『孤狼の血 LEVEL2』レビュー:松坂桃李&鈴木亮平のカメレオン俳優としての魅力が最大限に活かされた快作!
真のカメレオン俳優
松坂桃李の真骨頂!
そもそも松坂桃李の俳優デビューは2009年「侍戦隊シンケンジャー」のシンケンレッド、即ち主人公でありながらレッド=熱血漢のイメージとは真逆のクールな鉄面皮を貫く“陰”のキャラクターで、従来のスーパー戦隊シリーズの中で大いに異彩を放っていましたが(それゆえのクライマックスの展開にも驚かされたものでした!)、以後もどこかしら影を背負ったか細さを内包するキャラクターを映画でもドラマでも得意としてきているように思えます。
(その意味では『ガッチャマン』は1号より2号のほうが彼に合っていたのではないかと、個人的に思うときもないではありません。一方で2016年『真田十勇士』の霧隠才蔵は見事に役にはまっていました)
『日本のいちばん長い日』(15)ではクーデターを起こそうとする青年将校の狂気よりも、純粋なる憂国の念が事件を引き起こしていく若者の悲劇こそが見事に描かれていました。
『不能犯』(18)での自ら手を汚すことのないマインドコントロール型犯罪者の悪魔のような風貌も、その細い体躯が逆に功を奏して印象的です。
ちょっと思い詰めている風情は、『あの頃。』(21)のアイドルオタク青年にぴたりとはまっていました。
一方では線の細さから醸し出される優しい風情が魅力に転じていたのが『ツナグ』(12)であったり『娼年』(18)であったり、こちらの路線も秀作が多いですね。
誤解のないように記しておきますと「線の細さ」というのはあくまでも雰囲気であり、彼自身は実に強靭な個性の若手俳優であると確信しています。
私自身は時代劇快作『居眠り磐音』(19)で彼に取材させていただいたことがありましたが、屈託のない笑顔が実に印象的な好青年で、一目会ったら誰もがファンになり、応援したくなるオーラを自然に放ち得ているのには驚くほどでした。
これ以降、人生の光も闇も、天使も悪魔も、等身大のキャラも背伸びしたキャラも演じられる、そんな真のカメレオン俳優が松坂桃李なのではないかと思えるようになった次第です。
『孤狼の血』での日岡は若く青い新米刑事でしたが、今回の日岡は青さを残しつつも背伸びしながらそれを隠して裏社会と対峙し続けようと腐心しています。
その背伸びっぷりが見る側に感情移入させ、モンスター・上林(そういえば鈴木亮平もテイストこそ異なりますが、やはりカメレオン俳優と称されていますね)との壮絶な闘いをスリリング&エキサイトさせてくれているのではないでしょうか。
余談ではありますが、『居眠り磐音』を見たとき、彼は市川雷蔵が演じた役柄が似合うのでは? と思えてなりませんでした。
今なら時代劇『薄桜記』も現代劇『ある殺し屋』でも、彼の主演でリメイクできるのではないか?
『居眠り磐音』での優しさも鋭さも哀しさもすべて等しく込められた見事な剣裁き、これからも個人的には拝見したいものと切に願っております。
(文:増當竜也)
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