『ボストン ストロング』ダメ男の再起とヒーローの存在理由を問う展開は正に「アイアンマン」!

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未だに我々の記憶に鮮明に残っている、2013年4月15日に起きたボストンマラソンでの爆弾テロ事件。その爆発に巻き込まれて両足を失った青年の姿を描いた『ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれた』が、5月11日よりついに全国公開された。

ポスターの印象からは、不慮の事故にもめげず不屈の精神で立ち上がる青年の話に思えた本作。今回は公開二日目夜の回で鑑賞してきたのだが、果たしてその内容はどんなものだったのか?

ストーリー

ボストンで暮らすジェフ・ボーマン(ジェイク・ギレンホール)は、元彼女エリン(タチアナ・マスラニー)の愛情を取り戻すため、彼女が出場するマラソン会場に応援に駆け付ける。しかし、爆破テロがゴール地点付近で発生し、巻き込まれたボーマンは両足を失う。ボーマンは意識を取り戻すと、爆弾テロリストを特定するために警察に協力する。ボーマンの証言を元に犯人が特定され、ボーマンは一躍“ボストンのヒーロー”として世間の脚光を浴びるが、彼自身の再生への戦いはまだ続いていた。

予告編

実はマーベル映画ファンにもオススメの本作、その展開は正に『アイアンマン』だ!

結論から言うと、鑑賞前に思っていた様な不屈の精神の青年を描く内容とは全く違い、あくまでも普通の青年がもがき苦しみながら、やっと成長するまでの物語だった本作。

例えば映画の冒頭で描かれるのは、野球に行きたいから残業は出来ないと上司に普通に言えてしまう、主人公ジェフのあまりに普通の青年の姿。だが、彼が勤めるコストコの上司も同僚の黒人女性も、そんなジェフの行動に理解を示し、野球の方を優先させてくれるのだ。

未だに元カノにも未練たらたらで、進んで彼女の募金にも協力する、情けない位に等身大の青年であるジェフだが、それでも周囲の人々に愛される男である点が観客に示されるこれら序盤の展開は実に上手い。既にこの序盤で観客がジェフに好意を持ち感情移入しやすくなることで、後半爆弾テロに遭ってからの過酷な状況とのギャップや、彼の深い絶望と苦しみが我々の胸に真に迫ってくるからだ。

あえて事件の瞬間には描かれない、事件現場のあまりに凄まじい惨状や地獄絵図はラストでやっと描かれるのだが、このシーンは本当に臨場感満点で凄かった!確かにこれでは、ジェフが退院後もPTSDやフラッシュバックに苦しめられるのも無理はない。そう思えるほどの凄まじさなのだが、更に退院してからも辛いリハビリや日常生活の不便さが彼を苦しめることになる。

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何で自分だけがこんな目に遭うのか?生きていても仕方がない・・・。そんな考えが彼を子供じみた行動に走らせ、やっとヨリを戻し献身的に支えてくれている彼女への辛い態度や自暴自棄な行動へ走らせてしまう。

いつもそばにいて支えてくれる彼女には、その弱音を吐く姿を見せられるのだが、家族や友人たちには決して自分の弱音を見せないジェフ。だが、それまで押さえていた負の感情や不平不満が、堰を切ったように爆発する車内のシーンで明らかな様に、実はジェフ自身の心の中にも、彼女を応援にさえ行かなければ自分は両足を失わずにすんだのに、その想いが渦巻いていたことが分かる。

そんな彼が自分の命の恩人とついに対面しようと決意した時、彼の人生は一変することになる。そう、自分の命が助かった理由と自分の使命に気付かされた彼は、それまでの自身のクズな生活態度を改め、本格的に両足の義足を装着してリハビリに挑むのだ。その姿は正に、映画『アイアンマン』1作目のトニー・スタークの姿そのもの!
この様に、実はマーベル映画のファンにもオススメの本作。スーパーパワーを持たない、等身大のヒーロー誕生の瞬間は、是非劇場でご確認を!

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アラフォー世代には懐かしい、あの俳優が実は出演していた!

実は今回、最後のエンドクレジットを見て驚かされたことがある。

何故なら、アラフォー世代にとっては『ハイランダー・悪魔の戦士』の強烈な悪役として今も強烈に記憶に残る俳優、クランシー・ブラウンの名前がいきなりエンドクレジットで大きく出てきたからだ。

今回は事前に全く出演キャストをチェックしていなかったのだが、主人公ジェフの父親ビッグ・ジェフとして登場した彼の姿は、さすがに『ハイランダー』のあの狂気の悪役とは全く違う、正にアメリカの善き父親のイメージそのもの!

ただ一点だけ、残念ながら本作の公式サイトでの彼のプロフィールの出演作に、何故か『ハイランダー』が含まれていなかったのはちょっと寂しかった、とだけ言っておこう。

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最後に

原題の『STRONGER』が表す様に、突然の不幸に押しつぶされそうになりながら、最終的に自身に強さを与えてくれる周囲の存在に気付き、一人の男として成長し他者への責任に目覚める主人公の姿が描かれる本作。

自分をあの地獄絵図の中で救ってくれた恩人カルロスに会ったジェフは、彼の抱えた悲しい過去と、それを乗り越えて生き方を変えるチャンスの大切さを知る。

自分のことばかりいつまでも哀れんでいては、将来自分が救える命や人々を見逃すことになる。

そう、人々に勇気を与えるヒーローもまた、救われた人々によって逆に自分が勇気と希望を貰っていることに、彼はついに気付くのだ。

勇気を持って善きことを成すこと。その連鎖がやがて大きな希望と勇気となり人々を繋ぐという、ラストの素晴らしさ!

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自身の身に起きた不幸を哀れんで悔やんでばかりいたジェフの時計は、言うならば永遠にあの爆破事件の日で止まったままだった。

自分ではドアも開けられず彼女を見送るだけだったジェフの時計が再び動き出し、ついに最後に見せる成長した男の姿は必見!

確かに、それまでの子供っぽさや情けない姿を考えれば、微々たる成長に思えるかも知れない。だが、いやそれだからこそ、変に飾らず自身の素直な気持ちをそのまま口にした、ラストのジェフの一言に重みがあるのだ。

過去の辛い出来事を悔いて後ろを振り返るのを止めて、自分の生き方を変えて一歩前に踏み出すことがどれだけ困難で、しかし大事なことか?それを我々に教えてくれる、この『ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれた』。主人公の内面の葛藤や変化を、見事にその表情で演じ分けるジェイク・ギレンホールの演技が素晴らしいので、全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)

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