田中圭、2つの顔を比較する/ブラック VS ホワイト
ホワイト圭が見られる『総理の夫』『そして、バトンは渡された』
「おっさんずラブ」を彷彿とするホワイト圭が見られるのは、2021年下半期に続々公開される映画『総理の夫』『そして、バトンは渡された』だ。
ここで一度、「ホワイト圭」のなかにも2種類あると定義しておきたい。
「おっさんずラブ」を代表とする、恋愛を主軸に置いた作品では演技に若干のスイートさが混じるため、名付けるなら「スイート圭」。そして『総理の夫』『そして、バトンは渡された』各作品で演じるのは、どちらかといえば甘さよりは“おっちょこちょい“や“天然“な面が強調されたキャラクターだ。あえて名付けるなら「ナチュラル圭」だろうか(天然で不思議ちゃん要素があることを示したい)。
ホワイト圭の中でもナチュラル圭が楽しめるのが、『総理の夫』『そして、バトンは渡された』なのである。
(C)2021「総理の夫」製作委員会
『総理の夫』で演じるのは、女性初の総理大臣となった相馬凛子(演・中谷美紀)の夫・相馬日和。未だかつて誰も経験したことのないファーストジェントルマンになった日和は、ただ「妻が総理大臣になった」だけでガラリと変わる人生に翻弄される。
その大きな波にこれでもかと翻弄される様が面白い。もし自分だったら……と考えると恐ろしいのだが、そこはさすがの田中圭、絶妙にコミカルな味わいにしてくれるので必要以上に悲壮感はない。
次々と総理大臣としての役目をまっとうする凛子に眩しさを感じつつ、日和は彼女を支えながら大きな愛で包み込む。そう、田中圭は愛を表現するのもお家芸だ。あの笑顔で、包容力たっぷりのハグをされたら……多少のことは許して水に流してしまうだろう。
一方『そして、バトンは渡された』で演じるキャラクターは、夫というよりは父親の色が強くなる。高校生の娘・優子(演・永野芽郁)とは血の繋がらない父親である森宮さんを演じる田中圭。彼はこの作品で、一風変わった父親の在り方を示してくれた。血縁関係がないなんて不思議に思えるほど自然な二人のやりとりを見ていると「あ、こういう父親アリなんだ?」と父親像に対するパラダイムシフトが起こるだろう。
「女子高生の娘」と聞くと、やれ反抗期だスマホだSNSだバイトだ部活だ……と日々多忙ながら青春に明け暮れているイメージがわく。父親とは共通の話題が見つからなくなっていき、だんだんと一定の距離が空いていくのが一般的な家庭像かもしれない。
しかし、田中圭演じる森宮さんは違う。
「父親は受験前の娘に夜食を作ってやるものだろう」と持ち前の料理上手を発揮し、深夜にどでかいオムライスを作る。「娘が困ってたら力になってやるものだろう」と優子のピアノ伴奏練習に付き合う。
父親とはこうあるべき、といった持論を展開し、たびたび娘の優子を戸惑わせるも、二人で語り合っている姿に何の違和感もないのだ。血縁関係の有無を意識してしまうと、ちょっとしたすれ違いが大問題に発展しそうなものだが、森宮さんのナチュラルさがそれを上手くかわしている。
森宮さん自身、持論は自分にだけ適用するもので他人に押し付けるものではないと認識しているからこそ、優子を一人の人間として尊重できるのだろう。田中圭が元来持つナチュラルさ、物事に深く頓着しなさそうな様が生きている。
『総理の夫』と『そして、バトンは渡された』の二作、どんな田中圭が待っているか、ぜひ劇場に足を運んでほしい。
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