染谷将太がスゴんだ理由に爆笑&感動!『ディアーディアー』菊地健雄監督インタビュー・後編



親友・染谷将太さんにまつわるエトセトラ



―― 今、地域活性に映画やドラマを活用されてるところが多いですよね。エキストラは、地元のフィルム・コミッションで登録されている方にお願いしたのですか?

菊地監督「そういう方もいますし、市役所の方が集めてくれた人達だったり、自分の両親や、親戚のおじさんなんかも参加してます。その一方で、あちこちの現場にエキストラで参加している、エキストラが趣味みたいな方々がいまして。助監督時代に仲良くなったんですけど『僕が監督するなら是非協力したい』と参加してくれた方もいましたね。」

―― いいですね、そういう信頼関係って!キャストの中にも、菊地監督が映画を撮るなら協力させて欲しいと名乗りを挙げた役者さんはいましたか?

菊地監督「基本、出演してほしいと思った役者さんに声を掛けさせていただきましたね。次男・義夫役の斉藤陽一郎さんとは古い付き合いなので、割と早くから声をかけました。あとはやっぱり、染谷将太さんですよね。」

―― ここのところ、映画を観るとかなりの確率で染谷さんが登場します。

菊地監督「ねー。大活躍ですよね。駆け出しの助監督だった頃、小学生だった彼と初めて会いまして、そこからポイントポイントで仕事が一緒になることが多かったんです。なので、彼に対しては成長を傍らで観ていた親戚のおじさん的な視点もあるんです。

その後、彼が高校生になると、映画や写真など、色んな事に興味を持ち始めるんですが、彼の好きな事と僕の趣味がよく似ていたんです。その辺からプライベートでもご一緒するようになりました。お互いオフの日とかに一緒にゴハンとか食べに行って。」

―― わ〜。仲良しなんですね!

菊地健雄監督



菊地監督「今回、僕がデビューするにあたって、ぜひ染谷君にも出て欲しいと思いましたが、日本を代表する若手実力派として今や引っ張りだこですからね。それに、プライベートでも親交ありますから、お互いのスケジュールも何となく分かるんです。この作品の撮影が始まる頃、染谷君は僕の師匠・瀬々敬久さんの『ストレイヤーズ・クロニクル』に出演していたので、オファー出すのを控えてたんですよ。

でも、僕の初監督作品が進行してる事は彼も知ってますから『あれ?声かけてくれないの?』
っていう感じだったらしくて。もっと正確に言うと『お前のデビュー作に俺を出さなかったら、どうなるかわかってんだろうな!』くらいの勢いでした(笑)。」

―― アハハ!それは監督冥利に尽きますねー!!

菊地監督「いやぁ、凄く嬉しかったです。彼のマネージャーさんも本当に長い付き合いで、染谷君の判断かマネージャーさんの判断かは解らないんですけど『ディアーディアー』の制作プロダクション(冨士夫役の桐生コウジさん)のところに、プロフィールを持って営業しに行ったって言うんですよ。普通はそんなことしないんですけどって。」

―― そりゃそうでしょう!きっと今一番、オファーしてもスケジュールが取れない俳優さんですからね(笑)。

菊地監督「だから本当〜に有難くて。そう言って下さるんだったら是非ってことで、染谷君に出演をお願いしました。」

喜劇?悲劇?…必死度と笑いは比例する



―― あの、タカシというニート学生は、染谷さんが演じることを前提に作ったキャラクターだったんですか?

菊地監督「染谷君がキャストで参加してくれるなら、タカシ役をやってもらおうと思いました。なので、元々脚本の中に居たタカシを、僕が見たい染谷将太というか、この映画でしか見られない彼を作ろうと思い、細部を練り直しました。また、タカシを染谷将太に寄せていったところもありますね。」

―― だからタカシ役がめちゃめちゃハマってたんですね。胡散臭くて利己的なんだけど、その存在自体が笑えるっていう…。染谷さんのシーンで一番笑ったのが、冨士夫とタカシがお金を盗みに入って、お金を独り占めしたいタカシが冨士夫の頭を木魚で叩くシーンなんですけど。ホントもう、笑いを噛み殺すのが大変でした。

菊地監督「木魚で叩いたもんだから『ポコーン』って音がマヌケに響く場面ですよね。」

―― そうです、そうです!しかしこの『ディアーディアー』という映画は、シリアスのようなコメディのような、本当に不思議な映画ですよね。登場人物全員が、とにかく必死なんです。必死にお金を盗んだり、嘘を重ねたり、追っ手から逃げまわったり…。必死度がハンパない人を見ると、第三者は滑稽で笑ってしまうじゃないですか。それがこの映画と観客の間で起こっているように思えました。

菊地健雄監督



菊地監督「チャップリンの名言で『人生は、クローズアップで見ると悲劇だが、ロングショットで見ると喜劇である』とありますけど、そういう感じですよね。例えば地方都市って重い現状があったりしますが、それを『今、地方ではこんな問題があって、住人達はハードな生活を送ってます』と訴えるのも良いですが、やっぱり映画っていうのは、お客様に楽しんでもらいたいんですよね。それが映画にできる、映画的なことだと僕は信じてます。」

―― なるほど。しかしながら、コメディ映画かと思えば、シリアスなシーンも多く、ヒューマン的な側面も色濃くて、しかも感動させられる…。という、非常に分類しにくい、どのカテゴリーにも当てはまらない映画だと思ったのですが。

菊地監督「ですよねー。デビュー作…しかも長編だったので、いろいろ盛り込み過ぎた感はあります。ずっと、やりたいことを溜め込んでましたからね(笑)。でも、思いを全部ブチ込めたので満足しています。まあでも、この映画はある種のコメディかなって僕は思いますね。」

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