映画コラム

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2016年01月16日

『の・ようなもの のようなもの』、鑑賞後の感じる内と外の温かさ

『の・ようなもの のようなもの』、鑑賞後の感じる内と外の温かさ

シネマズ編集長の柳下修平です。「編集長の新作映画レビュー」、今回は第3弾。2011年に急逝した森田芳光監督のデビュー作「の・ようなもの」(1981)のその後を描いた『の・ようなもの のようなもの』をお送りします。


 

の・ようなもの のようなもの ポスター


(C)2016「の・ようなもの のようなもの」製作委員会


 

『の・ようなもの』の35年後を描くが初見でも問題なし!


本作は35年前に公開された森田芳光監督デビュー作『の・ようなもの』。その35年後を描く本作ですが初見でも問題はありません。

東京の下町の落語家一門の出船亭に入門した松山ケンイチ演じる志ん田(しんでん)がかつて一門に在籍していた伊藤克信演じる志ん魚(しんとと)を探して落語に復帰させようとするお話。

その物語自体は非常にシンプルなのですが、魅力的な登場人物たちが周りを固め非常に面白く心地よい作品に仕上がっています。

初見でも問題がないという根拠は主人公が35年前の『の・ようなもの』と異なっているためです。新たに主人公となった松山ケンイチ演じる志ん田のフレッシュで愛嬌があってどこかダサい(ほめてます)が映画をより引き立てます。北川景子のナイスアシストもまた見どころです。

もちろん『の・ようなもの』をご覧になったことある方は繋がりを楽しむことができ、森田芳光監督作品を多くご覧になられている方は森田芳光監督作品に出演してきたキャストたちの豪華共演に様々な思いを抱くことでしょう。

三田佳子、野村宏伸、宮川一朗太、鈴木京香、仲村トオル、佐々木蔵之介、塚地武雅と非常に豪華なキャストが共演をしています。

 

後味を感じる奥深い魅力


本作の物語は良い意味で予定調和。結末に至るまでに何かがひっくり返ったり、衝撃的な事態が起きるような作品ではありません。しかしそれが良いのです。

王道の物語の中に感じる人と人との繋がりや温かさ。下町風情ある優しい映像や音楽。そして挟まれる素敵な笑い。それらが映画を彩ります。

映画を見てる時は「心地良いなあ」「温かいなあ」「面白いなあ」と素直に感じるのですが、見終わった後の後味がまた格別。

映画の外の話にはなりますが、杉山泰一監督は「本作は森田監督への恩返し」と仰っています。映画の中で追悼公演が開かれるので当然森田芳光監督への追悼と重ねて考えてしまいます。その追悼公演の温かさを映画が終わったあと考えるとほろりとくるのです。

映画が終わった後に考える映画の中の登場人物たちの温かさ、そして映画に携わった方々の森田芳光監督への敬意。その二つが重なり心の中に言葉では表しにくい感動が生まれるのです。

よって、「この映画のベストシーンはここ!」というよりかは、その感動を感じることが出来た映画鑑賞後の瞬間がある種この映画のベストモーメントかもしれません。

私は森田芳光監督作品全てを隅々まで存じ上げているわけではありません。そのような方も多くいらっしゃると思います。そういう方はまず本作を是非ご覧頂いてから、『の・ようなもの』を含めた森田芳光監督を堪能してみてください。

そういう楽しみ方もできる素敵な素敵な作品です。
『の・ようなもの のようなもの』は1月16日より全国公開中です。

(文:柳下修平)

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