『グレイテスト・ショーマン』サントラ全曲徹底解説! ミュージカルナンバーに込められた想い


ヒュー・ジャックマン、圧巻のパフォーマンス


終盤で流れるナンバー「FROM NOW ON」は、ある意味では俳優ヒュー・ジャックマンの真骨頂となる楽曲。


物語の最後の転換点となるミュージカルナンバーなのでストーリー上の言及は避けるが、バーナムのソロパートから始まる同曲は一曲の中で感情の流れが一気に昂ぶっていくのが特徴的。ジャックマンは完璧なまでにその流れをミュージカルという名の演技で乗り切っており、なおかつ伸びと張りのある圧倒的な歌唱力を披露している。

「THIS IS ME」がセトルの存在なくして成り立たなかったように、ジャックマンのボーカルだからこそ実現した力強いナンバーであり、アンサンブルメンバーのサポートとパフォーマンスにも感情を揺さぶられる。この場面に関しては一部が予告編でも使用されているが、ラストシーンに向かって重要な位置を占めており、ミュージカルパフォーマンス以上の感情を観客の胸に与えているので細部に渡るまでじっくりとパフォーマンスを堪能してほしい。

最後に、どうしても本作はパセック&ポールによるミュージカルナンバーに目と耳が向きがちだが、ミュージカルナンバーの曲間を繋ぐBGM(スコア)も丁寧な働きを見せているので注目してほしい。スコアは実写版「ジャングル・ブック」のジョン・デブニーと「オブリビオン」のジョセフ・トラパニーズの共作体制で作曲されている。ミュージカルナンバー以外でも、じっくりと耳を傾けると2人の楽曲が歌詞すら持たない“スコアだけ”でキャラクターの感情や状況を語っていることにも気づくはずだ。


まとめ


本作は手放しに絶賛されているわけではない。本国では批評家から批判され、スタートダッシュを決めた日本ですらバーナムのキャラクター性やストーリーの構成に対する否定派の意見も多い(確かに上映時間が105分しかなく、「もっと語るべき部分があっても良かったのでは」と思えるシーンの欠如感は否定できない)。しかし、そんな“賛否両論ながら大ヒット”という構図は劇中のバーナムのサーカスに対する民衆の声とも似てはいないだろうか。

本作は現代の人々へのメッセージ性も込めつつ、やはりミュージカル映画という名の1つのエンターテインメントショーでもある。圧倒的なパワーを感じさせるミュージカルナンバーから圧巻のパフォーマンスまで、本作そのものがバーナムの目指したショウビジネスの答えになっているのかもしれない。批判の声があるということも踏まえつつ、これほど感情を昂らせてくれるエンターテインメントを見逃す手はない。

ビッグスクリーンで、最高の音響でバーナムたちが繰り出すパフォーマンスをたっぷりと堪能して笑顔になってほしい。

(文:葦見川和哉)

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