『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』レビュー:スターと少年の文通がもたらす一大スキャンダル!

オシャレで気品高く
奥深い人間ドラマの秀作

本作は、カナダで子役として活躍していた8歳のグザヴィエが、憧れていたスター、レオナルド・ディカプリオに手紙を宛てたことをヒントにストーリーを構築したものです。

スターと少年の文通とは、一見なかなか良い話ではないかと思われそうですが、それがなぜ一大スキャンダルに発展してしまうのか?

そこは本作の最大のキーポイントなのでネタバレは避けたいところですが、何とも世の偏見とは恐ろしいものであることを改めて痛感させられるとともに、それによって純粋な想いが傷つけられていく世の無情に忸怩たる想いが湧き上がってくることでしょう。

登場する俳優陣も『ポンペイ』(14)やTVドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』(11~19)で知られるキット・ハリントンと『ルーム』(15)の天才子役ジェイコブ・トレンブレイを主演に、ナタリー・ポ-トマンやスーザン・サランドン、キャシー・ベイツ、タンディ・ニュートンといった実力派女優がグザヴィエ監督作品独自の世界観に惚れ込んで助演という、なんとも贅沢かつ潤沢なキャスティング!

撮影はフィルムでなされ、中には70ミリを回したショットもあるというこだわりよう!

またアデル(今回オープニング曲を担当)などのPVなども演出してきたグラヴィエ監督ならではの映像と音楽の融合も抜群のセンス!

さらには自身「俳優や監督ではなかったらファッションデザイナーかインテリア・デザイナーになっていた」と語るほど秀逸な美術、特に衣装は素材選びから携わるという念の入れよう!

こうした画と音の力を得て、本作は一つの愛の悲劇と同時に、グラヴィエ監督作品ならではの“母と息子”のモチーフをも巧みに追及してゆきます。

オシャレで気品高く、そして奥深い優れた人間ドラマとして強くおすすめしたい秀作です。

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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