『カラー・アウト・オブ・スペース―遭遇―』レビュー:SF恐怖の醍醐味が炸裂!

おぞましさと美しさが同居した
ラブクラフト原作映画の代表作

本作は隕石=地球外変異体の落下によってすべてを狂わされていく家族の恐怖を描いたもので、海外の批評では『遊星からの物体X』とも比較される、いわゆる侵略SFホラーとして評価されているようです。

が、いざ見てみるとおぞましさと美しさが絶妙のバランスで同居した不可思議かつ究極のダーク・ファンタジーとしても屹立しています。

これは原作の「宇宙からの色」の“色”=“color”に作り手がとことんこだわった結果でもあり、思わずそ見とれてしまうほどの色彩美がおぞましい恐怖をもたらすという仕掛けの数々に驚嘆しつつ唸らされること必至でしょう。

全体の構成も、冒頭はファミリー映画を見ているようなほのぼのとした風情だったのが、隕石の落下によって徐々に不穏な空気に支配されるようになっていきます。

秀逸なのはこの前半から中盤にかけての不穏描写の数々で、果たしてこれは隕石のせいなのか、事件に過剰反応しての心理的不安がもたらす妄想なのか、それとも水質汚染が何某かの影響を与えてしまっているのか……。

それらの疑問に映画は答えることなく、やがて怒涛の、そして最も美しいクライマックスが訪れます。

つまりはいろいろな解釈が可能な作品であり、それでいて見終えた後、意外なまでにすべてが腑に落ちたかのような奇妙なカタルシスに包まれる作品でもあります。

あたかも『シャイニング』のジャック・ニコルソンを彷彿させるニコラス・ケイジのいかれた“アメリカの親父”的演技もさながら、そんな彼の父親ハラスメントに巻き込まれてしまう3人の子どもたちも印象的。

肩ひじ張って鑑賞する類いのものではなく、むしろフラリと何気なく映画館に立ち寄って見てみたら……何と‼ 

そんな映画の醍醐味を堪能できるカルト的な秀作です。

海外では既に多くのマニアから「ラブクラフト原作映画の代表作!」の評価を得ているのも、大いにうなづけるものがあるのでした。

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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