映画コラム
『アルプススタンドのはしの方』レビュー:今年の邦画ベスト1はこれに決定!
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2020年夏の幻の甲子園と
青春群像を描いた映画
(C)2020「On The Edge of Their Seats」Film Committee
一方で、本作を大いに堪能しながら、ふと不可思議な想いを馳せてしまう瞬間もいくつかありました。
それは、今年=2020年の夏は甲子園が開催されないという、厳粛たる事実です。
もちろん本作自体は特に劇中の年度を設定しているわけではなく、その意味では普遍的な青春映画として屹立して見られる秀逸な作品です。
ただし、たとえば2020年の現在を生きる高校3年生にとって、この映画はどのように映えることでしょう?
いわば幻の2020年夏の甲子園を応援する高校3年生たちを描いた、現実にはあり得なかったファンタジーとして、どこかしら複雑な想いを抱かせてしまうかもしれません。
(ちなみに本作の公開日が、本来東京オリンピックが開催されるはずだった初日=7月24日というのも、偶然ではあれ何やら意味シンです)
2019年までは確実にあったであろう、そして2021年以降は復活してほしいアルプススタンドにおける高校3年生たちの一所懸命な青春のやりとりは、2020年の今年に関してのみはリアルに当てはめることができない。
しかしながら必ずや別なところでの普遍性によって、何某かの希望の光を見出すことができる作品であるとも確信しています。
その意味でも、奇しくも甲子園が開催されない2020年の夏に劇場公開される本作は、だからこそ2020年を象徴する作品としてもその存在感を際立たせていくのではないかと、そんな気もしてなりません。
いろいろな、さまざまな、それぞれの想いに囚われつつ、出来得ればやはり2020年の夏にこそ見ておいていただきたい傑作です。
必見です!
(文:増當竜也)
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