レトロなビデオ・ゲーム・キャラが地球侵略!?パンフレット片手に見てほしいSFコメディ超大作『ピクセル』!

1980年代初頭に世界中を席巻した懐かしいアーケード・ビデオ・ゲームのキャラクターたちが、時を経て2015年の今、何と地球侵略にやってきた!?
前代未聞、奇想天外のアイデアで迫るSFコメディ超大作『ピクセル』は、80年代をゲーム・センターで過ごした世代にはたまらない魅力があるはずです。

というわけで……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街 vol.20》

『ピクセル』と、今回はその魅力をとくと解説したパンフレットもご紹介!

ピクセル

襲い来るレトロ・ゲーム! 立ち向かうヲタク中年たち!

まず『ピクセル』のストーリーは……、「地球を代表するカルチャーを宇宙へ!」といった趣旨で、82年のビデオゲーム世界大会の模様を収めたビデオテープがロケットに積まれて宇宙に打ち上げられたものの、そのテープを見た宇宙人が、あろうかことか地球人が宣戦布告してきたと勘違いし、逆に地球を侵略すべく、映像の中のゲーム・キャラを具現化し、33年後の2015年に勝負を挑んできた!

これに対し、地球の軍隊は全く歯が立たず……と思いきや、彼らと戦える唯一の人種がいました。
それは80年代のゲーム・ヲタク少年。
つまりは、未だ大人になり切れない、しがない中年オヤジたちでありました!

『ピクセル』のお楽しみは、もちろん『ギャラガ』『アルカロイド』『センチヒート』『パックマン』そして『ドンキーコング』といったレトロ・ゲームのキャラたちが現代ハリウッドの映像技術の粋を尽くして銀幕に蘇り、かつてのゲーマーたちがこれを迎え撃つという、その熾烈(?)な戦いぶりにありますが、ここでもうひとつ着目すべきは、ゲーム以外何のとりえもないまま大人になってしまった中年ゲーム・ヲタクたちの名誉回復でしょう。

実際、ゲームでチャンピオンになろうがどうなろうが、社会ではそんなもの何の役には立ちません(高橋名人みたいな例外はいますが)。
これはゲームに限らず、映画やアニメ、マンガ、さらにはスポーツなどありとあらゆる娯楽知識は、のめりこめばのめりこむほどに興味のない人から相手にされないといった道理で、その悲しさはなにがしかのこだわりを持ってのめりこむ喜びを見出してしまった者だけが共有できるものでもあるでしょう。

思えば、ヲタクという言葉が出現したのも80年代初頭。
日本に関してはバブル突入直前の、どこかゆるく温かな風が吹いていた時代でもありました。

この映画には、そんなヲタクの悲しみと(しかもある程度の年齢を重ねてしまった!)、それゆえの強さが明快に、そしてゆるいギャグの連発で描かれています。

監督は『ホーム・アローン』(90)や『ハリー・ポッターと賢者の石』(01)などのクリス・コロンバス。
コメディヤファンタジーに定評のある彼は、もともと『グレムリン』(85)や『グーニーズ』(85)などの脚本で名を挙げているだけあって、今回も難なく80年代テイストの空気感をドラマに持ち込んでいます。

世界観を巧みにフォローする『ピクセル』パンフレット!

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もっとも私自身、この映画を見ながら当時のことを懐かしく思いつつ、いざ具体的に、たとえば『ギャラガ』ってどんなゲームだったっけ? みたいな部分になると意外にあやふやで、結構忘れてしまっていることに気づかされたりもしたのですが、ここで実にありがたかったのが『ピクセル』のプログラム(パンフレット)なのでした。
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プログラムの装丁は、当時のアップライト筐体(ゲームセンターにあった業務用のゲーム機械)をイメージした、スリーブ仕様になっています。

ここにはパンフレットとして必須ともいえる解説、ストーリー、監督やキャストのインタビューなどに加えて、今回登場する5つのゲームを含む当時のビデオ・ゲームの詳細な解説が掲載されています。

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正直、劇中にはさまざまなゲームが小ネタとして登場してくるので、一度の鑑賞でそれらをひとつひとつ確認する作業も困難ではありましたが、これを見ると、「ああ、あのシーンであのゲームのネタが……」みたいにすこぶる理解できますし、ひいてはもう1回映画を見て再確認してみようかといった気持ちにすらなってきます。

また、当時これらのゲームを多く開発していたのは日本人であったという誇れる事実に基づき、ここでは劇中にも何とご本人として登場する(!)『パックマン』の開発者・岩谷徹氏をはじめ、『スペース・インベーダー』の西角友宏氏、『ギャラガ』の横山茂氏と、アーケード・ゲーム黎明期を支えた伝説的開発者お三方の鼎談が実現。当時の苦労や映画の感想なども含めて、これはもうゲーム・ファン必読でしょう。

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またお三方それぞれの映画体験にも言及しており、やはりみなさん映画をヒントにしながら開発を進めていた部分もあったことを知り、映画ファンとしても嬉しくなってしまうものがありました。

さらには、あの伝説的コミック『ゲームセンターあらし』の漫画家すがやみつるインタビュー!

彼もまた70年代末から80年代にかけてのゲーム文化に欠かせない存在であり、また映画と漫画、ジャンルの別こそあれ、ドラマを紡ぐ上では同じクリエイターとして、作品に関する独自の感想などを語ってくれています。これにはなるほどと唸らされる部分も多々ありました。

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プロダクションノートには、ゲーム以外の80年代カルチャーに関する記述もあり、これらも鑑賞のユニークな手引きになってくれることでしょう。

自分自身、これらを読みながら、当時のことをかなり忘れてしまっていたことに気づかされ、改めて時の流れを痛感してしまった次第ですが、一方で今の若い世代などには、こういった80年代感覚は逆に新鮮に映えるのではないでしょうか。

『ピクセル』は、まさに親が80年代独自の楽しさを子どもたちに伝えられる作品であり、ファミリー・ピクチュアとしても一級品であるとともに、最先端の映像技術を駆使しながら、ドット絵のキャラが今のリアルCGに負けないインパクトで画面を席巻させながら、その魅力を若い世代にも訴え得て、さらにはヲタクであることまでも肯定し、その素晴らしさを伝えることに成功している快作です。

ぜひともパンフ片手に、エキサイトしながら鑑賞してみてください。
(ちなみに私、ドンキーコングが出てきた瞬間、思わず感動で涙してしまいました……)

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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