エログロモンドな殺人寿司遊戯!『ゲームマスター』と新人監督映画祭

(C)『ゲームマスター』製作委員会

閉塞空間に見知らぬ男女が閉じ込められて繰り広げられる惨劇を描いたホラー映画は数多くありますが、これらのキモは監督のセンスに負うところが大きいでしょう。

ここにまた1本、ユニークな密室ホラー映画が公開されます。ただし、この作品、奇想天外というか人を食っているというか、ホラーのような、コメディのような、モンド的怪作に仕上がっているのです……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.269》

石井良和監督作品『ゲームマスター』。

何とここで繰り広げられるのは、いわば殺人寿司によるロシアン・ルーレットのようなゲームなのでした!

モンド感覚のデス・ゲーム
狂乱のエンタメをめざして!

『ゲームマスター』の内容は……地位も年齢も職業もバラバラな、見知らぬ9人の男女が密室で目を覚まします。

そこに銀のマスクに侍の恰好をした謎の男“ゲームマスター”が現れます。

(C)『ゲームマスター』製作委員会

彼はみんなにゲームをしようと言い、拒絶する者は問答無用で叩っ斬られます!

彼が始めるゲーム、それは運ばれてくるお寿司を食べるだけ。

ただし、そのお寿司の中には1個だけ毒が入っています……。

そう、これはいわばロシアン・ルーレットの殺人寿司版みたいなものであり、最後まで食べ続けて生き残った者ひとりだけが外に出られるというものでした!

正直、ここまで読まれて、そんな作品よくあるよと突っ込みたくなるマニアな方もいるかと思われますが、本作はいわゆる密室ホラーとしての恐怖性よりも、むしろその中で繰り広げられる狂態をモンドチックに描くことに主眼を置いています。

実際、劇中繰り広げられるのは殺人寿司ゲームだけでなく、まるで小学生レベルの単純なおちゃらかしなものからレイプにカニバリズムなどなど、良くも悪くも無邪気で多彩、しかもそういったお子ちゃま情緒をもって、邪悪でむごたらしい殺戮を強いらせるといったものに終始しているのです。

その一方で、低予算ながらもこだわりを示す美術や衣裳などのジャパネスクなサイケ感覚、これに子どもらがお泊りしながら繰り広げるようなチープな遊び感覚をミックスさせながら、どこかしら狂える大人のエンタメとして、観客に甘美な毒を喰らわせる、本作はそんな作品なのです。

(C)『ゲームマスター』製作委員会

第4回新人監督映画祭で
次代の映画界を担う逸材を発掘!

監督の石井良和は、『ウルトラマンギンガ』などの特撮監督として特撮ファンにおなじみの存在ですが、今回はTVなどではおよそ表現できない人間のブラックな情緒を、コミカルな毒をもって描出することに腐心しています。

実は石井監督、『トラック野郎』シリーズから『温泉すっぽん芸者』『少林寺拳法』『ドカベン』などなどエロ&グロ&アクション、さらにはコミック原作ものとジャンルを問わない数々の東映カルト映画で名を馳せた鬼才・鈴木則文監督に師事しており、今回は師匠から受け継いだ異能のセンスを存分に発揮したものとして受け入れることができます。

また70年代末から80年代にかけてのインディペンデント映画界は『ヘリウッド』『星くず兄弟の伝説』など、モンド感覚に満ち溢れた狂乱カルト作品も多く作られており、本作はそういったもののオマージュであり、現代への変換のようにも思われます。

数々のゴア描写の中にも、たとえば『ファンタズム』『バトル・ロワイアル』などカルト映画先達群のリスペクトが感じられるあたり、シネフィルもニマニマさせられることでしょう。

本作はスペイン・サンセバスチャンホラー&ファンタジー映画祭に出品されて喝采を浴び、11月11日(土)から1週間、東京ユナイテッド・シネマ豊洲にてレイト公開されます。

これはちょうど同時期に同劇場で開催される第4回新人監督映画祭とも連動したもので(本作は第3回新人監督映画祭の招聘作品でもありました)、せっかくなのでこの映画祭についても少しふれておきましょう。

新人監督映画祭は、技術の進歩によって映画制作が以前より容易になるも、なかなかビジネスとしては成立させづらい中、「新たなる才能を世界へ」をコンセプトに、インディペンデントで活動する若手&新人監督たちに発表の場を与え、クリエイターと観客双方の意識を高めていこうという趣旨で4年前から始められたものです。

今回も11月11日から1週間、特別プレミアの牡景峰監督『俺を救世主と呼べ』や、中田圭監督『再恋(サイレン)』、やなぎさわやすひこ監督『バーサーカーズ』などなど、国内外の次代を担う気鋭の作品が大挙上映されます。

『再恋(サイレン)SIREN』(中田圭監督・佐野紫音主演)17日16時半上映

※詳細は下記ホームページまで
http://ndff.net/

『ゲームマスター』ともども、ぜひご来場のほどを!

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(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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