映像作家クロストーク

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2023年09月21日

【対談】鈴木健太 ✕ 岡本太玖斗┃20代映像作家が語り合う、僕らが好きな映像とクリエイティブ

【対談】鈴木健太 ✕ 岡本太玖斗┃20代映像作家が語り合う、僕らが好きな映像とクリエイティブ


「映像」だけじゃなくていい。「デザイン」だけじゃなくていい。


──それぞれのキャリアについてもお聞きできればと思います。映像を撮り始めたきっかけを教えてください。

鈴木:小学生の頃から家にあるデジカメを使って人形とかをコマ撮りしてストップモーションアニメを作っていました。ただ、すごい動きのアニメーションを作りたいというよりは、物語とか会話が面白い作品を目指してましたね。

岡本:実は僕もコマ撮りをやっていました。みかんの皮が剥けていくのとか。あと、家にミニDVテープのカメラがあって、それを使って弟とコントとか映画を撮ってましたね。当時は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』やラーメンズが大好きで、小林賢太郎さんと小島淳二さんのユニット・NAMIKIBASHIにも影響を受けてました。


当時、ラーメンズとして活動していた小林賢太郎と、teevee graphicsの映像作家の小島淳二による映像制作ユニット

──お二人とも、現在に至るまでいろいろな経験を経ている印象があります。鈴木さんは多摩美術大学時代にDOMMUNE(*3)で働いて、その後中退してフリーランスの映像作家として活動、現在は電通に所属しながら映像ディレクターとしても活躍されています。

*3……DOMMUNEは映像作家、グラフィックデザイナー、VJ、文筆家、キュレーターなど多岐にわたる活動を展開するアーティスト・宇川直宏が主催するライヴストリーミングスタジオ。毎晩のようにさまざまなカルチャーにまつわるトークイベントと世界的なDJを呼んだプレイを配信。

鈴木:もともとはテクノやハウスがすごく好きで、その世界に飛び込みたくて大学時代はDOMMUNEでバイトをしていたんです。音楽はもちろん、毎日のように面白い人がいっぱい来て、いろいろな話を聞けて、大学より学べるじゃんって(笑)。その当時からMVを作っていたこともあり、勢いで大学をやめてしまいました。ちょうどその前後で、tofubeatsが好きでMaltine Recordsの「東京」というイベントに友達と遊びに行ったら、マルチネの主宰・tomadoと知り合ったんです。それから数年後、ひょんなことから一緒に住むことになって......。イベントの手伝いとか映像を撮ったり、デザイナーのスケブリさんとマルチネ主催のイベント「大都会」「砂丘」のビジュアルをつくったり、とにかくいろいろやってましたね。

ネットレーベル「Maltine Records」のいくつかのプロジェクトの企画・デザインを手がけた。「大都会と砂丘」は渋谷WWWXのオープニングパーティとして開催

岡本:当時のマルチネのイベントビジュアルは僕も傍目にかっこいいなと思ってました。

鈴木:そんなフラフラした生活をしていたら、たまたまリオ五輪の閉会式を観て。かっけーー!と思い調べたら、当時電通にいた菅野薫さんが手がけられていることを知り、「会いたい」一心でDentsu Lab Tokyoでインターンを始めました。そこで、電通のいろんな方の仕事に参加したら、思っていた50倍くらい面白くて。フリーランスって一匹狼で視界が狭くなったりすることもあるんですけど、ここは一つ屋根の下に数百人っていうクリエイティブ部隊がいて、並走するかたちで営業やPRとか沢山の人が動きながら刺激しあっている。しかも各部門には超一流の人が集まっていて、世の中に伝えることを真剣に考えていて。これは勉強になるし、逆にこれまでのインディペンデントな自分の感性が活きるだろうなと思って入社したんです。


鈴木さんが手掛けた今年の甲子園のCM

──岡本さんはどうでしょうか? 

岡本:僕は大学を卒業したのが2021年の3月で、そこから就職活動をしたけど全然楽しくないし上手くいかなくて。そのタイミングで、学生時代にお世話になったクリエイティブカンパニーから誘っていただいたのですが、そこが社員をほとんど持たずに個人の編集者やデザイナーと一緒に仕事をするところで、業務委託という形でフリーランスとして仕事をし始めました。それから1年くらいの間に個人の仕事が会社の仕事量を超えたこともあって、去年の2月からはそこを離れて1人で仕事をしています。思い返すと、受験でも就活でも、ことごとく行きたいと思っていたところにいけなくて、その度にふと目の前に現れた選択肢に行き着いてきた感じです。運と縁だけで生きている気がしています。

岡本さんがデザインを担当した細野晴臣『恋は桃色』50周年の7インチアナログ

岡本さんが友人と立ち上げ、企画やデザインで参加するアートプロジェクト「平砂アートムーヴメント」のアーカイブブック

岡本さんがデザインしたLAUSBUBのアートワーク


岡本さんが手掛けたmayuのMV

鈴木:すごく貪欲ですよね。グラフィックデザイナーやアートディレクターとしての素質を映像にまで活かしはじめていて怖いですよ(笑)。自分も映像ディレクターをやりながら、会社員として企画をやったりクリエイティブディレクターの仕事もしている2足のわらじ感が岡本くんとも近いなって。でも、岡本くんの映像はちゃんと自身のグラフィックデザインの法則の中に存在していて、誰にも真似できないものがすでに生まれまくってる。

岡本:(しみじみと)嬉しいです。映像は、今年の初めに浦上想起さんのMVを作らせてもらって、そこから依頼が来始めました。でも、実は映像も写真も音楽も、制作している時はグラフィックデザインの思考で作っているところがあって。平面に配置するような感覚とか、全体のバランスの取り方とか。あとは僕の中では自分がやばい、面白いと思えるものにしないと作る意味がないっていうところで全部がつながっています。

鈴木:わかる。


岡本さんが今年制作した浦上想起 「遠ざかる犬」のMV

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