2016年05月24日

日本映画の企画・製作について語り合う—後篇−
 塩田明彦×斉藤守彦対談


日本映画の企画・製作について語り合う—後篇−
 塩田明彦×斉藤守彦対談



「動画配信は、一切収入になっていません」


斉藤 ここ数年、パッケージ・メディアの売上がダウンしているから、監督が手にする二次使用の報酬もダウンしていますか?

塩田 極端にダウンしています。急勾配ですよ。

斉藤 今、色々と動画配信とか出てきていますが・・。

塩田 配信は一切収入にはなってないです。

斉藤 追加報酬とかは?

塩田 グレーゾーンなんじゃないですか、それは。あのね、基本的には「黄泉がえり」の頃だと契約書に項目がないですね。その辺の権利闘争も、していかなくちゃいけないのかも知れない。ただ配信そのものって、あまり儲けている人がいないですよね、製作者側では。

斉藤 聞いた話ですが、配信業者に放映権を売る金額が、今、ダンピングされていて、ひと山いくらみたいになっているそうです。

塩田 そこからまた歩合でとるってのは難しい。それでこっちに還元されないってことでしょう。

「お互いに、ちょっと恥ずかしいことしてるよね(笑)」


「映画を知るための教科書 1912−1979」という書籍について語り合う対談、というよりも本書をたたき台にして、現在の我が国に於ける映画産業について語り合う対談になってしまったが、それはそれで、得がたい意見交換が出来たと思う。最後に、本書の想定読者層でもある、映画を学ぶ人たちについて話を進めたのだが・・。

塩田 黒沢清監督が前に言っていたんですが「映画の何が良かったかと言えば、学校で教えてくれなかった」と。

斉藤 それは良い言葉ですねえ。

塩田 学力に関係なく、自分は映画の世界に行けば何か出来ると思い込む。でもそういう時代のことを、僕らがいま教科書として書いている(笑)。

斉藤 だから僕は「教科書」というタイトルには対抗したんですよ(笑)。

塩田 僕も「映画の授業」とか出していますから。映画美学校で講座をやって。

斉藤 お互いに、ちょっと恥ずかしいことしていますよね(笑)。

塩田 (笑)恥ずかしい。映画は学校で学ぶものじゃないと言って、学校で教えている(笑)。

 発言にあったように、塩田明彦監督の新作は日活ロマンポルノ45周年を記念した「ロマンポルノリブートプロジェクト」の1本で、この企画には塩田監督の他、白石和彌、園子温、中田秀夫、行定勲ら注目の監督たちが参加している。塩田監督作品のテーマは「バトル」で、神代辰巳をリスペクトしながら、奔放な女と翻弄される男の躍動感あふれる駆け引きを軽妙に描くとのこと。今冬、新宿武蔵野館にて公開が決定している。

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(採録・構成・文:斉藤守彦)

塩田明彦監督プロフィール


1961年9月11日、京都府生まれ。

立教大学在学中より黒沢清、万田邦敏らと共に自主映画を製作。82年「優しい娘」が「ぴあフィルムフェスティバル」に準入選、翌年「ファララ」が入選し、広く注目を集める。大学卒業後、黒沢清作品を中心に助監督として参加。
その後は企業用VP等を数多く演出する一方、監督/脚本家の故・大和屋竺のもとで脚本を学び、91年脚本家として独立。

96年、オリジナルビデオ「露出狂の女」を監督。劇場公開作品としてのデビュー作『月光の囁き』は、98年度「新人監督の製作活動に対する助成」(財団法人東京国際映像文化振興会運営)対象作品に選出され、ゆうばり国際冒険ファンタスティック映画祭では、審査員特別賞と南俊子賞をダブル受賞。99年公開された『どこまでもいこう』ではナント三大陸映画祭審査員特別賞を受賞。00年、デジタルビデオ作品「ラブシネマ」シリーズ第5弾『ギプス』を監督。ドラマ「あした吹く風」(01/BS-i)では、小学生の女の子を主人公に昭和の家族をあたたかく描写してみせた。

つづく『害虫』(02)は、01年第58回ヴェネチア国際映画祭「現代映画部門」正式出品、ナント三大陸映画祭「コンペティション部門」で審査員特別賞、主演女優賞(宮崎あおい)をダブル受賞する。
そして『黄泉がえり』(03)は、当初3週間限定公開の予定だったが、興収30.7億円をあげる大ヒットとなり、3ヶ月を超えるロングラン興行となった。引き続き2005年にはインディペンデント映画「カナリア」と、「黄泉がえり」と同じ梶尾真治原作の「この胸いっぱいの愛を」を監督。

2007年に公開された、製作費20億円を投じた大作「どろろ」は、国内だけで興収34.5億円と「黄泉がえり」を上回る大ヒットを記録。その後2014年には「抱きしめたいー真実の物語−」を監督。2016年冬に公開が決定している「日活ロマンポルノ・リブートプロジェクト」では4人の監督と共に日活ロマンポルノに挑戦した。
また映画監督の傍ら、映画美学校で講師を行っている。著書に「映画術・その演出はなぜ心をつかむのか」、「映画の生体解剖×映画術:何かがそこに降りてくる(稲生平太郎、高橋洋との共著/電子書籍)がある。

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