【厳選】今週公開オススメ映画!『竜とそばかすの姫』だけじゃない…!
【厳選】今週公開オススメ映画!『竜とそばかすの姫』だけじゃない…!
『17歳の瞳に映る世界』
妊娠した17歳の少女とその友人による静かで強固なロード・ムービー予期せぬ妊娠をしてしまった17歳の少女オータム(シドニー・フラニガン)が、いとこのスカイラー(タリア・ライダー)と一緒にペンシルバニアからニューヨークまで中絶手術をするために向かいます。
映画ははじめ少女たちの日常を、中盤からはふたりの数日間にわたる旅をロードムービー仕立てで描いていきます。
思春期とは、女性に対するさまざまな現実の世界を真のあたりにしていく時期かもしれませんが、本作のふたりの少女はべったり甘えたり泣きわめいたりといった日本のキラキラ映画のキャラクターとは別世界の住人のように、無口でストイックで、心の痛みを決して表に出さないように腐心しています(表に出す術を身に着けてない、といったほうが正しいのかもしれません)。
一見ハードボイルドな風情を崩すことのない、特に当事者であるオータムはそれゆえに感情を殺し続けていますが、そんな彼女がマンハッタンで審査室でカウンセラーから淡々とあれこれ質問を受けていくうちに涙がこぼれてしまう瞬間などは圧巻です。
一方で、ずっと一緒にいるゆえか、オータムとスカイラーの間がどことなくぎこちなくなってしまう瞬間など、さりげなくも「あるある」な事象ではあるでしょう。
しかし、それでも最終的にこのふたりの不可思議な連帯感によって旅はまっとうされるとともに、ハッピーエンドかアンハッピーかといった次元を優に超えた幼い人生の情感が醸し出されていきます。
2017年に『ブルックリンの片隅で』(Netflix配信中)でサンダンス国際映画祭監督賞を受賞したエリザ・ヒットマン監督が「女性たちの語られざる旅の物語」として真摯に取り組んだ本作、10代の若い女性はもちろんのこと、同世代の男性にこそ見ていただき、いろいろ気づいていただきたいもの(その伝ではこういう作品こそ、本当は学校の視聴覚教育で生徒に見せるべきでしょうね)。
第70回ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)やサンダンス映画祭2000ネオリアリズム賞など現在世界各国の映画賞を席捲中。
ふたりの女優の存在感も含め、ニューヨークの街をリアルに活写した撮影エレーヌ・ルヴァールの映像も特筆しておきます。
●2021年7月16日よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開
配給:ビターズエンド&パルコ
監督:バリー・ジェンキンス
出演:シドニー・フラニガン、タリア・ライダー
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