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2021年09月24日

アニメ「平家物語」山田尚子と吉田玲子のアレンジは大胆かつ、原作のエッセンスに忠実

アニメ「平家物語」山田尚子と吉田玲子のアレンジは大胆かつ、原作のエッセンスに忠実


高畑勲監督の悲願だった「平家物語」の映像化



日本のアニメーション界を代表する巨匠、高畑勲監督が生前「平家物語」の映画化を考えていたのは有名な話です。この原作には、後書きとして高畑監督も文章を寄せています。

もし、高畑監督が「平家物語」を手掛けていたらどのような作品になったのか、実現しなかった今となってはわかりませんが、この後書きで、どんな点に惹かれていたのかが少しわかります。



高畑監督は、「あの壮絶な合戦の騎射や組討ちは、アニメーションでしか表現できない、と確信してきました。<中略> 生々しく裸でむき出しの、激しく生き、壮絶な死にざまをさらす人間たちを、個々に活写してみたい」と語っており、おそらく山田監督の今回の作品とは異なり、激しい描写が多くなるのかもしれません。

本作は、山田監督と吉田玲子さんが組んで作ってきたこれまでの作品同様、全体的に柔らかい印象を与える作品に仕上がっており、高畑監督が注目したポイントとはかなり異なるかもしれません。コミカルで微笑ましい描写や、徳子や祇王という白拍子との心温まる交流や、重盛とびわがしんしんと降る雪を見つめるシーンなどに時間を費やされているのを見ると、高畑監督とは注目しているポイントがかなり違っているようにも思えます。



主人公のびわは合戦で戦うわけではないでしょうし、やはり戦の迫力よりも、運命に翻弄される人々への慈しみ溢れたものになるのではないかと思います。そして、そうした要素はたしかに原作の重要な要素なのです。

「平家物語」の古川訳は、紙の本で908ページの大長編です。完読するのは大変なのですが、原作と突き合わせてアニメ版を見ると、なぜこういうアレンジをしたのか等の意図が明瞭に見えてきてより楽しめると思います。

(文:杉本穂高)

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(C)「平家物語」製作委員会

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