森川葵&菅田将暉主演のお宝映画『チョコリエッタ』+風間志織監督が紡ぐ"せかいのおわり"の世界
風間監督作品から紡がれる
“せかいのおわり”の中で
ここで風間志織監督のキャリアをざっと振り返りますと、高校1年より8ミリ映画を撮り始め、『0×0(ゼロカケルコトノゼロ)』が1984年度のぴあフィルムフェスティバルに入選&スカラシップを受賞し、一躍注目されます。その後、彼女は16ミリ短編『イみてーしょん、インテりあ』(85)や、何と8ミリで120分の長篇『メロデ Melodies』(89)などを発表した後、1995年に『冬の河童』ではメジャー・シーンに躍り出るとともにロッテルダム国際映画祭TIGER AWARD(グランプリ)を受賞。
そんな風間監督が21世紀に入って手掛けた『火星のカノン』(01)『せかいのおわり』(04)も、今回の特集上映のラインナップに入っています。
2001年に完成、2002年に公開された『火星のカノン』は、年上の男性(小日向文世)と不倫の関係を続ける29歳の女性(久野真紀子)の切ない想いをリアルに描いたもの。
「火星」には「闘い」とか「セックス」といった意味があるようで、そういった隠喩も本作のタイトルには込められています。
2004年に完成、2005年に公開された『せかいのおわり』は、『火星のカノン』に助演していた中村麻美と渋川清彦を主演に、長年の友情が災いしてか、どこか煮え切らない恋愛感情が描かれていきます。
公開当時、世紀末が過ぎた2005年に『せかいのおわり』とは? などと思いつつ本作を拝見して、気づかされたことがありました。
それは21世紀に突入してまもなく9.11など世界が激動の様相を呈し始めていたこともありますが、そもそも風間作品の多くはこうした“せかいのおわり”を心の奥底に抱える人々の彷徨なのではないか? ということです。
しかし、それは安易な破滅願望などとは一線を画し、どのような絶望的な状況でもつつましく生き続ける人々への凱歌であるのは間違いなく、その伝では原発事故を意識しつつ、その忸怩たる想いを若きふたりの映画撮影の旅に託し得た「チョコリエッタ』も紛れもなく“せかいのおわり”の映画であったといえるでしょう。
こうした姿勢ゆえになかなか寡作な風間監督ではありますが、そろそろまた新作ニュースを聞きたいというのも本音ではあります。
彼女の映画は、やはり俳優の魅力、特に男優の色香がさりげなくも巧みに抽出されています。
小日向文世、渋川清彦、長塚圭史、田辺誠一、菅田将暉、そして高木ブーまで!
対して女優は久野真紀子にしても中村麻美にしてもどこかしらリアルな中の繊細さが醸し出されていますが、その伝では『チョコリエッタ』の森川葵は丸刈り姿も功を奏して、中性的な情緒までも見事に顕れていました。
風間作品は性を超越した愛憎の描出も隠れたモチーフになっているように思われますが、そういった視点で彼女の作品群を振り返るとまたいろいろな発見があることでしょう。
この機会にぜひ銀幕でキャストの魅力を大いに引き出す風間志織監督作品の魅力に触れつつ、新しい発見を見出してみてください!
(文:増當竜也)
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