2021年12月02日

<新作レビュー>『フラ・フラダンス』、“フラ・ガールから描く「震災からの前向きな再生」

<新作レビュー>『フラ・フラダンス』、“フラ・ガールから描く「震災からの前向きな再生」



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

その年の映画賞を総なめした名作『フラガール』(06)でも有名な福島県いわき市の“東北のハワイ”ことスパリゾート、ハワイアンズのダンシング・チーム、通称“フラ・ガール”を仕事に選んだ新入社員たちの奮闘を描いた群像劇。

一見アニメーションならではのパターンとでもいうべきオーソドックスなドタバタ&確執&友情といった図式を丁寧に描いた印象がありますが、そのベースには東日本大震災の傷痕が大きく影響を及ぼしていることをことさら強調することなく、それでいて確実に訴え得ているあたり、今回オリジナル企画として本作に臨んだ水島精二総監督のこだわりを大いに感じさせてくれています。



5人の女性たちのキャラクターも明快に分けられ、また福原遥や美山加恋などそれぞれの声優陣も好印象。

作画としては、フラダンスのステージなど一連のシークエンスをモーションキャプチャーの技術を駆使して滑らかに表現したことが功を奏しており、3DCG独自の臭いみたいなものもかなり薄まり、その分映画に集中することができました。



特筆すべきは大島ミチルの音楽で、さすがは手練れたベテランの味わいで、豪華さと優雅さと繊細さを併せ持つ楽曲の数々が映画に大きく貢献するとともに品格までも高めてくれているようでした。

総じて奇をてらうことなく、正攻法で堂々と青春群像やフラダンスそのものの魅力、そしてこの10数年の東北の痛みと再生を描出し得ている作品です。

鑑賞後、良いものを見せてもらったという想いの中には、そうした前向きな心地よさも含まれているような気もしてなりませんでした。


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(文:増當竜也)

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