映画コラム

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2021年02月09日

『ハウス・ジャック・ビルト』レビュー:なぜ人は殺人鬼映画を見たくなるのか?

『ハウス・ジャック・ビルト』レビュー:なぜ人は殺人鬼映画を見たくなるのか?

■橋本淳の「おこがまシネマ」

どうも、橋本淳です。74回目の更新、よろしくお願い致します。

皆様、お変わりないですか?

引き続き、緊張状態の続く毎日ですが、笑顔が少しでも多くなる生活に早くなることを祈ります。

自宅、仕事場、スーパーの行き来を繰り返す毎日。たまに空いてそうな時間を狙って、映画館には足を運びますが、あとは単調になりがちな日々を送る。

どこか刺激を欲しているのか、サブスク配信系で選ぶ作品が最近は偏ってきています。

「オススメ!」と明るい声のトーンと爽やかな表情では、絶対言いづらい作品を、今回は紹介していこうかなと思いますw 

それでは、今回はこちらを!

『ハウス・ジャック・ビルト』



1970年代、アメリカ・ワシントン州。建築家に憧れている技師のジャック(マット・ディロン)は、自分の家を建てる夢も持っていて、自宅ではそのミニチュアを組み立てたりしていた。

ジャックと老人の会話が聞こえてくる。ジャックは12年間で60人以上殺してきた、大量殺人犯だということがわかる。その中から、いくつかピックアップした話をジャックが思い出した順に話していく。

ある日、ジャックはいつも乗っている愛車でもある真っ赤なバンを走らせていると、車が故障してしまって立ち往生している女性(ユマ・サーマン)に出会う。彼女は修理のために使用するジャッキが壊れてしまったので、助けて欲しいとジャックに懇願する。

ジャックは、拒否の意思を出し続けるが、渋々と彼女を助けることに。彼女を車に乗せ、近くの知り合いのところまで連れて行き、ジャッキの修理を頼んだ。その往復の道中、車内ではその女性がジャックに対して「あなた、殺人犯のような目ね」などと言い、何故かジャックを挑発し続ける。(彼女なりのコミュニケーションなのだろうか)

ジャックはあしらい続けていたが、彼女はその反応が面白いのか、そのやり取りをやめずに続ける。そして、彼女が「あなたには人を殺す度胸なんてないわよね」と言った瞬間、ジャックは彼女のジャッキを手に取り、彼女の顔を殴りつけた。何度も何度も殴り、殺してしまう。

ジャックは冷凍ピザを保管する倉庫を買い取っていたが、使い道に困っていたその場所に遺体を運び込むことに。

殺人の”快楽”と罪悪感の”苦痛”がせめぎ合い、周期的に殺人衝動に苛まれるジャック。その欲求にどうすることもできず、そして自身がサイコパスであると自覚的であった。さらにはジャックは重度の潔癖症であり、さらには強迫性障害でもある彼は、また別の殺人の話をし始める。。。



奇人で鬼才で天才的な、ラース・フォン・トリアー監督作品。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「ドックヴィル」「ニンフォマニアック」など、衝撃的な作品を送り続ける監督。本作は2018年に公開され、カンヌ国際映画祭では、途中退席者が続出し、賛否両論な問題作。

目を覆いたくなるようなシーンの連続。人によってはなんでこれを勧めるんだ!とお叱りの声もこちらに来そうですが、今回はこちらを。

サイコパスなシリアルキラーの作品は何作も世に出てきますが、ラース・フォン・トリアー監督の手に掛かると、芸術性の高いシュールコントのような味も出てくる。残酷すぎる描写なのに、鼻で笑ってしまうような展開に、今自分はなにを観させられているのだろうか感がすごい。

ラストシーンまで観ると、「あぁ、またすげぇものを観てしまったな、でも当分観たくないな」と、この監督作品の観賞後にいつも感じる余韻を今回も感じます。(でも、いつもよりはライトかなと)



なぜ人は、こういった殺人鬼映画に興味が湧いてしまうのでしょうか。いくつか自分なりに妄想。

まず思い当たるとしたら、理解不能な思考回路を、論理的に解釈していきたい欲。

人間は、潜在的に理解出来ないものを解明したいと思う心があります。(蓋をするパターンもありますが) 例えば新種を発見したらまず名前を付けるというのもそうですし、必ずカテゴライズしたがるのもその影響と思われる。

殺しに至る動機、その犯人の欲求、動機、快感、などを紐解いていくことに興味をそそられていくのでしょう。

そして、決して自分の人生では、通らない道を擬似体験出来るということ。やってみたいけど、絶対やってはいけないと理性が働くことは沢山あります。

それを体験するツールとして興味が湧くパターン。(書き方によってはなんだか問題になりそう、、)

例えば恋愛映画でもそういったことはありますね。自身では学生時代全く恋愛などしてこなかったからこそ、そういったキラキラとした学生恋愛を描く作品に妄想膨らませるといったように。

純粋に実生活だけでは足りない、刺激を求めるというのもあるのかもしれません。

これは映画だけにあらず、例えばジェットコースターなんてのも、その一つなのではないでしょうかね。誰も頼んだわけでもなく乗る必要ないのに、あのスリルを味わいに急降下マシンに乗り込むわけですから。

観てはいけないものを観て、その後映画館から一歩出て、現実に戻ったときのあの、ふわぁぁっ、とした感じは個人的にはとても快感に感じる。

私としては、職業柄、自分でそういった役をやるときが来るので、進んで色々(特に自身では絶対経験出来ないもの)な作品を観て妄想するので、あれですが。

そういったものを抜きにして考えると、上記のようなものに惹かれて、こういった問題作に魅力を感じてしまうのでしょうかね。

まぁまず、
問題作!!
衝撃作!!
観てはいけないっ!!

と書かれただけで、
逆に観たい!となってしまいますがね。

ダメダメと言われるとやりたくなる心理。

まだまだ解明の余地は多分にありますね。

これからも妄想と想像を駆使して、解明していこうかと思います。

それでは今回はやばい作品を、、、

おこがましくも紹介させていただきました。
(自分的にはシュールコント枠にカテゴライズさせていただきます)

(文:橋本淳)

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