『ミュージアム』を観る前に知ってほしい7つの魅力!
(C)巴亮介/講談社 (C)2016映画「ミュージアム」製作委員会
11月12日(土)より映画『ミュージアム』が公開されます。これは、日本でできる、エンターテインメント・スリラーにおいて最上級と言える仕上がりでした!以下に、“観る前に知ってほしい”その魅力を紹介します。
1.猟奇殺人犯を捕まえろ!謎を解くミステリーのおもしろさがある!
本作は、神出鬼没の殺人鬼“カエル男”と、それを捕まえようとする刑事による、シンプルな構図のスリラーです。
何よりも特徴的なのは、カエル男がターゲットをただ殺すだけでなく、私刑(個人が法によらず勝手に犯罪者などに刑罰を加えること)を執行していることでしょう。それは例えば、“母の痛みを知りましょうの刑”や“均等の愛の刑”などなど……。
カエル男は、ターゲットが“真っ先に思い当たる事柄”をモチーフにした私刑を次々と行っていくのです。その結果として残された死体はかなりグロテスク。直接的な描写が避けられているためか本作のレーティングはG(全年齢)指定となっていますが……“覚悟”して観たほうがいいでしょう。
これらの描写はひたすらに悪趣味ではありますが、同時に“なぜカエル男はこんなことをするのか?”というミステリーとしてのおもしろさにも繋がっていきます。そのほかにも作中には多数の“謎”が散りばめられているので、“探偵もの”が好きな方も大いに楽しめるでしょう。
(C)巴亮介/講談社 (C)2016映画「ミュージアム」製作委員会
2.『るろうに剣心』の大友啓史監督最新作!画の美しさやリアリティにも注目!
本作は『ハゲタカ』や『るろうに剣心』などでエンタメ作家としての実力を見せつけた、大友啓史監督の最新作です。アクションに妥協がないのはもちろんですが、その画作りも注目すべきでしょう。
例えば、殺人鬼“カエル男”が現れるのは決まって“雨の日”ということで、メインのロケ地には曇天の多い新潟県が選ばれています。ほかにも神戸の歴史的建造物などで、シーンごとにマッチした撮影を続けた結果、鬱々としながらも、どこか美しさも感じる“重い”空気が映画の中に充満していました。
小道具のディテール、カエル男のマスクにもこだわりが見られます。パーティーグッズのような安っぽさが微塵もない、そのヌメっとしたマスクの質感は、本能的な嫌悪感を煽ることでしょう。
また、大友監督は裁判員制度や警察の組織構造だけでなく、いくつかの刑事の家庭まで尋ねるなどして、徹底的に取材を重ねていたそうです。このおかげで、主人公の刑事の家庭での日常シーンや、警察内の会議シーンにおいて、かなりのリアリティを感じられるのです。
何より、大友監督の演出にはキレが抜群で、まったく飽きさせないエンタメとしての魅力をとことん追求していることが素晴らしかった!上映時間は132分と少し長めですが、余計なシーンは1つとしてありません。ずっと緊張感を保ったまま観られることでしょう。
(C)巴亮介/講談社 (C)2016映画「ミュージアム」製作委員会
3.小栗旬の体当たり演技がすごすぎる!
本作は実力と人気を兼ね備えた俳優・小栗旬の主演作。『信長協奏曲』では高校生を演じていていましたが、今回は家庭を持つ刑事ということで、かなり厳格な“大人”の役となっています。
殺人鬼を捕まえるため、愛する妻と子を守るためになら、何をも厭わないというこの主人公を、小栗旬はまさに“体当たり”で演じきっています。時折見せる狂気的な表情には、恐怖を感じるほどでした。
また、クライマックスにおいて主人公は衰弱していくのですが……小栗旬はその撮影のため、小さなビジネスホテルと撮影場所以外では外出をせず、寝ない、食べないという状態を1週間も続けていたのだとか。あの追い込まれて、やつれきっていた主人公の表情は、小栗旬のほぼ命がけの役作りのおかげなのです!
