『椿の庭』レビュー:静謐な時間の流れがそのまま映画に
人間の生きていることの儚さと美しさと
あらすじにも書いたとおり、本作『椿の庭』は劇中で、特段大きな出来事があるわけではありません。ただ移ろう季節を背景に古民家でのミニマムな家族のきずなと、老女の人生の一つの時間を切り取って語っているだけです。
ただ、そこに富司純子とシム・ウンギョン、そして鈴木京香という、三世代のそれぞれ“凛とした美しさの部分”を持ち合わせた女優を得たことで、ドラマに大きな縦軸、しっかりとした柱が生まれ、結果としてこの静かな物語を最後まで目が離せなくなります。
舞台となる古民家とその美しい庭の木々と花々、その先に見える海の映像は美麗という言葉以外にちょっと表現のしようがない美しさで、写真家として上田義彦の顔を見ることができるといえるでしょう。
映画『椿の庭』は儚いけれど美しい、(自然の一部である)人間の生きることの在り方を緩やかな時間の流れに乗せて感じることができる、そんな作品に仕上がっています。
(文:村松健太郎)
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