『マローボーン家の掟』が感動のラブストーリーとなった「3つ」の理由とは?

©2017 MARROWBONE, SLU; TELECINCO CINEMA, SAU; RUIDOS EN EL ATICO, AIE. All rights reserved.

美しい自然に囲まれた風景の中で、逃れられない過去と闘う4人の兄妹の物語が描かれる映画『マローボーン家の掟』が、4月12日から日本でも劇場公開された。

既に観た人の間でも、その巧妙に仕掛けられたトリックや伏線、そして意外な結末への高い評価が寄せられている本作。

宣伝ポスターや予告編からはホラー映画の様な印象を受けるのだが、果たしてその内容と出来はどの様なものだったのか?

ストーリー

海にほど近い森の中にひっそりとたたずむ大きな屋敷。そこに暮らすマローボーン家の4人兄妹は、世間の目を逃れるように生きていた。忌まわしい過去を振りきり、この屋敷で再出発を図る彼らの願いは、自由で幸せな人生をつかむこと。しかし心優しい母親が病死し、凶悪殺人鬼である父親を殺害したことをきっかけに、4人の希望に満ちた日々はもろくも崩れ出す。母の死後に生まれた“5つの掟”を守り暮らす彼らに降りかかる、屋根裏部屋から響いてくる不気味な物音、鏡の中にうごめく得体の知れない影。やがて平穏を保つための“掟”が次々と破られ、逃げ場なき極限状況に追いつめられた長男ジャック(ジョージ・マッケイ)が、最愛の妹と弟たちを守るために下した決断とは……。

予告編

理由1:“5つの掟”に隠された秘密が悲し過ぎる!

凶悪殺人鬼である父親が逮捕されたのを機にイギリスからアメリカへと移住した、母親と4人の子供たちからなるマローボーン一家。遠く離れた新天地での新たな生活が始まる中、病に倒れ息を引き取った母を追うように現れた父親を殺害し、その死体を屋敷の屋根裏部屋に隠した4人の兄妹たち。だが、やっと手に入れた平穏な生活を守るため“5つの掟”を厳守して生活する彼らの前に、次々と恐ろしい出来事が起こり始める…。

実の父親が凶悪殺人鬼! という悪夢の様な状況から、やっと逃れられたと思ったのも束の間、消せない過去がマローボーン家の4人の兄妹をどこまでも容赦なく追い詰めていく本作。

本来は子供たちに直接関係のない”父親の犯した罪”が、まるで呪いの様にジャックたち兄妹の前途に立ちはだかり、文字通り”蘇って”彼らの平穏な日常を絶望と破滅に変えていく展開は、最後まで観客をドキドキハラハラさせてくれるものとなっている。

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本作が人間ドラマやラブストーリーとしても大成功した大きな理由は、何といってもその練り上げられた見事な脚本にある。

特に、数々の伏線や仕掛けが施された物語の中でも重要なのが、悲しい過去に翻弄されて生きる兄妹が、やっと手に入れた平穏な生活を守るために作り出した“5つの掟”の存在だ。

1「成人になるまでは屋敷を離れてはいけない」
2「鏡を覗いてはならない」
3「屋根裏部屋に近づいてはならない」
4「血で汚された箱に触れてはならない」
5「”何か”に見つかったら砦に避難しなくてはならない」

映画の序盤では観客にも全く意味が分からない、これら“5つの掟”が、父親殺しの罪と母親の死を世間から隠すため、ついに破られることになるのだが、これらの掟が持つ意味が明かされる終盤の展開には、思わず「やられた!」と思った方も多かったのでは?

実は、既に映画のタイトル部分で全ての謎へのヒントがかなり描かれているのだが、映画鑑賞後に全ての真相が明らかになった上で前述した“5つの掟”を見ると、母親を亡くした4人の兄妹が”平穏な生活”を守るために作り上げた、重要な決まりごとであることが分かってくる。

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この悲しい“5つの掟”によって、かろうじて存続していた”平穏な生活”が、外界との接触により次第に崩れていく様は、物語の核心が分からない状態で観ているだけに、最後まで観客の興味を引き付けて離さない。

屋根裏部屋に隠された忌まわしい記憶に、力を合わせて立ち向かおうとする兄妹たちの存在が、実はこの掟によって守られていたことが判明する結末は、小説を読み進めた先に得られる驚きと喜びを、見事に映像世界で再現してくれるものだった。

特に、長男であるジャックが綴った絵日記に書かれた真実が、兄妹と唯一交流があるアリーの目を通してついに明かされる終盤では、ジャックの家族への愛情と母が亡くなった後の責任感が生み出した楽園の正体が、観客の心を撃つことになるのは見事!

兄妹を外界から隔離して屋敷に閉じ込めるための掟に思えたものが、本当に守ろうとしたのは誰だったのか?

その意外な真実は、是非劇場でご確認を!

理由2:アニャ・テイラー=ジョイの魅力が炸裂!

