映画コラム

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2016年08月05日

『ジャングル・ブック』を観る前に知ってほしい10のこと!これは新たなディズニーの傑作だ!

『ジャングル・ブック』を観る前に知ってほしい10のこと!これは新たなディズニーの傑作だ!

ジャングル・ブック 日本版ポスター


(C)2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.


8月11日(木・祝)より『ジャングル・ブック』が公開されます。ここでは、試写会で先に本作を観た記者が、より楽しむための方法をお伝えします。ネタバレはありません!

1.主人公の少年以外はすべてCG!


本作で何より信じられないのは!主人公の男の子以外は!動物も!大自然も!すべてがCGで表現されていること!!!全編がロサンゼルスのスタジオのみで撮影されているのです。



実際に本編の映像を観てみると……風になびく葉っぱ、木々の間から差し込む木漏れ日、雨や水の表現、動物たちの重量感や豊かな表情……などなど、これが本物じゃないなんて、とても信じられません。
CGとリアルの境界線をなくし、映像技術により“世界”を作り上げた映画として、この先も語り継がれるのではないでしょうか。

なお、主人公に抜擢されたニール・セディは、2000人ものオーディションから選ばれた12歳の新人です。その身体能力の高さ、類まれな演技力にも大いに驚くことでしょう。

2.作風がディズニーアニメ版と違う!


『ジャングル・ブック』はもともとノーベル文学賞受賞作家のラドヤード・キプリングによる小説ですが、その名前を聞いて多くの方が連想するのは1967年のディズニーアニメ版でしょう。ウォルト・ディズニーの死後、初めて公開された長編作品としても知られています。

当時のアニメーションとしての技術が結集されている作品ではありますが、原作小説からかなり単純化されたうえ、コミカルな面が強調されているため、物語としては少し説得力に欠けるところもありました。
子どものときは陽気な音楽やキャラクターの個性のおかげで楽しめたのですが、大人になったいま観ると、設定や結末にだいぶ気になるところもあったのです(※個人的な印象です)。

しかし、この2016年版『ジャングル・ブック』はディズニーアニメ版のコミカルさは抑え気味になり、“異なるコミュニティでの生きにくさ” や “過去の因縁”といった要素がよりクローズアップされたため、より原作小説に近く、シビアな作風へと生まれ変わっています(結末もそれらとはまったく異なっています)。

物語は、オオカミ家族の一員として育てられた少年モーグリが、人間への復讐心に燃える恐ろしいトラが現れたため、動物たち集団からの離脱を余儀なくされるというもの。ディズニーアニメ版と比較すると、この過程もかなり細やかに、かつ深刻に描かれていました。

ディズニーアニメ版を観ておくと、今回の2016年版『ジャングル・ブック』が、より大人も楽しめる作風へと進化したことに気づけるはずです。

3.コミュニティ形成の物語になっている!


本作で興味深いのは、“集団で生きる(生きられない)人間の子ども”に焦点が当たっており、結果としてコミュニティ形成にまつわる物語が紡がれていることです。

少年モーグリは、オオカミの一員として活動する中で、人間の知恵として“道具”を使ったとき「それは禁止だ」と言われてしまいます。彼は優れているアイデアを持っているのに、コミュニティ全体の秩序を守るために、その能力を制限されてしまうのです。

しかも、モーグリは絶対的な力を持つトラの命令により、オオカミたちの集団から離脱し、ひとりで生きなければならなくなります。乱暴に言えば、トラは差別主義的な独裁者であり、モーグリは高い能力を持っているにもかかわらず、居住権の認められない難民のような存在なのです。これは、世界中にある問題の縮図のようでもありました。

また、オオカミたちのコミュニティの中では、トラの独裁者としての力だけでなく、“ジャングルの掟”も、かなり重要視されています。
しかしこの掟は、お気楽に生きているクマのバルーからは「それは◯◯◯◯◯◯だよ!」と批判をされてしまいます。この言葉が出てきたとき、本作がコミュニティ形成の問題を浮き彫りにしていることがはっきりするでしょう。

本作が高い評価を得たのは、その見事な映像はもちろんのこと、人間の世界にあふれている問題を、子どもも楽しめるエンターテインメント作品に落とし込んだことも理由なのではないでしょうか。
この論理的かつ、子どもにもわかるように問題提起をしている様は、大傑作『ズートピア』を彷彿とさせました。やっぱり最近のディズニーはすごい!

ちなみに、本作の脚本家であるジャスティン・マークスは、『トップガン』の続編でも脚本を手掛けることが報道されています。



(C)2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.



4.ディズニー史上、もっともカリスマ性のある悪役が登場!


本作の大きな魅力のひとつが、独裁者的な存在となる、トラのシア・カーンという敵キャラの迫力です。
その佇まいから存分に“服従するしかない絶対的な強さ”を感じるのですが……ゾッとしたのは、彼が“オオカミの子どもたちを手懐けている”こと! これは原作小説でもあった描写なのですが、映像で観るとその怖さは段違いでした。

またシア・カーンは、原作小説ではあることで大いに怯えてしまうシーンがあったり、ディズニーアニメ版ではちょっと間の抜けた小物っぽい悪役になっていたりもしました。
それからすると、この2016年版の“悪としてのカリスマ”としての魅力は半端ではないものがあります。“ディズニー史上最高の悪役が登場する!”と期待しても、裏切られることはないでしょう。

5.じつは『チャッピー』や『バケモノの子』的な“子育て映画” !?


本作で大好きなのが、“異なる性格の育ての親”が登場することでした。

黒ヒョウのバギーラは、少年モーグリに対して厳しい訓練やお説教をする“教育パパ”です。
反対に、クマのバルーは「のびのびと子どもが育ってくれたらそれでいいじゃん」な適当さがあり、子どもの教育に「訓練のついでに俺も食べ物がもらえるといいなあ」という私利私欲丸出しな打算を持ち込んでいます(笑)。

これは、『チャッピー』で悪党たちがロボットに(彼らなりの)教育をしようとしていたこと、『バケモノの子』の熊徹(ダメ人間)とその悪友ふたりがぶっきらぼうながらも子どもを育てようとしていたことを彷彿とさせます。

こういう、子どもを大切に思う大人たちが奮闘するのって、見ていてほっこりしますねえ(しみじみ)。このバギーラとバルーというお父さんたちが相談しつつ子どもを守ったり、やがて友情が芽生えていく過程も見どころになっていました。

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