『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』レビュー | 「前作以上」な5つのポイントで徹底比較!!
徹底比較!!『ザ・ファブル』VS『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』
アクション
前作『ザ・ファブル』のアクションシーンでは岡田准一の身体能力の高さ、アクション俳優としてスキルに多いに驚かされた反面、もったいなさも感じることがありました。
顔を見られるわけにいかないので目出し帽のようなマスクを被っているので、岡田准一本人かどうかが判別できないというのはまぁ仕方のないのですが、クライマックスのここぞというシーンで引きの絵になってしまったりしていました。岡田准一の体技がすごいのですから、そこはアップで大暴れをしているところ見せて欲しかった。
また、クライマックスのごみ処理場の中での戦闘は雰囲気はありましたが何せ暗がりが多くて良くわからないという部分もありました。全体的を見ても『ザ・ファブル』は暗い屋内のアクションシーンが多かった印象があります。
それに対して『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』ではアクションの見せ方が非常に上手くなっていて、アップで見せるべきところと引きの絵で見せるべきところの線引きが絶妙でした。
“団地パニック”と名付けられた団地とその周辺の足場を使った一対多数のアクションシーンは思わず息をのみます。こちらは思い切り真っ昼間の屋外での戦闘が中心になるのでとても映えます。その分騙しが効かないので作る側は大変だったと思いますが…。
また、前回アクション面では見せ場が少なかった木村文乃も今回はアクション全開の一方で、他の人物同士の戦いがなく“ファブル”のすごさをストレートに感じられるものになっています。
ドラマ
今回のキーパーソンは堤真一演じる宇津帆と平手友梨奈演じるヒナコ。
宇津帆はかつて“ファブル”の殺しのターゲットになっていながら、直前で命令が変わって生き残ったという男。
そしてヒナコはこの命令の中で巻き込まれる形で下半身に障害を追ってしまった女性です。
かつて救えなかった人間、殺すはずだった人間が“誰も殺してはいけない生活”を贈るファブルの前に現れます。
前作『ザ・ファブル』では“ファブル”を追い回す殺し屋コンビや、真黒カンパニーの内紛によって火の粉が“ファブル”に降ってきたという部分がありましたが、『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』は過去の因縁があると言うこともあって“ファブル”がより積極的に物語の芯に交わっていき、ドラマ性に深みを持たせています。
キャラクター
前作でヒロインの役割を担ったミサキは今回は、敢えて非アクションパートのみの登場で、どちらかというと物語をリラックスさせる役割を担っています。
代わりに平手友梨奈演じるヒナコがヒロインとして物語の中心の役割に。
また、前作ではどちらかというとサブ的な存在だった木村文乃演じるヨウコがしっかりと闘いの中に身を投じているのも新展開と言えるでしょう。
悪役というか敵役の宇津帆と鈴木も“自分たちがファブルには敵わない”とわかっていてなお、作戦を練るという面白い立ち位置にいます。
「“ファブル”はすごいけど、この方法なら何とかなるんじゃないか?」と思わせたうえで、それを“ファブル”が乗り越えていくというのは新しいヒーローの描き方と言えるのではないでしょうか?
安藤政信演じる鈴木もただの敵役では終わらない重要な判断を下すことになるキャラクターで終盤に向かってどんどん重みが増してきます。
『ザ・ファブル』の時の地震に溢れた悪役、敵役に対して『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』の敵役は自分の弱さを認めたうえで“ファブル”に用心深く対峙していきます。
ヒロイン
前作『ザ・ファブル』ではその薄幸さが全開だった山本美月演じるミサキ。今回もまたバイト先の同僚として登場します。“ファブル”=佐藤アキラにほのかに恋心を抱いているようですが、“ファブル”はなんともそっけない態度をとられています。
今回は物語の緩急の“緩”の部分に登場することもあって、佐藤二朗演じる社長と共に笑いのパートを担当しています。
とは言え、持ち前の(?)薄幸さは健在で間接的とはいえある事件に関わってしまったりもします。
物語の緩急の“急”の部分のヒロインのヒナコは“ファブル”を“ファブル”だとわかったうえでなお一層関わってくるキャラクターという、特異な立ち位置にいます。
宇津帆や鈴木との関係性も一言では言い表せない複雑な形になっていて『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』はヒナコの物語としても見ることができます。
笑い
『ザ・ファブル』『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』共にダークサイドの住人が大挙して登場します。いわゆる堅気ではない人たちばかりです。
自然と物語は殺伐としてきて、実は結構エグイ展開もいっぱいあります。
見せ方、撮り方が上手いのでR指定やPG-12になっていませんが、全部ありのままに描いてしまったら結構大変なことになると思われます。
そんな映画ですが、緩急の“緩”の部分での笑いは今回も健在です。
もともと“ファブル”が一般的な日常とは全く縁のない生活をしてきているので、自然と“ズレ”が生じて、そこがなんとも言えない笑いを誘います。
ちなみに“ファブル”がはまっているお笑い芸人ジャッカル富岡は今回も健在、この場面でやるか!?というところで、滑りギャグが炸裂しています。
岡田准一の持つ瞬発力がいい意味で笑いに繋がっています。ジャッキー・チェンなんかに通じる部分を感じることができます。
全体を通して
『ザ・ファブル』と比べて『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』は“ファブル”のエピソードゼロの部分を描かなくて済んだりするので、物語としてはシンプルになっています。
群像劇で盛沢山だった『ザ・ファブル』から、『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』はメインの登場人物を絞った形でアクションの激しさを残しながらも、ドラマの部分でかなり深いものになりました。
続編というのは映画においてはなかなか難しいものですが、今回の『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』は“前作を超えた続編”の一本となったと言えると思います。
最後に(ネタバレにはならないネタバレ)
『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』を見たときには最後の最後まで席を離れないでください。最後の最後でボスが営む整体院のシーンが登場、ここの壁にかかる人体図の頭蓋骨の中のある部分がアップになって映画は終わります。これは原作シリーズについて多少調べている方なら“ニヤリ”とする場面です。
映画は“生もの”でヒットしなくては次はないものですが、その次を感じさせるうまい布石になっています。原作と照らし合わせても“3度目のファブル”はあり得るのではないかと思います。
(文:村松健太郎)
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