映画初主演作『ウイッチ』はもちろん、その後の『スプリット』や『ミスター・ガラス』でも印象的だった若手女優アニャ・テイラー=ジョイが、本作ではマローボーン家の兄妹に外界との橋渡しをするアリー役で出演しているのも、本作の魅力の一つとなっている。

イギリスからアメリカに渡ってきた4兄妹の良き理解者で、街の図書館に勤めるアリーの存在が、彼女との将来を夢見るジャックに“5つの掟”を破る決意をさせるのだが、マローボーン家に起こった一連の悲劇を、ジャックが記した絵日記で知ったアリーが取ったラストの選択こそ、あまりに悲劇的な結末に大きな救いを与えてくれるものに他ならない。

ただ、本作の内容や物語の展開を踏まえて考えると、ひょっとして『スプリット』の役柄ありきの彼女の起用だったのでは? そんな考えさえ浮かんでしまうのも事実。

それだけに、今回のアニャ・テイラー=ジョイの起用は正に大正解! と言うしかない。

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今後も出演作が続々公開予定の彼女だが、映画ファンにとって見逃せないのは、本作で共演したチャーリー・ヒートンもキャノンボール役で出演する、『X-MEN』シリーズの最新作『The New Mutants(原題)』への出演だろう。

もちろん彼女の他にも、リメイク版『サスペリア』で強烈な存在感を見せたミア・ゴスが出演しているなど、今後の活躍がますます期待される若手俳優の競演が楽しめる、この『マローボーン家の掟』。

鑑賞後に深い余韻と感動を残すラストが待っているので、女性の方にこそ是非見て頂きたい作品です。

理由3:スペイン製ホラーやスリラー映画に駄作なし!

映画の舞台は1960年代のアメリカだが、実際はスペインでロケが行われている本作。

スペインとアメリカとの合作となるこの映画が、単純にホラー映画のジャンルには収まらない深い内容に仕上がっている理由の一つとして、そのロケーションや風土が作品全体に独特の雰囲気を与えている点が挙げられる。

加えて、決して残酷な描写だけに頼ることなく、家族の絆や母と子の関係を物語の核に据えることで、濃密な人間ドラマや悲しい過去の因縁が観客の心に深い余韻を残すのも、これらスペイン製ホラー映画の大きな魅力の一つとなっている。

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事実、スペイン製のホラーやスリラー・サスペンス映画の完成度の高さには定評があり、特に一人称視点で映画が進行する『REC/レック』シリーズは、ホラー映画界の新たな発明と言えるほど、後の映画界に多大な影響をもたらしたのも記憶に新しいところだ。

更に、あっと驚く結末や、途中から観客の予想を越えた展開が待っているなど、一度でもその魅力に触れた観客をより”深い沼”へと誘う”仕掛け”で、我々観客を大いに楽しませてくれるサービス精神は見事!

確かに俳優の知名度や言葉の問題はあるが、ハリウッド製のホラー映画では味わえないその内容は、多くの観客に「スペイン製ホラー映画に駄作なし!」と思わせるだけの喜びを与えてくれるはず。

本作でスペイン映画の魅力に目覚めた方は、是非この機会に他の作品にも触れて頂ければと思う。

最後に

家族の命を守るために選択するしかなかった、恐ろしい父親殺しの罪。その罪に怯えて街の人々から隠れるように暮らしていたマローボーン家の兄妹たちが、次第に罪悪感と父親の怨念や呪われた運命によって追い詰められていく様子を、スペインで撮影された美しい風景の中に描き出す本作は、ホラーやサスペンスといった単純なジャンルでは割り切れない、非常に複雑な内容の作品となっていた。

確かに、屋根裏に隠した父親の死体と暮らすという異常な日常が、次第に幼い弟の心を蝕んでいく描写や、屋敷の相続手続きのために家族の秘密がバレそうになるなど、ホラーやサスペンスの部分でも大いに楽しませてくれる本作。

特にラストの展開からの対決シーンは、迫力満点の見せ場となっていて必見!

だが、やはり本作で重要なのは家族や兄妹の絆、そして子供たちの成長と自立の物語であり、更にジャックとアリーとの真実の愛を描くラブストーリーとしての側面も持っているのだ。

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ジャックとアリーの関係が、正に『スプリット』や『ミスター・ガラス』を思わせる部分もあるが、ジャックと一緒に悲しい過去を乗り越えようとするアリーの愛の強さには、製作者側の確かなメッセージを強く感じたのも事実。

特に、映画の序盤で登場するアリーとマローボーン家の兄妹たちとの出会いのシーンが、幸福感に包まれた美しいシーンとなっているだけに、結末に向かっての悲劇的な展開とラストで明かされる真実には、きっと多くの観客が驚きと感動を覚えずにはいられないはずだ。

残念ながらポスターや予告編からは、まるでホラー映画の様な印象を受けるが、大切な家族を失った悲しみを超えて、ジャックが大人として成長・自立する姿が描かれる本作の結末は、家族や兄妹の絆がいかに大切で強いものかを観客に伝えてくれるもの。

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怪物の様な父親の影からやっと逃れられた4人の兄妹を襲う、不気味な影の正体とは何か?

そして、アリーと共に呪われた運命に立ち向かったジャックが、果たして何を得て、何を失ったのか?

鑑賞後に深い余韻と感動を与えてくれることは確実な作品なので、全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)

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