「DCU」第3話レビュー:ある人物がまさかの退場……感動展開に違和感も(※ストーリーネタバレあり)
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阿部寛主演のTBS系日曜劇場「DCU」が2022年1月16日放映スタートした。
TBS×ハリウッド大手プロダクションの共同制作となる本作は、水中の捜査に特化したスペシャリスト集団「DCU(Deep Crime Unit)」の活躍を描く“ウォーターミステリー”。真実を突き詰めるまで諦めないDCUの隊長・新名正義を阿部寛、新名のバディとなる隊員ダイバー・瀬能を横浜流星が演じる。
本記事では、第3話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。
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「DCU」第3話レビュー
「DCU」第2話で殺された漁師・島田のスマホを盗み、逃亡した“ロドリゴ・サンチェス”は全くの別人だった。彼の本当の名はジョアン・ロペス(フェルナンデス直行)。技能実習生として来日する予定だったサンチェスから身元を買い、日本に不法入国したブラジル人だ。
この一件でロシア高官の来日が見送られることになり、ミスを犯した隆子(中村アン)は重い責任を感じるあまり暴走。予想を遥かに超える最悪の結末を引き起こしてしまう。
ロペスが“打倒アメリカ”を目標に掲げる国際テロ組織「ブラックバタフライ」のメンバーであることが発覚し、県警は国道を封鎖して街中を捜索。撤退の危機に追い込まれたDCUも港周辺の聞き込み調査に乗り出した。隆子は大友(勇輝)と共に以前ロペスが溺れて入院した際、見舞いに訪れていたマリア・シルバ(エレナ アレジ 後藤)に接触。しかし、解決を急ぐあまりシルバに怪我をさせかねない行動を取ってしまう。
隊長の新名(阿部寛)はそんな隆子を見兼ね、彼女を一時除隊させることにした。しかし、ミスを取り戻すために新名の言葉を無視し、単独行動を続ける隆子を瀬能(横浜流星)をはじめとしたDCUのメンバーたちが支える。
ここで前回から気になるのが、隆子と瀬能の関係。二人は15年前に起きた海難事故で肉親を亡くしたという共通点もあり、他のメンバーよりも絆の強さを感じさせる。それだけではなく瀬能が隆子を見る目がとても優しく、今回も新名に隆子が捜査に参加できるように頭を下げたりと、特別な感情を抱いていることは明らかだ。
近年の日曜劇場を振り返ってみると、「日本沈没ー希望のひとー」の天海(小栗旬)と椎名(杏)、「TOKYO MER~走る緊急救命室~」の音羽(賀来賢人)と涼香(佐藤栞里)の関係性が注目されていた。仕事に対する相手の姿勢に惹かれていき、関係が良い方向に進展していくと思いきや、どちらかが命の危険に晒されるという展開がお約束に。前者は最終的に上手くいったが、後者は涼香が死亡という最悪の形で終わっている。今回は果たしてどうなるか……と思うまもなく、第3話で早々に決着がついてしまった。
事の結末はこうだ。
ロペスが盗んだ島田のスマホが見つかり、奥能登の海上保安署を指す座標値が書かれたメールが残されていた。さらにロペスは島田を漁師に育てた柳田という男に接触し、「海上保安署を爆発する」と伝言。すぐさま海保の建物に機動隊が配置される。しかし、ロペスの目的は海保爆発ではなく国外逃亡だったことが、隆子の調べでわかる。同じ故郷で育った彼に協力していたシルバに真実を吐かせたのだ。
ロペスはすでに柳田の船を使い、仲間と落ち合う座標地点に向かっている。そこは海保も立ち入れない日本領海の向こう側。早く追いかけなければ間に合わないという状況の中で、現状一番近くにいるのは隆子だった。だがミスを重ね続けている隆子を向かわせるわけにはいかず、新名は待機を命令する。
正直、新名の隊長としての判断は正しい。「邪魔者は排除するだけだ」と口では言っているが、それはすべて隆子を含むDCUのメンバーの未来を守るためだ。お願いだから新名が伝えた兄・成合(吉川晃司)の「冷静になれ」という言葉を思い出して……と誰もが思っただろう。それなのに隆子は命令に背き、一人でロペスを追いかける。さらに結局間に合わず、ロペスの船は排他的経済水域を過ぎてしまうのだが、隆子もそのまま国境を超えてしまうのだ。
この時点で嫌な予感がしたが、隆子は乗り込んだロペスの船でテロ組織のメンバーと思われる何者かに刺されて死亡。ロペスも殺され、被疑者死亡で事件は解決となる。DCUメンバーの一人が早々に退場という展開に驚愕。
さらに隆子が瀬能のスマホにDCUのみんなに迷惑をかけないよう、退職の旨と感謝の言葉を伝える留守電を残していた…と涙を誘うようなシチュエーションも待ち構えていたが、正直ついていけない視聴者も多かったのではないだろうか。
紅一点の隆子にも活躍して欲しかったという残念な思いはもちろんあるが、新名の命令に背いただけではなくミスを重ねてDCU全体の信用を落としているだけに、悲しむというよりも「なぜ?」と思う気持ちの方が大きい。「DCUが一つになって、今まで捕まえることができなかった凶悪犯を捕まえて手錠をかける」。それが夢だったのであれば尚更、今回はDCUのメンバーとして隊長の意見を聞くべきだった。
隆子の死をきっかけにバラバラだったDCUが一致団結していくという筋書きなのかもしれないが、他の人たちが踏み入ることのできない「危険極まりない場所で働く、鍛え抜かれた人々」を描いている本作においては、もっとその重要性や危機管理の大切さを説いて欲しいとも思う。とにもかくにも物語はまだ始まったばかりなので、今後の展開に期待したい。
(文:苫とり子)
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