映画コラム

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2017年11月18日

アクション、イケメン、大団円!『ハイロー』ここに完結!!

アクション、イケメン、大団円!『ハイロー』ここに完結!!



(C)2017「HiGH&LOW」製作委員会



邦画界におけるアクション映画で、ここまでの成功と成果を上げたシリーズはほかにないのではないだろうか。ドラマに始まり、ライブステージすらその流れに取り込み、映画ではシリーズを追うごとに、アクションも、物語も破格のスケールアップを遂げていく。そんな、近年の邦画界を代表する作品とも呼べる『HiGH&LOW』シリーズが、ついに完結を迎えた。それが、今回紹介したい『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』だ。

正直なところ、同シリーズについて書くときはこのような改まった文体で綴ることに抵抗がある。本来なら「ハイロースゲーーー!」だとか「マイティウォーリアーズイェア!!」くらいのノリで書くべきなのだとは思う。そんな“ハイテンション”がシリーズの持ち味でもあると思うのだが、今回の「FINAL MISSION」はこれまでになくシビアなストーリーが展開するので、このような真面目な文体にならざるをえないところがある。

そう。本作で描かれているのは、これまでシリーズが見せていた“少年たちのケンカ”、或いはそのキャラクターの延長上にある闘いとは違い、彼らがいずれなるであろう“大人”の、生死を懸けた“喧嘩”を描いている。それは彼らが掲げる「絆」や「拳で語る」などといった生易しいものではなく、まさに死と隣り合わせの、厭らしいまでの金と権力に塗れた“大人の喧嘩”なのだ。



直面する残酷な世界


前作の「END OF SKY」というタイトルが暗に彼らの“青春の終わり”を表していたのなら、その通り“少年たちのケンカ”は前作で既に一つの区切りを迎えていた。本作では、MIGHTY WARRIORS連合チームとの死闘を終えた直後に、敵対する九龍グループと対峙した前作ラストの緊張感漂うシーンから幕を上げる。岩田剛典演じるコブラが見事な蹴りをキメた前作ラストから一転して(むしろそれがあったせいか?)、いよいよ九龍グループが“本気”を出してくる。振りかざされた権力と武力によりSWORD地区はあっという間に壊滅状態に追い込まれ、単独行動に出たコブラが拉致され徹底的な拷問を受けることに(予告編公開時に話題となった生コン流し込み場面)。

「なぜ九龍グループがカジノ計画という名目で国と結託してSWORD地区を潰そうとするのか」、これをシリーズの過去作品にまぶされていた伏線を回収しながら描いていくあたり本作のドラマ性を強くしているところがある。その先鋒としてメインを張るのが、RUDE BOYSのリーダーであるスモーキーだ。色の抜け落ちた髪、苦しそうに咳き込む姿がシリーズを追うごとに強調されたが、それが本作で回収されつつドラマとして昇華されており、本作で最も観客の胸に深く突き刺さるシーンになっているのではないだろうか。窪田正孝演じるスモーキーに、アクションとしての見せ場ではなく“セリフ”で見せ場を用意しているところからしても、本作でいかに重要なキャラクターになっているのかが分かる。もはや哀愁感すら漂うスモーキーの一連のセリフは、このシリーズの“本質”といっても過言ではない。

そして、スモーキーだけでなく鬼邪高校や達磨一家、White Rascalsのリーダー各メンツもチームの壊滅危機を迎えることで、そして故郷であるSWORD地区の破壊を目前にして再び立ち上がることで、力強さと個性を発揮する。それでこそこのシリーズの魅力の一つであり、“大人の喧嘩”を介して彼らが成長する瞬間でもある。もちろん、だからと言って彼らのやんちゃぶりが消えるというわけではなく、むしろ終盤においては拍車がかかるのだから、いっそ清々しさすら感じられるはずだ。やはり、それでこその“HiGH&LOW”シリーズの魅力と言える。



(C)2017「HiGH&LOW」製作委員会



“イケメン”目当てでも良いじゃない


繰り返すが、本作はシリーズで最もシビアな展開を見せるので(成長には痛みを伴うが故の)、どうしてもローテンションな文体になりがちになってしまう。いやしかし、それでは“ハイロー”シリーズの終幕を告げる作品としては寂しいものがある。なので、ここは一つ見方を変えて、やはり作品を盛り上げていきたい。本作はドラマもありアクションも良い。ならばどこに着目したいかと言えば、“イケメン俳優”たちの競演である。

本作はご存知の通りEXILE TRIBEの面々が大挙して登場しており、それだけでも女性ファンからすれば眼福ものだと思うが、それに加えて前述の窪田正孝や、鬼邪高校リーダーの山田裕貴、達磨一家リーダーの林遣都らを配しているので、目の保養には余念がない。シリーズは「全員主役」を標榜しており、それに恥じない名場面、名アクションが生まれてきたこともまた事実。

「一緒にいるだけが仲間じゃねえ」「行くぞテメェらー!」「SWORDの祭りは達磨通せや」……、これらの名セリフは彼らだからこそ活きるもの。それぞれの俳優が持ち味を活かすことでキャラクターに命が吹き込まれ、作り手側もその魅力の出し方を理解していたからこそ、これだけハイローシリーズは支持を受けてきたのではないだろうか。



(C)2017「HiGH&LOW」製作委員会



新旧イケメン対決の魅力


さらに、本作ではこれまでになく九龍グループのメンバーが出ずっぱりの状態になるが、中でも注目したいのは黒崎君龍を演じる岩城滉一の存在感だ。黒崎は九龍グループ内でも重要なポジションを占めているが、それに見合うだけの風格が岩城から醸し出されている。むしろ、岩城だからこそ黒崎の存在が際立ったとも言え、正直男の目から見ても、スーツや和装を着こなした岩城から漂う燻し銀の色香をバッチリと感じるほどだ。

そんなキャラクターが、岩田剛典と対峙する。新旧“岩ちゃん”対決、新旧イケメン対決である。そして本来なら憎むべき悪役である黒崎に魅せられてしまう理由として、親と子ほども年齢が離れ交わるはずのなかったコブラと黒崎の2人が、特に黒崎が相手の“心”と向き合う姿に共感することが挙げられるのではないだろうか。黒崎がコブラと相対したことでどのような変化を見せるのかは劇場で確認してもらうしかないが、その姿こそ、憎っくき九龍グループの中において唯一の“救い”なような気がしてならない。



まとめ


もちろん、ハイローシリーズの持ち味である邦画界でトップレベルであるアクションも十分に堪能できる。琥珀さん(AKIRA)や雨宮兄弟(TAKAHIRO、登坂広臣)が活躍する中盤の長回しシーンは相変わらずカメラワークが凝っており、“ターミネーター”源治(小林直己)の存在感も良い。それに加え、まるでシリーズ終焉を彩るような爆破シーンの連続。重苦しいだけではない、いっときの清涼感のような味を出す九十九(青柳翔)の軽妙なノリ。

これでシリーズが完結すると思うと寂しさに包まれるが、なぜだろうか、またこのメンツとはひょっこり顔を合わせるような親近感もいつの間にか抱いている。見どころを書き出せばキリのないシリーズだったが、だからこそその“終わり”の瞬間を、しっかりと見届けてほしい。

(文:葦見川和哉)

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