成田凌の魅力:「クズ役を演じる天才」と呼ばれる理由

実は純粋なハートの持ち主を演じるのも得意? 

ここまで成田凌の魅力溢れるクズ役について語ってきたが、実は彼はクズとは真逆の純粋さ溢れるキャラクターを演じている作品でも評判を集めている。筆者が思うに、成田凌は人間の微妙な感情の移り変わりをリアリティ溢れる表現に落とし込むのが上手なのだ。

成田凌の演技を観ていると、例えば「泣いているような笑っているような表情」や「怒る5秒前の心情」をとても的確に形にしていると思った。人間は多面的な生き物だ。クズな側面だけを持つ人間はいない。それはフィクションでも同じことが言える。だからこそ、成田凌の各登場人物をベースとした人柄が滲み出るようなハイレベルな演技ゆえに「なぜか許してしまいたくなる」「ハマってしまう」現象が起きるのではないか。

5.窮鼠はチーズの夢を見る(2019)


(C))水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会

ジャニーズの大倉とのツーショットが印象的な「窮鼠はチーズの夢を見る」では、セクシャリティを超え、純粋な愛をひたむきに貫き続ける今ヶ瀬を演じた。今ヶ瀬と恭一の共同生活の中に垣間見える、今ヶ瀬の柔らかな笑顔は恋をすることの楽しさに満ち溢れていた。そして今ヶ瀬のマイペースでありながらも一歩も引かない純真な恭一への想いからは、誰よりも想い人の近くにいるのに叶うことのない恋の切なさがひしひしと伝わってくる。

この物語が私たちの胸を締め付けるのは、作品に散りばめられた詩的な言葉の数々だけでなく、成田凌の何かを諦めたような笑顔や恭一への視線などのディテールまでこだわった演技あってのことだろう。ボーイズラブ作品にあまり普段触れてきていない筆者から見ても、この美しい今ヶ瀬と恭一の物語には心惹かれるものがあった。

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6.まともじゃないのは君も一緒(2021)


(C)2020「まともじゃないのは君も一緒」製作委員会

成田凌演じる大野は何が「普通」なのかわからない。勉強以外に興味を示さない予備校の数学教師だ。何より笑い方や話し方が独特で、タイトル通り、いかにも「まともじゃない」雰囲気がひしひしと出ている。ここまで述べてきたような圧倒的恋愛経験値の高そうな成田凌が演じてきた登場人物から一変して、この作品の大野の恋愛経験値はゼロに近い。しかし、大野はありのままを受け入れてくれる1人の女性と出会い、少しずつ変わっていく。

成田凌の演じる役はクズでも純粋でも、とにかく周囲から好かれる。否、好かれるというよりかは相手の心の柔らかいところに入っていくという表現が正しいのかもしれない。そしてその過程で心を射止められてしまう対象には、観ている私たちも含まれているのだ。知らぬうちに成田凌を受け入れ、彼に染まっていく自分がいることにハッと気がつく。

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成田凌が生み出すのは「リアリティ溢れる愛の形」

ここまでに挙げた映画は成田凌の軌跡を辿る上で、特に重要な作品であると同時に、これらは成田凌の魅力を掴む手がかりのほんの一部だ。成田凌が演じるキャラクターたちは私たちの過去の記憶を物語に沿って呼び起こし、妙な既視感すら覚えさせる。数々の映画やドラマの中で魅力溢れるキャラクターを演じ、そのどれもが正直「王道愛されキャラ」とは言い切れない要素が強い。


しかし登場人物の欠けている人間らしい部分と、成田凌が持つ憂いを帯びた独特の色気がマッチしたとき、目の離せない存在として物語の中で彼の魅力は一際光る。ビターテイストなクズさも愛くるしい純真さも全部ひっくるめた人間のあらゆる側面を、私たちのパーソナルな部分に訴えかけてくる表現力の幅こそが成田凌しか持ち得ない最大の武器だ。それこそが、彼が誰からも愛されるクズ役として活躍する所以なのだろう。


(文:すなくじら)

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