映画コラム

REGULAR

2020年10月30日

シッチェス映画祭で話題を集めた2つの作品

シッチェス映画祭で話題を集めた2つの作品




もうすぐハロウィンがやってきますが、コロナ禍の中、節度を保ちながら楽しんでいただきたいものと切に思う次第の昨今です。

さて、ハロウィンといえばファンタスティック映画。ファンタ映画といえばシッチェス映画祭。

この映画祭は、1968年にスペイン・バルセロナ近郊の海辺のリゾート地シッチェスで毎年10月に開催されているもので、ブリュッセル及びポルトと並ぶ世界三大ファンタスティック映画祭の代表格でもあります。

日本でも、このシッチェス映画祭で上映された作品群の中から厳選したものを特集上映する催しが定期的に行われています。

今年も「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2020」が10月30日より東京・名古屋・大阪にて開催!

というわけで、今回はシッチェス映画祭で上映されて話題を集め、日本でも上映。現在、配信にて鑑賞可能な作品の中から2本をご紹介したいと思います。

イジメと食人鬼を融合させた
青春ホラー『怪怪怪怪物!』





『怪怪怪怪物!』(17)は、イジメがはびこる高校を舞台にした台湾の青春ホラー映画です。

何とこの作品の監督&脚本を務めたのは、日本でも2018年に山田裕貴&齋藤飛鳥主演でリメイクされた『あの頃、君を追いかけた』(11)のデギンズ・コー。

しかし青春とホラー要素を表裏一体のものとして繰り出される人間の心の闇を突いた諸描写の数々に圧倒されるとともに、唸らされることばかりなのでした。

冒頭いきなり、ふたりの食人鬼が登場してのスプラッタ・シーンにゲゲゲッとなります。

続いて映画は、クラス中からイジメを受けている少年リン・シューウェイのエピソードになりますが、おれがまた怪物以上にえげつなく、さらには担任まで「いじめられる側も悪い」みたいな態度を露にしていて、何だか、もう、本当に……といった沈鬱な気分にさせられます。

やがてリンは、その担任からイジメっ子3人とともに奉仕活動をやらされる羽目になるのですが、そこで彼らは食人鬼と遭遇するも小さいほうを捕まえ、独自の実験を開始。

この実験、拷問そのもので、これまた本当に、もう……。

しかし、食人鬼はもうひとりいます。

やがてそのもうひとりによって、やがて惨劇の幕が開くわけですが、それら残酷描写もスタイリッシュに描かれていて、これまた唸らされます。
 
特にYen Town Band Charaが歌う《マイ・ウェイ》をバックに流しながらの、スクールバスの惨劇のくだりは圧巻!

かくして本作は、思春期特有の心に潜む邪悪な闇の要素を抽出しながら、実は人間こそが最大のモンスターであると言わんばかりに、ついには食人鬼の哀しみまでをも描出していくのでした……。

シリーズ最新作にして再始動
『パペット・マスター』





『パペット・マスター』といえば、1989年より作られ続けるカルト的な人気ホラー・シリーズですが、本作『パペット・マスター』(18)はその最新作で、第1作のその後を新たにリブートしたものでもあります。

監督は『悪霊のはらわた』のソニー・ラグーナ&トミー・ヴィクランドのコンビで、ホテルに閉じ込められた人々と人形たちの恐怖の戦いを、流血とブラックユーモアを交えながら描いていきます。

妻と離婚して故郷へ戻った漫画家のエディは、今は亡き弟の部屋で1体のパペット人形を発見しました。

それはかつてポストヴィルの連続殺人に関与したとされるアンドレ・トゥーロンが制作したもので、彼にまつわる品々のオークションがポストヴィルのホテルで開催されることを知り、友人らと現地へ赴きます。

しかし、アンドレ・トゥーロンの正体はナチスの狂えるパペット作家であり、オークションにかけられるのは彼が作り上げた殺人人形たちだったのです。

まもなくして、エディのもとから消え失せたパペットも含めた殺人人形たちは、ホテルに泊まる客を次々と襲い始めていき……。

全体的にシリーズ第1作が作られた80年代テイストが醸し出されていて、その第1作目に出演していたバーバラ・クランプトンや、『ストリート・オブ・ファイヤー』のマイケル・パレ、『処女の生血』のウド・キアといったベテランが脇を固めているのもお楽しみ。

しかし最大のお楽しみはやはり、不気味ながらもどこかしら可愛く、それでいて残忍極まる殺害の仕方とのギャップが闇の愉悦的な魅力にもなっているパペットのキャラクター性にあるでしょう。

人形ホラーと聞くと『チャイルド・プレイ』シリーズを思い浮かべる方も多いかと思われますが、こちらもなかなかどうして人形ならではの“キモ可愛くて怖い”要素を際立たせながら、特に後半は過激すぎるほどの血まみれゴア描写を展開させていくシリーズ最新作なのでした。

(文:増當竜也)

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