<解説>『劇場版 呪術廻戦 0』原作詳しくなくても楽しめる3つの理由




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来たる12月24日日没と同時に我々は百鬼夜行を行う...…。

週刊少年ジャンプにて連載の人気漫画「呪術廻戦」がアニメ化され早1年、映画館にやってきた。TOHOシネマズ新宿では、1日41回上映する気合の入れ方であり、まさしく今年最後の宴、百鬼夜行となっている。筆者も、初日の朝7時にTOHOシネマズ海老名で観賞してきた。早朝にもかかわらず老若男女多くの者で賑わいをみせている。

さて、アニメ未視聴、漫画未読の方はこう思うことでしょう。

「原作に触れてなくても楽しめるのだろうか?」

結論からすれば全く問題ありません。むしろ、本作を観てからアニメシリーズを追うこと強くオススメしたい。今回は、『劇場版 呪術廻戦 0』アニメ未視聴、原作未読の方こそ観てほしい理由を3つの観点から解説していく。

※本記事では『劇場版 呪術廻戦0』の一部あらすじに触れています。

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1:友情、努力、勝利の王道ストーリー!



『劇場版 呪術廻戦 0』はジャンプ王道の「友情、努力、勝利」の物語である。交通事故で悲しい死を遂げた祈本里香の呪霊が取り憑いている主人公・乙骨憂太(緒方恵美)。彼に危害を加えると、里香の呪いが強烈な危害を加えてしまうため、自身の死刑を望んでいる。そこへ、目隠しをした好青年が手を差し伸べる。彼の名は、五条悟(中村悠一)。最強の呪術師だ。彼に導かれるように乙骨憂太は東京都立呪術高等専門学校へと誘われる。彼の前には怖い女学生・禪院真希(小松未可子)、おにぎりの具で会話する呪言師・狗巻棘(内山昂輝)、そしてパンダ(関智一)が待ち構えている。



教室に入ると、いきなり3人に詰め寄られ困惑する憂太。どのように人間関係を構築すればよいのかわからぬまま、実戦に駆り出されたりする。その中で、彼は次第に自分の内なる欲求を言語化できるようになってくる。

「誰かと関わりたい。誰かに必要とされて、生きてていいって自信が欲しいんだ。」

本作で最も友情、努力、勝利の熱いドラマが垣間見えるのは狗巻棘とシャッター街の呪いを祓う場面だろう。一撃で、無数の呪いを祓う棘に羨望の眼差しを向ける憂太。一方で、一発の攻撃で声が枯れてしまいフラフラとなってしまう弱さも目撃する。そこへ思わぬアクシデントが発生。新たな「呪い」、それも格が違う「呪い」が現れるのだ。



棘は回復アイテムである「喉薬」を落としてしまう。絶体絶命だ。棘は仲間想いなため、一人で戦うことを宣言する。憂太は葛藤の末に、自ら進んで「一緒に頑張ろう。」と歩み寄る。人生に消極的だった彼が誰かと関わりたい感情に従い積極的になる瞬間がここにあるのだ。

果たして親密になった乙骨憂太と狗巻棘はどのような連携プレイをみせるのか。この先は劇場で確認してほしい。戦いの末、いままで理解不能であった「おにぎりの具による会話」の意味がわかった瞬間に涙するだろう。

アニメ第1期では、次から次へと個性的なキャラクターが登場しては消えを繰り返し、人物造形の深掘りが後回しになっていた。まるで高校入学して早々、膨大な他者にもまれながら人間関係を構築していくように、あえて掘り下げないキャラクター造形のクセが強い作品となっている。一方、本作では緻密に呪術師たちの過去や葛藤を掘り下げていくので、世界観に没入しやすいといえよう。

2:息苦しさを感じる者への処方箋!



本作には、膨大な呪力を持つ里香を強奪するために百鬼夜行を仕掛ける夏油傑一派が現れる。残忍な方法で、弱者から搾取する悪の集団だ。しかし、映画を観ていくと夏油傑の過去が明らかになり、彼が直面してきた残酷な現実が垣間見える。

一言では語れないような事情も見せつつ、『呪術廻戦』の本質は他者を傷つけてしまう能力(=呪術)ですら、使い方次第で人を助けられると五条悟の姿勢を通して謳っている。

乙骨憂太は過激な呪いのせいで死刑を望んでいた。その彼に手を差し伸べる。同様に、禪院真希や狗巻棘にも手を差し伸べ、五条悟はコンプレックスや悲しい過去に囚われた者を解放してきた。彼自身が辛い過去を乗り越え、最強になっただけにその力の制御の術を伝授しているのだ。

2020年に新型コロナウイルスが世界的に蔓延し、孤独に感じる者が増えてきた。世界は殺伐とし、息苦しさを感じる中で『劇場版 呪術廻戦 0』は心の処方箋となっているであろう。

3:多彩なアクションに魅了



先述した乙骨憂太と狗巻棘との連携プレイはもちろん、終盤の百鬼夜行になると、様々な呪術が織りなすアクション合戦が展開される。アニメ視聴済みでもそうでなくても、右から左から上から押し寄せてくる刺客を払っていく痛快さ。

一方で、倒れた者を介抱するバックステージの活躍にも光が当てられている。この乱戦の裏側で、乙骨憂太と夏油傑の一騎打ちが展開される。90分近くかけて、心身ともに成長した憂太が、目の前に映る複雑で壮絶な猛攻に対して、次々と新しい技を出しながら切り返していく。

大小入り乱れる呪術師と呪い、線と面の巧みな切り替えに、個人戦と乱戦を交差させた場面転換。スタイリッシュな混沌の中で、乙骨憂太が歪んだ呪い「愛」を完璧にコントロールしていく姿に興奮することだろう。

最後に



アニメ1期では禪院真希を「気が強い人」、狗巻棘を「おにぎりの具で語る謎の人」、パンダを「パンダ」といった印象のまま駆け抜けていくイメージがあった。そのため本作を観て彼女/彼らに親近感をもった。そして『劇場版 呪術廻戦 0』からアニメや原作に入ったら世界観に没入しやすいのでは、とも感じた。

もし、「原作に触れてなくても楽しめるのだろうか?」と不安に思っている方は、全く問題ありませんので、2021年の映画納めに観てみてはいかがでしょうか。

(文:CHE BUNBUN )

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© 2021「劇場版 呪術廻戦 0」製作委員会 ©芥見下々/集英社

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