『藁にもすがる獣たち』レビュー:大金を巡る金の亡者たちが織り成すサスペンス群像劇
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
曽根圭介による同名小説を原作に、韓国で映画化した犯罪サスペンス群像劇。
さまざまな理由で金に困っている者たちが、10億ウォンもの大金が入ったバッグをめぐって、獣のように欲望を剥き出しにしていく様を描いていきます。
チョン・ドヨン演じるまさかの情け容赦ない悪女、チョン・ウソン演じるまさかの情けなさ極まれりお役人など、韓国映画界を代表する人気実力派スターたちが従来のイメージを覆し、それぞれが金に目がくらんだ果てに悪魔と化して挑むピカレスク世界は大いにスリリング!
果たして最後に笑うのは誰か? 誰も笑えないのか? それともみんなで笑えるのか? などは見てのお楽しみとして、ストーリー展開の時間軸にもちょっとした仕掛けがめぐらされていて、なかなか一筋縄ではいかない、最後の最後まで気の抜けない快作として屹立しています。
『犯罪都市』『悪人伝』の製作スタッフに支えられ、これが長編映画デビューとなったキム・ヨンフン監督が見事に大任を全うしてくれました。
リア充な人生を送っている人からすれば、ブラック・ユーモアに包まれた作品として滑稽に愉しく映えるかもしれません。
しかし、大なり小なりお金に困っている多くの一般庶民からすると、他人事ではすまされないほどリアルに「この大金によって、良くも悪くも運命を狂わされていくのではないか?」といった、己自身の人生の不安までもシミュレーションできてしまえることでしょう。
(文:増當竜也)
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