2021年11月27日

<新作レビュー>『ARIA The BENEDIZIONE』15年以上に及ぶ未来系ヒーリングストーリーを振り返る

<新作レビュー>『ARIA The BENEDIZIONE』15年以上に及ぶ未来系ヒーリングストーリーを振り返る



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」

【関連記事】『ARIA The CREPUSCOLO』レビュー:伝説的癒し系アニメの最新作が、ついに映画館にお目見え!

最初のTVアニメーション・シリーズからおよそ16年ものの歴史を誇る『ARIA』シリーズがいよいよ最終章!

結論から先に申しますと、この最終章、劇場用の中編映画として製作された前2作のクオリティが高かったことを認識した上で、今回はさらに優れているように思えました。

今ではアメリカなど海外でもソフト発売されて世界中に癒しを与え続けている“未来系ヒーリングストーリー”、さすがに16年、本放送などでご覧になられてない方も今はかなり多いことと思われます。

今回はシリーズを振り返りつつ、最新作『ARIA The BENEDIZIONE』にも触れてきたいと思います。

3つのTVシリーズから
さらに発展して……

『ARIA』シリーズの原作は、天野こずえが2001年から2008年にかけて発表した同名漫画で、2005年10月からTVアニメシリーズが始まりました。



舞台となるのは未来、水の惑星と呼ばれるアクア。

アクアは火星をテラフォーーミングして人が住めるようにした惑星で(そう、この作品、実はSFなのです)、その中には古き良き時代の地球のヴェネツィアを模した観光都市ネオ・ヴェネツィアがあります。

水路がめぐらされたネオ・ヴェネツィアにはゴンドラで観光客を案内するウンディーネ(観光水先案内人)という仕事があり、本シリーズは一人前のウンディーネをめざす少女たちの日常が描かれていきます。

シリーズ全体を通して劇的なドラマがさほど起きることはなく、悪人らしき者も登場することはなく、文字通りの“日常”が繊細で流麗な音楽に乗せてささやかに綴られていきます。

ネオ・ヴェネツィアには「ARIAカンパニー」「姫屋」「オレンジぷらねっと」と大きく3つのウンディーネの会社があり、主人公となるARIAカンパニーに所属する灯里(葉月絵理乃)は地球からやってきた少女。

彼女には姫屋の勝気な藍華(斎藤千和)、オレンジぷらねっとの天才肌アリス(広橋涼)といった仲間がいて、ともに一人前のプリマ・ウンディーネを目指すべく奮闘中。

彼女たちにはそれぞれアリシア(大原さやか)、晃(皆川純子)、アテナ(川上とも子)といった先輩ウンディーネがいて、彼女らにも先輩格のグランマ(松尾佳子)たちがいます。



TVアニメ・シリーズ第1期「ARIA The Animation」全13話では、灯里を中心に、その青春の躍動であったり揺らぎであったりがささやかに好ましく描かれました。

これが好評で2006年4月から半年間にかけて発表されたのが第2作「ARIA The NATURAL」全26話で、ここでは前作以上の出会いと別れををテーマに、第1作よりも切ないエピソードが披露。



また『ARIA』シリーズはウンディーネの会社の社長に猫をマスコット的に据えるという不思議なしきたりがあって(航海の安全を祈願するためとのこと)、ARIAカンパニーの社長はアリア社長(西村ちなみ)と呼ばれるぷにょぷにょ猫が就任(?)しています。

第2期ではアリア社長を通して、アクアに生息する猫たちの都市伝説的な謎がダーク・ファンタジーの装いで描かれることがままあり、世の猫好きたちならずともクールでスリリングな迷宮へと誘ってくれました。

この後、2007年9月にはOVA『ARIA The OVA~ARIETTA~』が発表。



これは灯里がARIAカンパニーに入る前のエピソードをメインに描いたもの(ちなみにこの作品から映像の画角が4:3から16:9に変わります)。

そして2008年1月から3月まで放映された第3期『ARIA The ORIGINATION』(全13話+1)をもって、灯里たちはプリマ、即ち一人前のウンディーネに昇格してひとまずシリーズは終結します。



ファイナルは憧れの先輩アリシアの現役引退の様子が麗しく描かれ、ファンを大いに感涙させてくれたものでした。

ちなみにこのシリーズ、日曜の深夜にテレビ東京系でオンエアされ、翌日は会社や学校といった憂鬱な気分の女性たち(もちろん男性も)を大いに癒し、気持ちよく眠りにつかせてくれるという効果をもたらしていたとも聞きます。

一方、地方では夕方にオンエアする局もあったりして、これは深夜枠のアニメとしてかなり異例でもあるとともに、本シリーズの本質も理解できるのではないでしょうか。

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

(C)2021 天野こずえ/マッグガーデン・ARIAカンパニー

RANKING

SPONSORD

PICK UP!