映画コラム

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2018年04月11日

キャストが、台詞が、美術が、創り出す空気感。日本映画の醍醐味を感じる『モリのいる場所』

キャストが、台詞が、美術が、創り出す空気感。日本映画の醍醐味を感じる『モリのいる場所』

■橋本淳の「おこがまシネマ」

どうも、橋本淳です。7回目の更新です。

今回はこれから公開される邦画を、おこがましくも、ご紹介いたします。

『モリのいる場所』




(c)2017「モリのいる場所」製作委員会


沖田修一監督の最新作。最初から期待が高い上にさらに、名優2人がその期待をさらに引き上げる。

山崎努×樹木希林

どうですか、このビッグネームの共演。これでもかという魅力的な、お2人。



(c)2017「モリのいる場所」製作委員会


仙人と呼ばれた画家・熊谷守一94歳。そして、笑顔がチャーミングな妻・秀子76歳。

草木が生茂る庭に寝そべり、せわしなく動き回り続ける蟻をじっと見つめる老人。ボサボサの白髪に長く伸びたヒゲ。1977年に亡くなった画家・熊谷守一。その晩年の日常を描いた本作。

名声欲、金銭欲とは無縁にひたすら好きなことだけを心のままに追い続けてきた、超然として奥深くも愛らしい人間性を浮き彫りにする。

94歳のモリは30年間、ほとんど家の外に出たことは無く、庭の小さな生命たちを見つめ、絵を描いてきた。昼間には、様々な訪問客。その相手をする、妻・秀子。1日1日がゆっくりと、暖かい。心豊かに充足した人生が、ユーモラスに描かれる。

名優2人のやり取りに、心奪われます。

その佇まい、表情、空気、匂い。



(c)2017「モリのいる場所」製作委員会


全て纏って役としても居住まいに、目を奪われます。2人で碁をうつシーンや、食卓を囲むシーンは特にユーモア溢れる場面です。2人が長年連れ添い、どのような人生を送ってきたか、その年輪や雰囲気までもきっちり、しっかり焼き付いてます。(橋本、本当に感動いたしました)

そして、沖田監督の綴る台詞の端々に、そのセンスに、毎度、いいなぁ、、と心からの声が思わず漏れてしまう。無駄なく展開していき、ひとつひとつが丁寧に、しかし、はっきりと伝わってきます。

人物1人1人が、際立ち、それぞれの生活感を感じられる、そこが本当に心地よい。

他のキャストも個性豊かな面々。

熊谷家にやってくる写真家に、加瀬亮。その助手に、吉村界人。

信州の旅館の主人に、光石研。

マンションの工事現場監督に、青木崇高。マンションのオーナーに、吹越満。

モリの姪・美恵ちゃんに、池谷のぶえ。いりびたる画商に、きたろう。冒頭に登場する、林与一。

と、こんなにも豊かな面々が、作品をさらに彩ります。



(c)2017「モリのいる場所」製作委員会


そして、何より、庭などの美術が素晴らしいのです。モリがずっと過ごしている庭。その説得力を見事に具現化です。

ポツンと庭と同化するモリ、そのシーンは本当に美しかった。

庭で様々な生命を観察し、共存しているモリの台詞が心に残ります。

「蟻っていうのは、左の2番目の足から動きだすんだね」

「下手だ…下手でいい。下手も絵のうちです」

「かあちゃんが疲れちまいますから。それがいっちばん困る」



(c)2017「モリのいる場所」製作委員会


こんなにも暖かくて、安心できて、幸せな映画を久し振りに観ました。

鑑賞中は、僕の口元は、ずっと口角が上がりっぱなしでした。

クスクス笑う会場に、心がすぅーっと解れていく。

この映画を、創り上げた関係者の皆様に感謝です。

是非、沢山の方に、観ていただきたい映画です。

5月19日より、全国ロードショーです。
http://mori-movie.com

では、今回も、不肖・橋本淳が、おこがましくも紹介させて頂きました。

(文:橋本淳)

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