SNSの光と影、使っている人ほど見るべき『ザ・サークル』徹底レビュー

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11月10日(金)より公開となる映画『ザ・サークル』。原作は、ピュリッツァー賞ノミネート作家デイヴ・エガーズの著作で、現在進行形のSNS社会が孕む脅威を鮮明に暴き、たちまち全米に一大センセーションを巻き起こしたベストセラー小説「ザ・サークル」。まさに現代のネット社会における光と闇を描いた映画となっていました。

今回は本作の魅力というよりも、本作が訴えかけるSNSの意義について書いていきたいと思います。

STORY

世界No.1のシェアを誇る超巨大SNS企業〈サークル〉。憧れの企業に採用され、奮起する新人のメイ(エマ・ワトソン)は、ある事件をきっかけに、創始者でありカリスマ経営者のイーモン(トム・ハンクス)の目に留まり、自らの24時間をすべて公開するという新サービス〈シーチェンジ〉のモデルケースに大抜擢される。瞬く間に1000万人超のフォロワーを得て、アイドル的な存在になるのだが——。

実在の企業を思わせる演出がリアルさを補完

エマ・ワトソン演じる主人公メイが面接の為にサークル社に向かうシーンで社屋の全景が映し出されるのですが、明らかにAppleの本社新社屋をモチーフにしていて思わずニヤリとしてしまいますし、色々期待が膨らんでしまいます。
広大な敷地の中心に巨大な公園のような緑が広がり、それを取り囲むようにオフィスの他にシアターやスポーツジム、クリニックなどが立ち並んで大きな円(サークル)を描いています。

そして、従業員たちが思い思いのスタイルで仕事をし、仕事以外にもスポーツを楽しんだり、芝生の上でヨガに興じたりと、『従業員がベストな状態で働けるような環境づくりをしていますよ』といった感じは、Googleのようでもありますし、意識高い系のベンチャー企業のようでもあります。

また、物語の舞台となるSNS『サークル』もFacebookやTwitter、Youtube、Instagramといったものを統合したようなサービスで、何かしらのSNSを利用したことのある方なら一種の「SNSあるある」を感じるはずです。
そうした実在の企業やサービスを取り込んだ解りやすい設定が、観ている者を自然と物語の中へと引き込んでいきます。

見どころはトム・ハンクスやエマ・ワトソンのプレゼンシーン

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本作ではトム・ハンクス演じるイーモン・ベイリーが新サービスや今後の展開などをサークラーたちにプレゼンするシーンが何度か登場しますが、それがまたカリスマ性のある見事なプレゼンなのです。時折ジョークを交えながら、一呼吸置いておもむろに新製品取り出して発表する姿は、まるで元Apple社のCEO故スティーブ・ジョブズがiPhoneを発表しているようです。巧みな話術でサークラーたちを魅了するカリスマを見事に演じているトム・ハンクスには、もう流石としか言えません。

ところが、それに負けず劣らずなのが主人公・メイを演じるエマ・ワトソンのプレゼンなのです。
現実世界でも国連のGoodwill Ambassador for UN Womenに任命され、国連本部で見事なスピーチを披露した彼女の事ですから、正に本物の貫禄でサークラーも映画を観ている私達も魅了してくれます。
ハリーポッターシリーズや美女と野獣とは全く違うリアルなエマの姿を観られるのもこの映画の魅力でもあるのです。

更に、これは意図的だと思いますが、二人のプレゼンシーンでは会場からの目線でのカットが度々入ります。このカット割りによって劇場で観た際に自分達もプレゼン会場の客席にいるような一体感が生まれ、サークラーたちの熱狂をリアルに感じられるようになっています。この二人のプレゼンシーンはこの映画の見どころのひとつと言って良いでしょう。

素直な人ほどハマるSNSの罠

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エマ・ワトソン演じる主人公メイはSNS慣れしていない、田舎町で育ったとても素直な良い子です。 それ故に与えられた仕事も真面目に一生懸命こなし評価も上がっていきます。

そうした中、とある事件をきっかけにトム・ハンクス演じるカリスマ経営者のイーモンの目に止まり、新サービスの第一号体験者に抜擢されます。素直なメイは素晴らしいサービスだと信じて精力的に情報発信していくのですが、やがて大切な人達を傷付けてしまい自身も追い込まれる悲劇的なクライマックスへと向かっていくのです。

ザ・サークル サブ6

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ここがこの映画の肝となりますが、現実世界においても、「この景色素敵だから写真アップしてみんなにも見せてあげよう」とか「この人の作品、素敵だから写真アップして宣伝してあげよう」とか「この人の発言に感動したからシェアしてあげよう」とか、素直な人ほど善意の気持ちで拡散しがちです。

ところが、素直な人ほど素晴らしさや楽しさにばかり目が行き、SNSを通じて繋がる人達は自分とは違う価値観や文化、信仰などを持っている事、ネットの向こう側には悪意を持った人達もいるという事を忘れ、自身の承認欲求に流されやすいように思います。

本人に悪意が無い、自覚が無いというところが一番怖いのです。私もこの『ザ・サークル』を観て、知らず知らずのうちに誰かを傷付けているかもしれないと怖くなってしまいました。また、同じSNSで繋がって同じ方向を向いている人間の集団心理の怖さも感じます。

ザ・サークル サブ4

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とは言え、この『ザ・サークル』はSNSの恐怖を煽るだけではなく、良い面もちゃんと描かれています。物語の前半では主人公・メイもサークルの恩恵を受け、それ故に、戸惑いつつも徐々にサークルに惹かれていくのです。

現実世界においても、世の中には多種多様な人間がいて、それぞれの生活があって、ネットだけで完結するものではないという事をきちんと理解した上で利用する分にはSNSはとても有益だと思います。
そうした良い面、悪い面のバランスを取ってよく作られた映画ですし、情報公開や透明性とプライバシーのバランスなど色々と自分の普段の行動と照らし合わせて考えさせられる映画です。

貴方も、この映画『ザ・サークル』を観て、今一度ソーシャルネットワークサービスというものとの付き合い方を考えるきっかけにしてみるのも良いかもしれません。

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映画『ザ・サークル』は2017年11月10日(金)全国ロードショーです。

(文:いぢま)


    ライタープロフィール

    いぢま (井嶋輝文)

    いぢま (井嶋輝文)

    静岡県浜松市出身、東京都在住。フリーランスシステムエンジニア、ブロガー、ライター、などの肩書きを持つ仮面ライダー大好きオジさん。初めて映画館で観た映画『スターウォーズ』に衝撃を受け、以来SF映画や特撮映画、アクション映画を中心に映画好きになる。但し、恋愛映画とホラー映画はちょっと苦手。個人ブログ『Knowledge Colors』では映画以外の話題も発信中。

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