あ…ありのままに起こったことを話すぜ。一触即発!?映画『ディアーディアー』北関東バトル潜入レポ
ダークホース・冨永監督が禁じ手を乱打!!
どうにもホメホメ合戦になってしまいがちな戦局に、爆弾を投下したい大崎監督が次に繰り出したのは『ディアーディアー』が自分の作品『お盆の弟』に酷似しているというクレームでした。
大崎監督「率直に言うと、『お盆の弟』と『ディアーディアー』って、そっくりなんですよ。兄弟の話だし、監督の出身地で撮影をしてるし、基本ダメな奴しか出てこないし、北関東ってことで風景も似てるし、しかも最後の墓のシーンなんて丸かぶりじゃないですか!共通項のオンパレードで気持ち悪いんだよ。」
そこで菊地監督が「予算もきっと共通項ですよね」とお財布事情の話を持ち出すと、バトルどころか意気投合していく3監督。「絶対、同じくらいの予算だよね」「この中でどれが一番安いかな?」などと盛り上がり、さらに互いの距離が縮まった印象を受けました。
ああ…。せっかく大崎監督が投げかけた口火でしたが、燃え広がることはなかったようです。一体、いつバトルが始まるの?とヤキモキしていると、伏兵・冨永監督が何の前振りもなく禁断のネタをぶっ込んできました。
冨永監督「あの〜。茨城と栃木って、仲悪いんでしたよね?」
一瞬、会場が凍り付きました。群馬は玉村出身の大崎監督、栃木の足利出身の菊地監督。それぞれの故郷を舞台にした映画を撮られたわけですが、冨永監督の出身地は愛媛県です。おそらく、北関東のタブーをご存じないのでしょう。屈託のない笑顔で地雷を踏みつける冨永監督の勇姿に、おのずと感嘆の吐息が漏れました。
菊地監督「…仲悪いですよ。」
大崎監督「あの某漫才コンビが影響してるのかもしれないけどね。あと、都道府県魅力度ランキングっていうのがあって、確か3年連続で茨城が最下位です。で、群馬が45位、栃木が35位だったかな。底辺で争ってんのよ、北関東は。」
そんな折、愛媛出身にして茨城代表の冨永監督から会心の一撃が繰り出されました。
冨永監督「群馬と栃木って、海なし県ですよね。」
「群馬と栃木って、海なし県ですよね。」
「群馬と栃木って、海なし県ですよね。」・・・。
ああ、魔法の呪文『うみなしけん』。この6文字で栃木・菊地と群馬・大崎のライフは一気に急降下!三方を海に囲まれた愛媛の猛者・冨永は、ドヤ顔で他の2人を攻め込みます。
冨永監督「海がない事で、スネたり捻くれた事はありますか?」
まさに鋭角から急所をえぐり込んだ質問に、大崎監督も菊地監督も命の危機を感じたのか、両者ともここは素直に負けを認めます。
大崎監督「あります!」
菊地監督「いやぁ、相当あると思いますよ。」
大崎監督「小学校5年の時に初めて海を見た時、愕然としましたもんね。」
「えー!小5まで見てないんだ?」と、さらにマウントを取る冨永監督。もう北関東のことなどどうでもいい、俺は愛媛を背負って戦っているんだと言わんばかりの気迫です。海を出されては勝ち目がない…そう思ったのか、大崎監督は標的を栃木にシフトします。
大崎監督「そういや栃木はね、日光があるから30位台なんだって。」
うん。筆者も同感です。栃木なんて日光という金箔がなければ、ただの茨城ですよ。図星を突かれた形になった栃木の菊地監督ですが、そのプライドからあくまで平静を装います。
菊地監督「でもね。日光は、あまりにも『日光』で、すでに別物っていうか。栃木に帰属している意識ってのもあんまりないんで。」
その、栃木県民然とした、栃木の人から聞き飽きたリアクションに「あー。そうですか」と気のない返事をする大崎・冨永両監督。やっぱこのネタでもバトルにならなかったか…。
近すぎて見えてない?不遇な埋もれ木・北関東の逆襲
そしてイベント終盤。愛媛の人なのに、不本意ながら茨城県民として登壇している冨永監督が、北関東と東京の距離を図るような質問を会場に投げかけました。
冨永監督「気になってたんですけど、この中で北関東3県の方ってどのくらいいらっしゃいます?ちょっと手上げてもらっていいですか?」
手が上がったのは群馬出身の方が1人だけ。ということで、筆者も取材という立場ながら、場のテンションアップに一役買いたいと、思い切って挙手してみました。
冨永監督「たった2人ですか。北関東の人はもっと東京にいると思ってたんですけどね。」
実は北関東って、かなり東京に近くてですね。筆者の故郷・水戸を例に挙げますと、特急で1時間もあれば都内に行けてしまう為、上京する必要がないんです。今はネットや小売業も盛んですから、地方にいながら東京と同等の生活もできるし、モノも入手できる時代です。なので、わざわざ家賃の高い東京に住まずとも、居心地の良い地元に居着いてしまうという話を、菊地監督が説明されました。
大崎監督「都心から近い北関東は、ロケーションしやすいんですよ。けど、何もない。この3作品って、何もないところの話なんですよ。例えば京都で撮る映画って、京都で撮った感が出るじゃないですか。でも、我々の映画はどこで撮ったか言わないと解らない。どこにでもある風景が必要な時、北関東に撮りに来るんですよ。」
なるほど。寺社や長屋が建ち並んでいたら京都、ラベンダー畑や流氷だったら北海道と明確に伝わるものがあります。しかし北関東は、そういうのを期待してロケをする場所じゃないのかもしれません。
冨永監督「地元にしてみれば、初めは嬉しかったロケも、だんだん『もういいよ』みたいになってきちゃうと思うんですよ。ウチの街で撮っておきながら“どっかの街”ってことになってるし。ま、場所借りただけですよね。多分よくあることだと思うんですけど、この3作は『ここを舞台に撮りました』ってやってる映画だと思うんです。」
大崎監督「それと、今回の3作品の共通点は、現場となった地元を全く宣伝しないという点だよね。ある種、だいたい観光映画になるじゃないですか。それはやだなーと思って。」
確かに、全然地元の宣伝などは出てきませんでしたが、地元の力もお借りしたという話だし、地域活性に一役買おうという地元愛があっても良さそうですが…。
菊地監督「ないない!まったくないよね。俺なんか地元出身だけど、ご当地精神でやってないからさ。…あ、これって問題かなぁ?(汗)。」
大崎監督「いや、むしろ清々しいと思います。でも俺は、そっちの方があとあと宣伝になると思うんですよね。地方都市の空気感みたいなものが素直に出ていて、観る側にも伝わるものが大きいんじゃないかな。」
3人でのバトルを期待したイベントでしたが、結果的には北関東を取り巻くロケの実情をスケープゴートするという、変則バトルでトークイベントは終了となりました。
トークバトル終了後は・・・ん?ちょっと待てよ?
あれは本当にトーク“バトル”だったのしょうか?リョウモウシカのように幻の存在だったという事はないでしょうか?
もしかすると「バトルであって欲しい」と願うあまり、筆者は夢を見ていたのかもしれません。幻の存在に翻弄された3兄妹のように、数年後「全部バトルのせいなんだ!」と叫ばずに済むよう、自分をしっかり持って今後の人生を生きたいと思います。
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