三鷹コミュニティシネマ映画祭 シンポジウム“アイドルは時空を超える”

アイドル映画は自由に
何でも入れ込める

松崎「『江ノ島プリズム』も小林さんの脚本で、こちらはタイムスリップが用いられていますが、小林さんのデビュー作『星空のむこうの国』(85)以来、異世界を描く機会が多いですね。こういった設定ってアイドルや若い女性に似合うというのがあるのでしょうか」
松崎まこと松崎まこと

小林「アイドル映画って自由だという意識が僕の中にありまして、登場するアイドルやスターがかっこよかったり可愛かったりすれば、後は何をやってもいい。だからこういうSF的なものや社会的な設定も、アイドルものだから入れ込めるんです」

北川「アイドルには70年代から80年代にかけて一つの流れが出来上がっていたのが一旦途切れて、今また別の流れが生まれているという気がしています。映画に関しては『セーラー服と機関銃』や『時をかける少女』のように、ひとつの原作を基に何人ものアイドルが繰り返し演じ続けているという意味で、古典が時代の流れに即しながら蘇っていくという形が、僕的にはアイドル映画の大きな要素のひとつのように思います。あと『江ノ島プリズム』は月9『恋仲』のキャスティングを先取りしている(笑)」
北川昌弘北川昌弘

小林「『恋仲』を続編だと思っている人、多いですよ(笑)。僕自身は『江ノ島プリズム』主演の3人(福士蒼汰・本田翼・野村周平)で『赤い』シリーズをリメイクしてほしいというか、そういう存在になってくれればと思っていました。同じキャストで、いろいろ別の役をやると面白いんじゃないのかな」

松崎「それもある意味パラレルワールドですね(笑)」

小林「『江ノ島プリズム』はもともとプロデューサーが『時をかける少女』をやりたいということだったのですが、でも既に『時をかける少女』はアニメやTVドラマも含めて映像作品が7本あるんですよ。だから同じ話をずっとやるのではなく、違うお話でやりましょうよということで作ったのが『江ノ島プリズム』だったんです」

手が届きそうで届かない部分を
大切にしたい

この後、アイドルをどう魅力的に捉えるかといった話やアイドルの歴史的流れなどに変わっていきます。

金子「いかに可愛らしいポイントを探すか、またいかに仰ぎ見るというか、憧れて見える部分を探し出すことですね。ただし、もともとアイドルって手が届きそうで届かない存在だったのが、今は時代が変わって『先輩と彼女』(15)みたいに等身大でリアルなストーリーの映画が作られるようになり、その中で『江ノ島プリズム』や、来年公開の橋本環奈・主演『セーラー服と機関銃』はそこからさらに新鮮な部分を探ろうとしているんじゃないかな。僕自身は、手が届きそうで届かない部分を大事にしていて、現場でもそんなに親しく踏み込まず、憧れの存在に留めておきたいという風に撮っていますし、それが女優さんを輝かせると自分では思っています」

武田「『少女は異世界で戦った』のとき、私以外の3人は既に金子組に出演していましたので、撮影に入る前にどんな監督さんかを聞いたら、みんな口をそろえて『女の子を可愛く撮るのがすごく上手い!』と。私自身、金子監督の作品はそれ以前から見ていましたので、それは理解していたのですが、逆にそれがプレッシャーになりまして(笑)。アイドルの役で歌ったり踊ったりするのがすごく難しくて……。歌や踊りの練習のときも、監督はずっと苦笑いされてましたよね?(笑)」
金子監督飛び入り登壇
金子「自分の中に苦手意識はあっただろうけど、そんなことはないよ(笑)。もともと運動能力はあるから、アイドルの動きなどもちゃんとできてました」

武田「(笑)ただ、最初はアイドルという役を意識してしまっていたんですけど、みんなで一緒にやっているときはすごく楽しくやらせていただきました。また加弥乃ちゃんはAKB48出身ですので、アイドルの動きとか、いろいろ教えてもらえましたね」

スターとアイドル、両方の
要素を備えていた山口百恵

金子「アイドルって70年代以降に出てきた言葉で、それ以前はスターと呼んでたんですよ。本来“アイドル”とは“偶像”という大変な意味なんですけど、日本ではまだスターとは呼びきれない未完成の存在に対して、この言葉を使うようになった」

松崎「金子監督が最初に意識したアイドルは?」

金子「意識したということでは桜田淳子とかですけど、歴史的にいくと小柳ルミ子ですね。彼女こそスターとアイドルの中間にいるミッシング・リンク(笑)。それまでは直立不動に近いポーズで歌っていたのが、彼女あたりから手を動かすようになり、麻丘めぐみあたりからは無意味な動作をするようになっていった(笑)」

北川「一方であの頃は、山口百恵のように歌もやれば、お盆と正月の映画に主演し続け、連続ドラマまでやる存在もいたわけです」

金子「山口百恵さん主演の作品に助監督として就いたことがありましたが、彼女はスターとアイドルの両方の要素を備えているように思えました」

武田「実は私もアイドルがすごく好きで、特に昭和のアイドルが大好きで、カラオケでは山口百恵さんの歌ばかり歌うんですけど、その理由というのが、最近のアイドルは可愛くて守ってあげたいタイプが多くて、歌詞も”上手く踏み出せない”とか”寂しいよ”みたいなものが多いのに対して、山口百恵さんの歌は“馬鹿にしないでよ!”とか“去年の人とまた比べている”とか、キャンディーズさんでも“内気なあいつ”とか、どこか男の人を上から見ている感じがあって、そこが私の萌えポイントなんです(笑)。『少女は異世界で戦った』で私たちが歌っている主題歌の歌詞も、“チャラ男みたいな奴は生きている意味がない”と(笑)」
武田梨奈3
北川「スターは高根の花で、アイドルは届きそうで届かないといった存在だったのが、今は届いちゃうんですよ。イベントですぐに会えるし、握手会もあるし、こちらのことを認知してもくれる。その意味でも僕は昭和のアイドルと今のアイドルは別物だと思っています」

松崎「今は裏アイドルなんて言葉も出てきているように、幅もどんどん広がっちゃってますよね」

小林「僕にとってアイドルってときめく存在であり、スターは尊敬したり憧れる存在。ですから『江ノ島プリズム』も『少女が異世界で戦った』も、実は自己犠牲の話なんですが、それを通して主人公たちをいじらしいなあと思っていただけたら」

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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