られて候』、7月7日『菊とギロチン』、7月14日『ピース・ニッポン』9月1日、『寝ても覚めても』、11月1日『ビブリア古書堂の事件手帖』と話題作に続々出演。

今回は、そんな東出昌大が俳優として飛躍していく成長過程のさなかに出演した黒沢清監督の傑作サスペンス・スリラー映画『クリーピー 偽りの隣人』をご紹介したいと思います。

不気味な隣人に翻弄されていく
犯罪心理学者とその妻の行方

映画『クリーピー 偽りの隣人』は、実際に起きた北九州一家殺人事件にヒントを得て記され、第15回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した前川裕の小説『クリーピー』を原作にしたものです。

主人公は、元刑事で犯罪心理学教授の高倉幸一(西島秀俊)。1年前にサイコパスの説得に失敗して人質を死なせ、自らも負傷した彼は、自責の念で警察を辞め、大学に勤務するようになり、過去を払拭するかのように妻の康子(竹内結子)とともに新しい町に引っ越してきます。

しかし、その隣人・西野(香川照之)と家族は、どこか奇妙で不気味なのでした。

そんな中、大学の同僚の誘いで6年前に起きた一家失踪事件の分析を頼まれた高倉は、そこでかつての相棒・野上刑事(東出昌大)と再会。

野上もまたその事件の謎を追っており、彼とともに事件の唯一の生き残りである長女・早紀(川口春奈)の記憶から事件の核心にたどりつこうとしますが、なかなかうまくいきません。

一方、隣人・西野の奇妙な言動の数々に対して、高倉は犯罪心理学者として不信感を抱くようになりますが、康子もまた一家に翻弄されるようになっていきます。

そんなさなか、西野の娘・澪(藤野涼子)が高倉に告げました……。

「あの人はお父さんじゃない。知らない人です」

(C)2016「クリーピー」製作委員会 

ざわざわと人の心の闇を
増幅させる黒沢清監督作品

“クリーピー”には「ざわざわする」といった意味がありますが、その通り、本作は実に心をざわざわと、不穏な気持ちにさせてくれる作品です。

サイコパスによって心に傷を負った主人公が、不穏な事件の謎に挑むストレスと不穏な隣人がもたらすストレス、そしてなぜかその隣人のペースに巻き込まれていく妻……。

ここには理屈では割り切れない人間の心理の複雑怪奇さが、単に台詞などで語られるのではなく、画に映るものすべてによってもたらされていきます。

これぞ人の心の闇に触れたサスペンス・ホラーのジャンルに秀でた名匠・黒沢清監督作品ならではの味わいともいえるでしょう。

キャスティングのバランスも巧みで、生真面目さゆえのイライラ感を醸し出す西島秀俊、シンプルな佇まいの中に心の闇を忍ばせる竹内結子、見た目の怪演をあえて意識させながらマインドコントロールの達人として迫り来る香川照之……。

その中で東出昌大は、主人公のかつてのミスを許しているのかいないのかを顔に出さないまま、彼を失踪事件の調査へ誘う野上刑事を真摯に体現しながら、さりげなくも映画の不穏感を増幅させることに貢献しています。

黒沢監督も東出昌大のことを大いに気に入ったのでしょう、この後侵略SF映画『散歩する侵略者』(17)の牧師役を経て、そのアナザーストーリー『予兆 散歩する侵略者』(17/TV放送の後、劇場公開)の真壁司郎役に起用され、そこでも大いに異彩を放つことになりました。

冒頭で触れたように、今年も出演作が目白押しの東出昌大。ますます目が離せない日本映画界のホープとして、今後の活躍を大いに期待したいところです。

[2018年6月1日現在、配信中のサービス]
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(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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