夢と愛を積むひと…?手紙が紡ぐ、フリー素材モデルと松竹・美人社員の1日
小規模な映画館と同程度の設備が整った試写室。大きなスクリーンがあり、100名前後の着席が可能となっている。
安永「ここで毎日試写会を行っています」
大川「へぇ〜、すごい!このスクリーンで自分が出演した作品を観たら感動しちゃいますね!」
安永「そうですね。特にはじめて映画に出演する方は、感慨深く作品を観ています。席に座って上映する前から泣いてしまう方もいますよ」
大川「僕も泣いちゃうかな〜。いや、きっと最後まで我慢するだろうな〜」
安永「大川さん、なにブツブツ言ってるんですか?」
なかなか映画の出演依頼を切り出さない安永さん。きっと、大事な話は最後にするタイプなのだろう。さすが松竹勤務、演出家タイプだ。
席に座りしばらく話をしていたら映画デートのようないい雰囲気になってきたので、軽いボディタッチを試みた。愛は積み重ねるものだからだ。
大川「僕の映画のヒロインは、安永さんにお願いしようかな。スクリーンの中でもプライベートでも恋人同士、最高じゃないですか」
安永「ちょ、ちょっと。やめてください」
おかしい。
未来の映画スターからのお誘いなのに、あっさりと拒否されてしまった。
いかんいかん。少し焦りすぎたのかもしれない。フリー素材モデルに映画の出演依頼は、相当レアなケースだ。開放的な気分になれば話しやすいかと思い、安永さんを屋上に誘ってみた。
大川「そろそろ例の話をしましょうか」
安永「はい…。でも、はじめての試みなので私もどう話せばいいのかわからなくて」
大川「安心してください。僕はどんな仕事でもやりますし、どんな役でも引き受けます」
安永「ありがとうございます。大川さんの気持ち、とても嬉しいです。言葉ではうまく説明できないかもしれないので、文章にしてもいいですか?」
大川「もちろんですよ」
結局、屋上でも映画の出演依頼を受けることはなかった。あまり急かすと印象が悪くなり、案件自体がなくなってしまうかもしれない。もう少しだけ待ってみることにしよう。
オフィスに戻り、上司と話す安永さん。表情から察するに、映画の出演依頼だけではなく、未来の映画スターに対して女性として別の感情を抱きはじめたのか?
さっきボディタッチを拒否されたのも、照れ隠しゆえの行動かもしれない。
短い時間ではあるが、2人の間に愛が積もってきたのかもしれない…。そんなことを考えていたら、自然とニヤけ顔になってしまった。
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