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『アジアの天使』レビュー:日韓の壁を乗り越える奇跡を描く石井裕也監督の挑戦的ロード・ムービー


■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

決して良好とはいえない日韓両国の昨今ですが、本作は石井裕也監督がオール韓国ロケで、ほぼ韓国人のスタッフ編成で、両国の未来に希望を託すかのように撮り上げた作品です。

撮影はちょうど2020年2月、コロナ禍が一気に深刻な状況と化していく中、奇跡的にクランクアップを迎えることが叶い、こうして完成させることが出来た点でも奇跡的作品と言えるかもしれません。

実はこの作品、まさに「奇跡」が大きなモチーフとなっており、そのためにタイトルにもある「天使」が大きな鍵となっていくわけですが、それが実際にどういう意味を持ちながら描出されていくのかは見てのお楽しみ。



また日本人と韓国人、双方の家族がたまたま出会い、共に旅を始めるロード・ムービー仕立ての構造から、ほとんど言葉が通じないことから生じるお互いのジレンマが、歴史的な確執も含めて近くて遠い隣国同士の忸怩たる関係性と、それを乗り越えるために必要な要素とは何であるのかまでも真摯に示唆してくれています。

さらには『ぼくたちの家族』(14)など石井監督作品の中で時折顕れる「家族」という重要なモチーフが、ここでは日韓の家族同士が融合していくことで新しい家族関係が芽生えていくという流れが自然と醸し出されているのは、本作の麗しき美徳でもあります。

日本側も韓国側も、実は家族内の仲が決して良いわけではなく、しかしそんな双方が交わっていくことでギクシャクしたものがどんどん融和化していくあたりも感動的。

自動翻訳機なんてありえないまま、お互いが自国の言語でしゃべり続けるところなど、当然ながら相互理解できているわけもないのですが、見ている側は不思議と次第にコミュニケーションが取れているように錯覚させてくれるのも映画のマジックではあり、意図的ともいえる石井演出の賜物です。



いつも良いけど石井作品ではさらに良い池松壮亮が今回も当然ながら良く、一方で『金子文子と朴烈』(17)で鮮烈な印象を与えたチェ・ソルの存在感が抜群。両者のぎこちないコミュニケーションの先から予想されるものに、見る側は何某かの希望を見出すことが出来ることでしょう。

今年は『茜色に焼かれて』も好印象の石井監督ですが、今回の国境を越えた新たな挑戦も評価したいものです。

(文:増當竜也)

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