(C)巴亮介/講談社 (C)2016映画「ミュージアム」製作委員会
4.これが本当にブッキー!?妻夫木聡が怖すぎる!
殺人鬼“カエル男”を演じているのは、これまた日本を代表する俳優の1人である妻夫木聡なのですが……これがもう“誰かわからなくなる”ほどの怪演を見せつけてくれました!
精神を逆なでするようなふざけた声やら、快楽を感じたがゆえの笑顔やら、「これ本当にブッキーなの?」と思わざるを得ません。これまで50何本の映画に出演してきた妻夫木聡が、ここに来て新たな一面を見せてくれたことに感動しました。
なお、妻夫木聡が犯人役だという発表に、世間では「ネタバレじゃないか?」という声があがっていましたが、本編を観てみるとまったくネタバレに当たるものではなかったと明言しておきます。実際は発表内容を逆手に取って……おっと、これこそネタバレになるので言えません。要するに、ちゃんと本編のことも考えた、誠実なプロモーションができているということです。
(C)巴亮介/講談社 (C)2016映画「ミュージアム」製作委員会
5.『シン・ゴジラ』の尾頭ヒロミこと、市川実日子も出演!
小栗旬や妻夫木聡だけでなく、本作は脇を固める出演者も豪華です。主人公の妻には尾野真千子、部下には野村周平、上司には松重豊、父には大森南朋などなど……若手からベテランまで勢揃いしています。
そして、『シン・ゴジラ』にて、矢継ぎ早にしゃべりながらも分析力や洞察力に長けており、ようやく見せた笑顔からくる“ギャップ萌え”で大人気となったキャラクター“尾頭ヒロミ”を演じた市川実日子も本作に出演しています!
彼女がどういう役であるかは秘密にしておきますが、『シン・ゴジラ』とはまた違った、ツンツンした魅力を感じられますよ。
(C)巴亮介/講談社 (C)2016映画「ミュージアム」製作委員会
6.原作にない+αの設定、原作にないラストも?
本作の原作は、『週刊ヤングマガジン』に連載された同名のマンガ作品です。
今回の映画版の大筋は、かなりこの原作に忠実なのですが……その一方で主人公周りの設定には“原作にない+αの要素”が付け加えられており、原作とはまったく違うラストも用意されています。
ネタバレになるのでそれらの要素の詳細は書けませんが、映画のラストについて大友監督は「映画ではやや俯瞰の視点で、犯罪が限界ギリギリの人間にどう影響するかも意識した」と語っています。
原作をすでに読んだ方も、映画ならではの“ラストの再解釈”に期待してみてください。
(C)巴亮介/講談社 (C)2016映画「ミュージアム」製作委員会
7.これは和製『セブン』と呼ぶべき作品だ!
こういった連続殺人鬼ものの映画と聞いて、多くの方が思い浮かぶのはデヴィッド・フィンチャー監督作の『セブン』でしょう。『ミュージアム』の原作マンガが大きな話題となり、多方面から映画化のオファーがあったのも、ハリウッドの先人が作り上げた『セブン』という傑作への“あこがれ”があったからなのかもしれません。
しかし、大友監督は本作の企画を聞いた当初は、難色を示していたそうです。
というのも、大友監督は、『セブン』で描かれたようなキリスト教の宗教観などが日本にないため、本作が犯罪礼讃や単なるゲーム的展開に終わってしまうという危険性を感じていたのだとか。大友監督は、原作の持つ美意識を大切にしながらも、現代の日本での正しい倫理観と、エンタメ性を併せ持つ作品を完成させようとしたのです。
その大友監督の想いが注ぎ込まれたのが、“日本ならでは”のエンタメスリラーである『ミュージアム』なのです。ぜひ『セブン』が好きな方はもちろん、邦画の底力を見たい方にもオススメします。
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(文:ヒナタカ)
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