AV女優を取材するライターを演じた吹越満にインタビュー「職業的なことよりも人間的な部分を大事に」

2月3日(土)公開の映画『名前のない女たち うそつき女』は、中村淳彦のルポルタージュを原作に、AV業界で生きる男女をルポライターの目線から描いた物語。

シネマズby松竹では、本作でAV女優のインタビューで生計を立てているルポライターの志村篤を演じた吹越満さんに、AV女優に対しての印象から、ご自身の仕事観まで、幅広くお話いただきました。

──まず、今作のテーマとなっているAV女優という存在に対して、どういう印象をお持ちでしたか?

映像で見ている分には、AV女優ということに特別何か思うことはないけれども、たまに仕事で会うことがあるんですね。

例えば、役者仲間の舞台を観に行って、そのあと飲みに行ったりするじゃないですか。その場に来ていた誰かの知り合いの女性に「どっかで見たことがあるなぁ」って思ったりするわけです。で、紹介されたときに、そういう仕事をしている方だと知って「あ、観たことある!」と思い当たるとか。

こういう作品を観たことがある、と話したら、「観てくれたんですね、ありがとうございます!」という感じだったので、明るい方が多いのかなという印象がありますね。彼女がたまたまそういう方だったのかもしれないですが。明るい人が多いんですかね、それとも、その仕事をやっていると、明るくなるんでしょうかね。

(C)「名前のない女たち うそつき女」製作委員会

──私の知り合いにもいますが、その子もあっけらかんとしていて、明るいキャラクターですね。

その方とは友達になるような出会いではなかったんですが、逆に友達がストリップの劇場に出たときに、友達と7人くらいで観に行ったことがあるんです。素晴らしいステージだったんですけど、知っている子の裸が知らない人たちの目に晒されてるっていうのが…なぜか泣けてきちゃって。

知らない子だと、ストリップのショーとして普通に観られるんだけど。いい意味でも、よくない意味ということでもなく、「なんでこの子はそういうことをしているんだろう」って複雑な気持ちになるというか。やっぱり、一緒に観に行った友達も同じような心境だった、と話してましたね。

肉親、兄弟、親戚であれば「やめてほしい」という気持ちになるかもしれないですが、そういう感情とはまたちょっと違う気はしましたけれど。

──今作で吹越さんはルポライターを演じられていますが、雰囲気がとてもリアルで「週刊誌の記者に、こういう感じの人っている!」と思ったのですが、役作りはどのようにされましたか?

スケジュールもタイトな作品だったので、編集部に取材をするとか、特別なものは用意していなかったんです。

──では、吹越さんのなかのイメージで作られていった感じでしょうか。

(C)「名前のない女たち うそつき女」製作委員会

そうですね。あとは、自分には他に書きたい記事、企画があるのに、それがうまくいっていないということだったり、家族のことだったり。職業的なことよりも、問題を抱えている人が、問題を抱えている人を取材するっていう、そういう人間的な部分を大事にしましたね。

インタビュー相手に「本当のことを言ってないでしょ」と迫る志村自身も、うまくいっているわけじゃないという、その辺の矛盾というか。志村は話を聞く立場ではあるけれど、相手に言っていることが、すべて自分に跳ね返ってきているわけですから。

──サトウトシキ監督からは、芝居についてのリクエストや演出はあったんですか?

思い返すと、監督の志村像と大きく違うところはなかったのかな。

──自分のなかに矛盾を抱えている男という解釈が、監督ともマッチしていた感じでしょうか。本当は介護に関する記事を書きたいのに、食っていくために、やりたい仕事だけをやるわけにいかない、という志村に共感する人も多いんじゃないかなと思います。

そうですよね。

──吹越さんはそういうご経験、例えば最初は乗り気じゃなかったけれど、やってみてよかったと思うことや変化を感じたことはありますか?

そうですね。乗り気かどうかというよりも、リスクをとって自分から発信してなにかを作るということをやっているかどうかが大きな違いだと思うんです。やらなければ評価が下がらない、うまくいけばいいけれど失敗したら今までのキャリアを潰すかもしれない…そういう大変な選択をするかどうかで変わってくると思います。

監督だったり、プロデューサーだったり、映画を1本作る人は「どうしてもやりたい」と思うものを作っている。じゃあ、僕らがどんな作品でも彼らと同じ気持ちになれるかといえば、そうはなれないですからね。

もちろん一生懸命やるんだけれども、ヒットすれば儲けもの、コケたらコケたで「俺のせいじゃない」っていう人もいるわけで。そういう言い逃れをできないようにやるからこそ、失敗できないという思いをどんな現場でも持っていられると思います。

──また、なぜ志村が介護の記事を書きたいのか、劇中で明かされますが、自分が直面するまでは人ごとになってしまいがちな世界でもあると思いました。そこで、吹越さんが身近な人の影響で意識が変わった出来事はありますか?

(C)「名前のない女たち うそつき女」製作委員会

本当に自分の身の回りのことですけど、元妻の広田レオナと2人で、それまで所属していたプロダクションを抜けて小さい事務所を作ったんです。僕はそこの所属俳優という立場なんですけど、大きなプロダクションにいるときと気持ちは大きく変わりましたね。

やっぱり、自分の会社のスタッフとか家族だとか、声をかけてくれる方々とか、そういう人たちのことを思うと失敗できない、ということが多い。わかりやすくいうと、やりたいとか、やりたくない、とかいうことではなくなるわけですよね。

──それは先ほどの、危険を犯しにいくという話にも繋がってくる。

そのひとつですよね。個人事務所を作るというのは大胆なことなんですけど、やらなきゃいけないことはすごく細々としたことで。ただ、他の事務所に所属している人の話を聞くと、「うちはそういうやり方をしなくないな」と思うこともやっぱりありますし…。

うちの事務所は自分たちのやりたいかたちでやれているけれど、それをキープするために見えないところで四苦八苦している。でも、それはすごく楽しいんです。社長、つまり奥さんから関係が変わって、ビジネスパートナーとなった彼女が非常に頼りになりますし、尊敬していますね。

──最後に、この映画をどんな人に見てほしいですか?

原作の中村さんが取材した実話をもとにした作品で、ひとつのエピソードでもないですし、大まかなあらすじがはっきりとはないタイプの作品だと思います。何かしら問題を抱えている人たちの話なので、一概にAV女優の話といえる映画でもないですし。

もちろんいろんな方に観ていただけたらうれしいですが、派手なエンターテイメント性の高い作品ではないので、逆にどんな映画かわからないという人は、まず観ていただけたらと思います。

映画『名前のない女たち うそつき女』は2月3日(土)より、K’s cinemaほかにて全国順次公開となります。

(撮影:生熊友博、文:大谷和美)

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    ライタープロフィール

    大谷和美

    大谷和美

    高校2年の時に観た「バトルロワイアルⅡ」に衝撃を受け、映画の道を志すも、縁あって雑誌編集者に。特撮誌、若手俳優グラビア誌等の編集・ライター、WEB編集者を経て、現在はフリーランスで活動中。人間の感情や社会の闇を描いた邦画が好きで、気づけばR指定のDVDばかり借りていることも。一方、元々好きだったライダー・戦隊などの特撮作品やコメディ映画も好んで観ます。他、元上司のバカタール加藤が主催するニコ生番組「崖の上の生放送」に準レギュラーで出演中。

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