なぜそれを選んだし! 「そういえばこれもクリスマス映画じゃね?」作品を選んでみた



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「クリスマスに観るおススメ映画!」というのは、どうしても毎年毎年やっていれば自ずと絞られてきてしまう。もちろんそれらは名作ばかりで、『素晴らしき哉、人生!』や『34丁目の奇跡』といった古き良き映画から、『ダイ・ハード』、『グレムリン』、『ホリデイ』といった近作タイトルもお馴染みだろう。

……困った。出尽くしてしまっているではないか。今さら、何を挙げればいいのか。

と、いうことで。頭を絞りに絞って、クリスマス映画ランキングやおススメタグにがっつりとは出てこない、けれど「これもクリスマス映画、かな?」というお気に入りの5作品を独断と偏見で選んでみたので、ご笑覧いただければと思う。

『テッド』


テッド(字幕版)



セス・マクファーレンが監督だけでなく喋るクマのぬいぐるみ・テッドの声まで演じてしまった大ヒット映画。「あれ? テッドってクリスマス映画だっけ」と忘れられているかもしれないが、立派なクリスマス映画である。たぶん。そもそも、テッドはクリスマスプレゼントとしてが主人公・ジョンの家にやってきているのだ。そして、友達のいなかったジョン少年はテッドに命が宿るように願った結果、喋るクマのぬいぐるみが爆誕したのである。

まぁぶっちゃけるとクリスマス要素といえばそれくらいで、時が経ち少年ジョンはマーク・ウォールバーグへと成長、テッドは見た目はぬいぐるみ・中身はオッサンの変態グマに。ジョンはさておき、テッドのはちゃめちゃぶりはもはやキャラ立ちどころのレベルではない。おそらく世界中のどこを探しても、酒漬けマリファナ漬け女好きのクマのぬいぐるみなんて他にいないだろう。ジョンのいない間にコールガールを連れ込んで乱痴気騒ぎをすれば、レジスタ相手に腰を振ってみせたりもする。口を開けば猥褻用語を並べ立てるようなぬいぐるみが愛嬌を振りまく映画に、もはやクリスマス特有のの暖かなイメージは微塵もない。

ところが不思議なことに、表面上にはクリスマス要素はなくても、ずっと映画の根底にはクリスマスを楽しみに待っている童心のようなノスタルジーさが流れている気がしてならない。たとえジョンが大人になっても、テッドがオッサンになっても、2人の友情になんら変わりがないことがそう思わせるのか。ジョンは何があってもテッドを見放さない。見放せない。テッドもまた、ジョンから離れられない。2人には精神的な繋がりの強さがあり、そんな関係が羨ましく思えてくるほどだ。そもそもテッドが人語を話せるようになったのも、クリスマスの魔法の続きだったのかもしれない。テッドに出会えたことだけでなく、テッドが“話す”ことと、二人の固い友情を見るにつけ、クリスマスがもたらした奇跡がワクワク感となって胸をくすぐり続けるのだ。

『ロング・キス・グッドナイト』


ロング・キス・グッドナイト [DVD]



アクション映画を得意とするレニー・ハーリン監督が、当時の妻ジーナ・デイヴィスを主演に据えて撮りあげた本作。共演はみんな大好きサミュエル・L・ジャクソンで、脚本を担当したのは『リーサル・ウェポン』の脚本家にしてのちに『アイアンマン3』を監督することになるシェーン・ブラックというのだから、なかなかのエンターテインメント成分の濃さではないだろうか。クリスマスで賑わう街がテロの脅威に晒されるので、『ダイ・ハード』とはまた趣きの異なるクリスマス・アクション映画とも言える。ちなみに記憶を失っていた主人公・サマンサが、実は凄腕のCIA工作員だったという過去に行き当たるきっかけとなった日が、クリスマス・イブになる。

しかしながら、結局はハーリン印のアクション映画である。「クリスマス!」という雰囲気を楽しむとか、「素敵だね」「綺麗だね」と愛を語るような映画ではない。むしろ爆発を愛で、飛び交う銃弾に心を躍らせるハイテンションムービーなのだ。記憶喪失から徐々に覚醒し、アサシンとしてのスキルを発揮していくサマンサ=ジーナ・デイヴィスのカッコ良さたるや。ガンアクションの精度、格闘スキルの高さは爽快感抜群で、そのお膳立てをするサミュエル叔父貴の存在感も冴える(余談だが、サミュエル叔父貴は本作で自分は死ぬものだと思っていたららしく、しぶとく生き残ったことに驚き喜んだ。

そのためかハーリンは次作のサメ映画『ディープ・ブルー』でサミュエル叔父貴を容赦なくアレしている)。本作最大の見せ場である最後のヤケクソ的な大爆発は、吹き飛ばされ炎に包まれた車が隕石のように降り注ぐほどの破壊力で、ミニチュア撮影とはいえその崩壊ぶりは爆破フェチには最高のクリスマスプレゼントなのではないだろうか。

『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』


映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!



