『アリー/スター誕生』は、映画ファンを未来へ導く快作!

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『スター誕生』といいますと、1971年から83年まで日本テレビで放送されていた芸能界オーディション番組で、そこから森昌子や桜田淳子、山口百恵、片平なぎさ、岩崎宏美、石野真子、中森明菜などなど錚々たるアイドル・スターを生み出してきた伝説の人気番組ですが……今回の『アリー/スター誕生』とは当然ながら全く何の関係もありません(ごめんなさい、ただ書きたかっただけです)。

ただしレディー・ガガをヒロインに迎え、ブラッドリー・クーパーが主演と初監督も兼ねた『アリー/スター誕生』は、芸能界を舞台にしたヒューマン・ラブストーリー映画であり、映画ファンにとっては懐かしい響きのあるタイトルでもあります……

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実はこの作品4度目の映画化であり、その時代時代を象徴する名作足り得てきたものだからです。

これまで作られてきた
3本の『スター誕生』

まず『スター誕生』が基本的にどのような内容かといいますと、芸能界に憧れるヒロインが大スターと出会い、その才能を見込まれつつお互い愛し合うようになったことを機に成功の道を歩んでいくものの、一方の大スターの人気に陰りが見え始めていき……といったもの。

最初の映画化は1937年のウィリアム・A・ウェルマン監督『スタア誕生』で、ここでは映画の都ハリウッドを舞台にした女優(ジャネット・ゲイナー)と男優(フレドリック・マーチ)の関係性を描いたもので、戦前にして既にテクニカラーとして制作されており、映画業界の華やかさと、またそれゆえの光と影が濃厚に顕れています。

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ちなみにこの作品はオリジナル・ストーリーで、同年度のアカデミー賞原案賞(ウィリアム・A・ウェルマン&ロバート・カーソン)を受賞しており、ここから現在まで3度にわたってリメイクがなされています。

2度目の映画化は1954年、ジョージ・キューカー監督、ジュディ・ガーランド&ジェームズ・メイスン主演の『スタア誕生』。オリジナル版は181分の超大作で(一般上映版は154分で、その後オリジナル版は散逸し、83年にスチル写真を用いて176分に再構築した版も作られています)、戦後のハリウッド黄金時代を象徴する1本にも成り得ています。

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こちらもハリウッドを舞台に映画スター同士の愛と確執が綴られますが、『オズの魔法使』(39)などで知られるジュディ・ガーランドが主演ということもあって、ここではミュージカル映画的趣向が図られ、当時神経症や薬物中毒などが祟って人気が落ち込み気味だった彼女の映画復帰作となり、その結果、ゴールデングローブ賞主演女優&男優の2部門を受賞。

(もっとも両者はアカデミー賞にもノミネートされましたが、このときオスカーを逃したことで、彼女の薬物依存はさらに悪化し、61年の『ニュールンベルグ裁判』まで映画界を離れることになります。同作品もアカデミー賞助演女優賞にノミネートされますが、受賞には至りませんでした)

ちなみにジョージ・キューカー監督は女性映画の名匠で、幾人もの監督交代劇で知られる『オズの魔法使』でも一時期監督として現場に入り、ジュディに適切な指導を施していました。またのちに彼はミュージカル映画の名作『マイ・フェア・レディ』(64)も発表しています。

それから時を経て3度目の映画化は1976年、フランク・ピアソン監督、バーブラ・ストライサンド&クリス・クリストファーソン主演の『スター誕生』。

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それまでの映画業界から音楽業界に舞台を変え、シンガーをめざすヒロインの愛と葛藤が描かれます。

女優として歌手として人気を博していたバーブラ・ストライサンドのスター映画としての要素が強調され、彼女が歌う《スター誕生愛のテーマ》も大ヒット。アカデミー賞では歌曲賞、ゴールデングローブ賞では主題歌賞&作曲賞、グラミー賞では最優秀楽曲賞を受賞。

作品そのものもゴールデングローブ賞で作品賞(ミュージカルィ・コメディ部門)や主演女優、主演男優、主題歌を受賞しています。

まるでイーストウッド・チルドレンが
手掛けたような4度目の映画化快作

さて、4度目の映画化となる『アリー/スター誕生』は、1976年と同様に音楽業界を舞台にしています。

ヒロインのアリーを日本でもカリスマ的人気の歌姫レディー・ガガを起用していますが、スターを夢見て邁進していく彼女の真摯な姿は、あたかも本人のスターへの歩みとシンクロしているかのようで、またもともとは女優を目指していたというだけあって、その演技力も迫真的です。

一方、ここではブラッドリー・クーパーが初監督&主演も務めていることもあってか、カリスマ。シンガーのジャクソン=男の側の苦悩にもかなりの焦点が当てられており、その意味では従来の『スター誕生』よりも男性客の支持を得られやすい内容になっているようにも思えました。

また、どこか孤高のシンガーとして己の肉体の限界などに悩む姿は、どこかしら彼が師ともあおぐクリント・イーストウッド監督の作品群とも共通する要素があるようにも感じられます。
(そもそも本作の企画は当初イーストウッド監督&ビヨンセ主演でスタートしたものの、ビヨンセが妊娠したことでこの案は流れ、その後幾人もの候補を経た末に、現在のものに行きついたものでした)

その意味では、本作はイーストウッド・チルドレンによる『スター誕生』ともいえるかもしれません。

個人的にはさりげなくも弟ジャクソンを気遣うマネジャーの兄に扮するサム・エリオットのいぶし銀の名演にも惹かれるものがありました。

劇中歌われるさまざまな楽曲の良さも特筆的で、本年度の映画賞や音楽賞がどのような結果になるか、非常に楽しみになってくる作品です。

それにしても『ラ・ラ・ランド』(16)のヒット以来、『グレイテスト・ショーマン』(17)に『ボヘミアン・ラプソディ』(18)と、このところ音楽を重視したハリウッド映画が好調ですが、歌や音楽から映画に興味を抱くとその世界に感覚的に入り込みやすい分、これからの映画ファンを育てていくのにとても良い傾向なのかもしれません。

『アリー/スター誕生』もまた、これからの映画ファンを育てていく1本であることに間違いはないでしょう。

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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