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Netflixの大傑作アニメ『ミッチェル家とマシンの反乱』、「5つ」の魅力を全力解説!
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Netflixの大傑作アニメ『ミッチェル家とマシンの反乱』、「5つ」の魅力を全力解説!
3:主人公のケイティに注目!LGBTQ+のサラッとした描き方が素晴らしい!
キャラがみんなクセが強くて愛おしくて大好きになれる『ミッチェル家とマシンの反乱』ですが、特に実質的な主人公である、長女のケイティの役どころは重要です。彼女にまつわる描写をよくよく見ると、LGBTQ+(セクシャルマイノリティ)のキャラクターであることがわかるのです。まず、ケイティが身につけている缶バッジの1つが「虹色」になっています。これは、LGBTQ+の尊厳と社会運動を象徴する旗である「レインボーフラッグ」でしょう。また、ケイティは自分のことについて「親はどうしていいかわかんないみたい。ていうか、自分でも自分がよくわかんなかったんだよね」と言いながら、鏡の前でカウボーイ風の格好や、女の子っぽい服装など次々と着替えたりしています。こうしたところから、ケイティが「自分でも自分がよくわからない」のは、自身のセクシュアリティまたはジェンダーが不明瞭であることも理由だとわかるのです。
さらに、終盤でケイティのママは、「感謝祭にジェイド(女の子の名前)は来るの?(元気?)」とケイティに話していましたが、原語をよく聞いてみると「Are you and Jade official(付き合っている?)」と言っていました。ママが、当たり前にケイティが女の子と付き合おうとしている、そのことを応援しているのです。
その会話の後に、ケイティは「まだ、2、3週間よ」「私、病気に見える?」と言って、さらにとんでもない「冗談」でママを驚かせます。ひょっとすると、その「病気に見える?」というのは、ケイティ自身が「女の子が好き」ということを「病気」だと思い込んでいた、またはママか他の誰かにそう言われてしまったからこそ、冗談でごまかそうとしていたのではないでしょうか。自身の今までの悩みを、ギャグに昇華して笑い飛ばそうとする、ケイティの健気さが垣間見えたような気がしたのです。(さらに、ケイティが作る映画に「本音」が表れていることにも注目!)
さらに、ケイティの弟のアーロンは、電話帳を片っぱしから調べて恐竜が好きな人と電話で話そうとしていた一方で、極端なまでに女の子が苦手であり、少しコミュニケーションを取ろうとしただけでも、すぐに逃げ出してしまいます。でも、ケイティは「弟とはすごく気が合う」と言っており、実際にケイティとアーロンはとっても仲良しの姉弟でした。それは、アーロンにとってケイティが良い意味で「女の子らしくない」からこそ、気兼ねなしに接することができたから、なのかもしれません。
何より素晴らしいのは、こうしたLGBTQ+への言及が「よく見るとわかる」「サラッと描かれる」程度であり、当たり前にケイティが物語の主人公として大活躍することです。これは、最近の映画の1つの潮流。例えば『デッドプール2』(2018)では同性愛カップルが当たり前に「あ、そう、(付き合えて)良かったね」と祝福されていたり、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(2019)ではレズビアンである女の子が親友から当たり前のように恋路を応援されていたりもしました。LGBTQ+にまつわる問題をはっきりと提示する作品ももちろん世の中に必要ですが、こうして「当たり前に」「サラッと」LGBTQ+の当事者のことを描く作品もまた必要だと思うのです。
また、ケイティはおそらくはレズビアンまたはバイセクシュアルということなのでしょうが、そうであると明確に断定されていません。実際の社会でもそうでしょう。個人のセクシュアリティやジェンダーは複雑なものであり、決して「枠」に当てはめるべきものではないのですから。その人がその人らしい生き方を選べるのであれば、それでいいのです。そのセクシュアリティやジェンダーに悩む人へのメッセージが、後述する「変」であることの肯定にもつながっているというのも見事!
なお、日本語吹き替え版がめちゃくちゃクオリティが高く、そのケイティの声優を務めた花藤蓮さんのちょっとハスキーな声が、カッコよくてしかも可愛いキャラにどハマりしていることも素晴らしい!『キャプテン・マーベル』(2019)のマリア・ランボーの吹き替えも務めていた花藤蓮さんの活躍を、もっと追い続けたくなりました。
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