今年も「スター・ウォーズ」と劇場公開が被ってその勝敗に注目が集まった、「映画 妖怪ウォッチ」シリーズ。第1弾『映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!』は映画好きをも唸らせるパロディ精神に満ちた作品だったが、2作目の「〜5つの物語だニャン!」は物語を分割した上で一つ一つのストーリーに深みを与えるという方法を試みた。これが見事にハマっていて、保護者世代だけでなく本来のターゲット主要層である子どもも、より楽しめて整理しやすい展開を見せた。それでいて、それぞれの物語にしっかりと伏線をまぶしておき最後のエピソードで回収する手腕は見事と言うしかなく、「子ども向けのアニメ映画だから」とスルーを決めこむのは実に「勿体ない」作品だったと言える。

さてこの「〜5つの物語だにゃん!」でクリスマスのエピソードが描かれたのは、エピソード4の「USAピョンのメリークリスマス」。当番制で回ってきたサンタの役目を担うUSAピョンが、未空イナホとプレゼントを子どもたちに配っていくというストーリーで、USAピョンとイナホは「プレゼントはいりません」という少年と出会うことに。見どころとしてはネタバレになりかねないので詳細は書けないが、やはりプレゼントを拒否する少年の展開が泣かせるし、今までプレゼントを貰ったことがないというUSAピョンのキャラづけが上手い。

実は筆者は映画版から「妖怪ウォッチ」の世界に入ったクチなので、正直に言うと「USAピョンて誰や」くらいの知識しかない(ジバニャンの出自すら知らなかった)。それでも、グッとくるのだ。キャラを知らないからといって、それで物語の魅力が伝わらないなどということがない。まるでこちらの手を取りサンタのソリに乗せて運んでくれるように、すっと心に響き、馴染んでいく。それはクリスマスのエピソードだけでなく、5つの物語を通して「大切なものとは何か」をしっかりと教えてくれるので、筆者は各話ごとに涙腺が緩みっぱなしだった。

『イニシエーション・ラブ』


イニシエーション・ラブ



邦画ミステリーから1本。ミステリ小説界の名手・乾くるみの同名小説を原作にした本作は、映像化不可能と言われる原作に仕掛けられたトリックを、堤幸彦監督が大胆に映像化してみせた力作である。とある男女の恋愛模様を観客は見守り続けることになるが、もちろんそこは堤監督。一筋縄で行くはずもなく、原作と同様にside Aとside Bという二手に物語が分かれた構成に。

“まゆ”という女性キャラクターをめぐるストーリーは、“たっくん”という男性の存在を通して多面的な表情を見せながら、衝撃のラストに向かって収束していく。至るところに張られた伏線と、巧みな心理誘導、種明かしをしてからの大胆な演出構成。なによりも、原作とは異なるラストを用意した映画版はとにかく役者の演技が光り、どんでん返しを心から楽しむ作品に仕上がっていた。

そんな作品がなぜクリスマス映画なのかと言えば、物語の結末がクリスマス・イブだからだ。「それだけかよ」と怒られそうだが、ちょっと待ってほしい。このクリスマス・イブという設定が、実に上手いのだ。それは小説とは異なる結末を迎えた映画版でも、その設定は変更していない。なぜなら、クリスマス・イブという恋人たちが過ごす聖夜がこの物語に必要不可欠だからだ。

なぜ必要不可欠なのかと言うと──それは言わぬが花だが、真相を知った上で目に見えない部分に至るまで物語を咀嚼していけば「なるほど」と唸らざるを得なくなるはず。そんなこともあり、本作は改めて考えるとクリスマスにカップルで見るには「なかなかエグいものがあるよなぁ」、と思う。『ブルー・バレンタイン』や『ゴーン・ガール』などがよく引き合いに出されるが、ラストでとあるキャラクターが見せる表情を思い出すにつけ、この作品も負けていないと思いを強くするのである。

『トイズ』


トイズ (字幕版)



そろそろ真面目な作品を挙げないといけないような気がしたので、ラストはロビン・ウィリアムズの隠れた名作を。本作はブリキなどの手作り感に溢れ、子どもに夢を与えるようなオモチャを愛する主人公・レスリーと、その叔父でありハイテクオモチャを作って軍事利用しようと目論むジボ将軍の対決を、新旧玩具の“戦争”を通して描いた作品。1992年の公開当時、残念ながら興行・批評ともに認められなかった不遇の作品だが、いまやジボ将軍の目指した世界が現実のものになってしまったという、先見的な映画でもあった。

そして、主演のロビン・ウィリアムズの軽妙な演技はもとより、『レインマン』などで知られるバリー・レビンソン監督が紡ぎあげたファンタジックな世界観は、ストーリー、美術、戦闘シーンどれをとっても郷愁感とレトロ愛に満ちたものに。レスリーの子どもじみつつも(父親の葬儀に笑い袋を仕込むようなファニーガイ)優しさに満ちた人間性と、彼を慕う周囲のキャラクター描写も居心地が良い。

玩具工場が舞台でオモチャが重要な意味を持つということもあって、本作のオープニング・クロージングにはクリスマス劇が差し込まれ、ウェンディ&リサによる主題歌「The Closing of the Year」が流れるという構成。レスリー、そしてオモチャたちの闘いを経て訪れるラストは、大きなクリスマスツリーのもとで子どもたちが嬉しそうにオモチャで遊ぶというオープニングにリンクしたもので、もはやそのシーンだけで泣けてくる。

ちなみに本作はサウンドトラックも豪華で、音楽は「ダークナイト」シリーズや『ダンケルク』などの作曲家ハンス・ジマーと、バグルスやイエスなどで活躍してきた名プロデューサーのトレヴァー・ホーンが共作。2人による劇伴のほかにも、「The Closing of the Year」はもちろんエンヤやフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドといった劇中曲もアルバムには収録されている。正統的なクリスマス映画とは呼べないかもしれないが、クリスマスのワクワク感を全体に散りばめた、まるでおもちゃ箱をひっくり返したような作品なのだ。

まとめ


家族と観るもよし、恋人と観るもよし、もちろん一人で観るもよし。紹介した作品の中には「なんでコレ選んじゃったかな」と思うような作品もあったかもしれない。いや、あった。それは大目にみてもらうとして、誰とどう過ごすのかもクリスマスの一つの楽しみだが、どんな映画に出会えるかというトキメキも楽しんでみてはどうだろう。

(文:葦見川和哉)

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