『素敵な遺産相続』~シャーリー・マクレーンと素敵な大女優たち

■「〜幻影は映画に乗って旅をする〜」

(C)2015 Faliro House & Haos Film

久しぶりにミニシアターの枠に収めておくにはもったいない良質なアメリカンコメディに遭遇した。6月3日から全国順次公開となる『素敵な遺産相続』。

『アパートの鍵貸します』など数多の名作で知られるシャーリー・マクレーンに、80年代を代表する女優の一人ジェシカ・ラング、そして90年代に人気を博したデミ・ムーアと、三人の大御所女優が共演した、(キャストたちの年齢をまったく感じさせないほどに)アクティブなコメディ映画に仕上がっている。

<〜幻影は映画に乗って旅をする〜vol.33:『素敵な遺産相続』~シャーリー・マクレーンと素敵な大女優たち>

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夫に先立たれた主人公のエヴァ。夫の生命保険が、保険会社の手違いで500万ドルも支払われてしまう。一度は不安に思いながらも、親友のマディと二人でスペイン領のカナリア諸島にバカンスに出かけることにしたエヴァ。

そこでボケ気味の紳士と恋仲になったり、カジノで大儲けしたりとすっかり有頂天。するとそこに、保険会社のエージェントが保険金の回収のために、エヴァの娘クリスタルを連れて乗り込んでくるのだった。

監督のアンディ・テナントといえば、90年代後半に発表した魅力的なファンタジー『エバー・アフター』を手がけ、その後『キューティ・ブロンド』でブレイクしたばかりのリース・ウィザースプーンを主演に迎えた喜劇『メラニーは行く!』など、比較的寡作ではあるが良質な作品を手掛ける職人である。

今作では、自身よりもキャリアを積んだ大女優たちを見事な手腕で、軽やかにさばいていくわけだ。主人公の危なっかしい突発的な行動は、まさに『メラニーが行く!』のリースを彷彿とさせる。

それにしても、シャーリー・マクレーンからはすでにレジェンドの風格が漂う。『アパートの鍵貸します』の愛らしい姿からもう半世紀以上。当時の面影がかすかに残るが、もはや貫禄が違う。そんな彼女は、さすがは60年代を代表する喜劇女優と言わんばかりに、今なお喜劇映画でその才を発揮しているのである。

そこに、『ブルースカイ』と『トッツィー』で2度のオスカーに輝いたジェシカ・ラングが組めば、そこには3つのオスカー像と、11度のオスカーノミネートという輝かしい記録が見え隠れする。さらにデミ・ムーアに、ビリー・コノリーも加わるなんて、実に豪華な画面の連続だろう。

マクレーンが大女優となって以降、どういうわけか〝豪華女優共演〟と銘打たれるようなタイプの作品が多い。デブラ・ウィンガーと共演し、悲願のオスカーを獲得した『愛と追憶の日々』や、メリル・ストリープとの共演を果たした『ハリウッドにくちづけ』、そして『マグノリアの花たち』ときて、最近でも『イン・ハー・シューズ』がある。そんな彼女のフィルモグラフィを眺めていたら、とても懐かしい映画を見つけたので紹介したい。

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ここでは『ミザリー』で大注目を集めたばかりのキャシー・ベイツ、『鳥』や『ドライビングMissデイジー』のジェシカ・タンディに加え、30年代から活躍していたシルヴィア・シドニーや、のちに『ポロック 2人だけのアトリエ』でオスカー女優となるマーシャ・ゲイ・ハーデンも出演。おそらくここ数十年の映画では類を見ないほど豪華な女優アンサンブルが堪能できる。

ニューヨークに暮らす主人公のパールは、長年連れ添った夫の葬儀で、元バーテンダーのイタリア人男性ジョーから20年以上の片想いを告げられる。しかし、彼女の家庭にはそれぞれに問題を抱えた二人の娘に、老齢の姑。さらにユダヤ人の彼女たちと、イタリア人のジョーとではなかなかソリが合わない。そんな中、実直なジョーの思いによって、徐々に二人はハッピーエンドに向かっていくのである。

前述の女優陣に加え、イタリアの名優マルチェロ・マストロヤンニがイタリア人のジョーを演じているので、もはや抜かりのないキャスティングである。ユーモラスかつコミカルに、長年連れ添った夫と離れ、未亡人となったシャーリー・マクレーンの姿を描くという点では、今回の『素敵な遺産相続』と似たものを感じる。

ところで、もうひとつ気になる作品を見つけたのだが、何せ鑑賞手段がないため、軽く紹介するだけに留めておこう。
これもシャーリー・マクレーンを筆頭に、大女優たちの共演作があるが、2001年に制作された『だって女優ですもの!』というコメディ映画だ。

シャーリーに加えてジョーン・コリンズと、先日亡くなったデビー・レイノルズ(娘のキャリー・フィッシャーも出演している!)、そしてエリザベス・テイラーまで出演している超豪華な顔ぶれなのだ。日本ではCS放送で紹介されただけで、ソフト化がされていないのが実にもったいない。

やはり大御所の俳優陣が集まる作品こそ、劇場で観たいところだ。

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(文:久保田和馬)

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