『殿、利息でござる!』は、新年にお金を貯めたくなる(!?)庶民派時代劇

殿、利息でござる!

(C)2016「殿、利息でござる!」製作委員会

時代劇と一口に言いましても、実はいろいろジャンルがありまして、チャンバラに力を入れたアクションものがあれば、武士道の批判を描いた社会派作品もあれば、歌舞伎や浄瑠璃を原作にした古典文学的な作品も多々あります。

そして今回ご紹介するのは、このところちょっとした流行ともいえるコメディ時代劇『殿、利息でござる!』です。

現代のニーズに即した
松竹の庶民派時代劇ヒット作群

松竹では人情の機微を重んじた大船調と呼ばれる現代劇とともに、古くから時代劇を製作し続けています。

それこそ21世紀に入っても、山田洋次監督の『たそがれ清兵衛』(02)をはじめ、先達の伝統を受け継ぎながら、現代のニーズに即したユニークな作品群を世に送り出してきているのです。

その中で、ひときわ目立つようになってきたのが森田芳光監督『武士の家計簿』(10)に始まるコメディ・タッチの時代劇で、しかもそれらは武士の日常生活にスポットをあて、サムライもまた月給をもらって生活するサラリーマンであり、いつの時代も生きていくためにはお金は必要なんだよねといった視点が貫かれていました。そしてそれは、世界的な閉塞状況に陥って久しい21世紀のご時世に見事フィットするものがあったのです。

その後、朝原雄三監督の『武士の献立』(13)や、本木克英監督『超高速!参勤交代』2部作(14・16)と、サラリーマンとしての武士社会をユニークに描いた時代劇が立て続けにヒット。また原田眞人監督『駆込み女と駆出し男』(15)のように女たちの駆け込み寺をモチーフとしたものも話題を集めました。

こうした流れの中で、松竹120周年記念作品として製作され、またまたクリーンヒットを飛ばしたのが『殿、利息でござる!』なのです。

殿、利息でござる!

(C)2016「殿、利息でござる!」製作委員会

藩にお金を貸して利息を巻き上げろ!
実話を基にした庶民の節約感動美談!

映画『殿、利息でござる!』は、『武士の家計簿』の原作者でもある磯田道史が著した『無私の日本人』を原作に繰り広げられる、いわば金融コメディ時代劇です。

今からおよそ250年前(1766年)の江戸時代。仙台藩の重い年貢によって破産や夜逃げが相次ぐ宿場町・吉岡宿に住む穀田屋十三郎(阿部サダヲ)は、知恵者の菅原屋篤平次(瑛太)から町を救う妙案を聞きました。

それは、藩に大金を貸し付け、利息を巻き上げるというもの!?

かくして吉岡宿の人々は1000両(今でいう3億円)もの大金を水面下で集めるという、前代未聞の頭脳戦を開始!

計画がばれたら、打ち首必至!

しかし十三郎とその弟・甚内(妻夫木聡)ら仲間たちは、これまで百姓や町人ら庶民がお上から搾取されまくっていた年貢を取り戻す“逆転の発想”でもあるこのミッションを遂行すべく、節約に節約を重ねながら、ひたすら小銭を貯めていくのでした!

殿、利息でござる!

(C)2016「殿、利息でござる!」製作委員会

ちなみにこれは実話の映画化、トゥルー・ストーリーであります。

監督は、『チーム・バチスタの栄光』(08)『白ゆき姫殺人事件』(14)のようなミステリから『映画怪物くん』(11)のような特撮ファンタジー、『残穢―住んではいけない部屋―』(16)のようなホラーまで多彩なジャンルを手掛ける才人・中村義洋。今回はお上に挑戦する庶民の反骨精神をコミカルに描きつつ、現代の観客が日々抱える鬱屈を大いに払拭させてくれます。

またこの作品、集団劇としてかなりの豪華キャストで、阿部サダヲをはじめ瑛太、妻夫木聡、竹内結子、松田龍平、寺脇康文、西村雅彦、千葉雄大、山本舞香、さらには山崎努、草笛光子といった大ベテランが勢揃い。

映画は節約のお話でも、キャスティングは節約していません!

斬った張っただけではないカタルシスと、また庶民の意地がいつしか感動までもたらす『殿、利息でござる!』、年末年始に見る映画としても実にふさわしいものがあるでしょう。

大人には節約の勧めを、子どもにはお年玉の貯金を、新年の誓いとして促してくれるかもしれません!?

[この映画を見れる動画配信サイトはこちら!](2017年12月29日現在配信中)
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(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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