<宮沢りえの無双感>デビューからずっと全盛期の魅力
「鎌倉殿の13人」(C)NHK
NHKにて好評放映中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、一大考察ブームを生んだドラマ「真犯人フラグ」などで相変わらず一線級の活躍を見せる宮沢りえ。
最近では、自身が初代のキャンペーンガールを務めた“三井のリハウス”のCMにも娘にリハウスを紹介するという役どころで約35年ぶり出演するという、宮沢りえ以外にはできない“無双ぶり”を発揮しています。
俳優という職種は、当たり役の有無や、公私にわたる俳優業以外の出来事などで波がある職業ではありますが、宮沢りえの前ではもはや波なんてないように感じます。
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デビュー早々大ブレイク
「鎌倉殿の13人」(C)NHK
宮沢りえは、1987年、11歳の時に三井のリハウスのキャンペーンガールの初代“リアウスガール”を務めて一気にトップアイドルとなります。翌年1988年には早くも映画『ぼくらの7日間戦争』に主演してスクリーンデビューを飾ります。
1989年には「春日局」でNHK大河ドラマに初出演。小室哲哉プロデュースでアーティストデビューも飾っています。
NHK大河で数えると、今年の「鎌倉殿の13人」まで6作品の大河ドラマに出演しているという頼もしさです。
ちなみに「鎌倉殿の13人」で年の離れた夫婦役を演じる北条時政役の坂東 彌十郎は映像の仕事や女優と絡むことがあまりなく不安を感じていることを宮沢りえに話したところ、「どこからでもかかってらっしゃい!」と宮沢りえが返してきたそうで、本当に頼もしさを感じます。
宮沢りえの、80年代から90年代のお話に戻すと、その出演作品はいわゆる大映ドラマからトレンディドラマ、名作「北の国から」までまで幅広い役どころで出演し、若手の一人から大人の俳優への階段を進んでいきます。
大きな転機
宮沢りえのキャリアのなかでも、特に映画俳優のフィルモグラフィを見ていくと2002年の『たそがれ清兵衛』と2004年の『父と暮せば』が大きな転機になったと言えるでしょう。『たそがれ清兵衛』
2002年の『たそがれ清兵衛』は『男はつらいよ』シリーズの山田洋次監督が、藤沢周平の短編小説を原作に映画化し、アカデミー外国語映画賞にノミネートされるなど国内外で高く評価された時代劇です。
舞台は、幕末の庄内地方の海坂藩。
下級武士である井口清兵衛は家族の世話や借金返済の内職のために勤めを終えると同僚の誘いを断ってすぐに帰宅してしまうため、“たそがれ清兵衛”と呼ばれていました。
ある日、清兵衛は幼なじみの朋江を救ったことから剣の腕が立つと噂になり、上意討ちの討手に選ばれてしまって……という物語です。
清兵衛を真田広之、朋江を宮沢りえが演じたほか、世界的な舞踏家として知られていた田中泯が映画初出演を果たした傑作時代劇で、この後の藤沢周平作品の映画化ブームを作った作品でした。
宮沢りえはこの演技で日本アカデミー賞・最優秀主演女優賞を受賞するなど大きなステップアップをすることになり、アイドル的な立ち位置から完全に俳優としての立ち位置を確立します。
■『たそがれ清兵衛』配信サービス一覧
| 2002年 | 日本 | 129分 | (C)2002 松竹/日本テレビ/住友商事/博報堂DYメディアパートナーズ/日販/松竹ブロードキャスティング | 監督:山田洋次 | 真田広之/宮沢りえ/田中泯/丹波哲郎/岸惠子/小林稔侍/大杉漣/吹越満/伊藤未希/橋口恵莉奈 |
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『父と暮せば』
続く、2004年の『父と暮せば』は原爆投下から3年後の広島を舞台に、生き残った負い目を抱える娘と、彼女の前に幽霊となって現れた父の交流を描いた人間ドラマです。
井上ひさしの同名戯曲を基に『美しい夏キリシマ』の黒木和雄監督がメガホンをとりました。
昭和23年、広島。
3年前の原爆で父・竹造を亡くした美津江は、自分だけが生き残ったことに負い目を感じながら生きていました。
勤務先の図書館で知り合った青年・木下と惹かれ合いながらも、幸せになることへの罪悪感から一歩を踏み出すことができません。そんな美津江の前に幽霊となって姿を現した父親の竹造は、ふたりの恋を成就させるため、どうにか娘の心を開かせようとします…。
宮沢りえが美津江を演じ、原田芳雄が竹造を演じました。
本作の演技でも宮沢りえはブルーリボン賞・主演女優賞やキネマ旬報ベスト・テン主演女優賞を受賞しています。
特に『父と暮せば』はそれまでの宮沢りえの出演作品に比べると小規模のインディペンデント的な立ち位置の作品でしたが、作品の質を重視しての選択と思われます。
■『父と暮せば』配信サービス一覧
| 2004年 | 日本 | 100分 | (C)2004「父と暮せば」パートナーズ | 監督:黒木和雄 | 宮沢りえ/原田芳雄 |
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(C)2021「決戦は日曜日」製作委員会
これ以降、良質なミニシアター系作品にも出演するようになり、またメジャー大作では脇に回ることも厭わず、結果として映画俳優としての幅を拡げていきます。
『トニー滝谷』や『湯を沸かすほどの熱い愛』『決戦は日曜日』などはそういった思考(志向)から生まれた作品と言えるでしょう。
もちろんメジャー系列でも『阿修羅城の瞳』『オリヲン座からの招待状』『紙と月』『人間失格 太宰治と3人の女たち』などにメインヒロインを務めていて健在をアピールしています。
配信ドラマ・Netflixオリジナル「全裸監督」シーズン2の出演や2019年のアニメーション映画『ぼくらの7日間戦争』で声優として特別出演することで、さらに幅広く存在感を示しています。
舞台にもコンスタントにこなしていて、野田秀樹、長塚圭史、蜷川幸雄、いのうえひでのり、唐十郎といった大物演出家の作品にもたびたび出演しています。
2013年の『おのれナポレオン』の緊急出演は大きな話題になりましたね。
その時々が全盛期の「宮沢りえ」
「鎌倉殿の13人」(C)NHK
2021年から2022年で見ても、年跨ぎで放映され、強烈な結末を迎えたばかりのドラマ「真犯人フラグ」がありました。
2021年の12月には「白い巨塔」「華麗なる一族」などで知られる山崎豊子の原作をドラマ化した「女系家族」に主演。
なんとこの時の裏番組に「真犯人フラグ」があったのには驚きました。
「真犯人フラグ」が終了したので、現在は「鎌倉殿の13人」に全力集中といったところです。
『人間失格 太宰治と3人の女たち』では夫婦役を務めた小栗旬と、「鎌倉殿の13人」では義理の母と息子という役柄も長いキャリアが生んだ面白い現象です。
史実通りなら、宮沢りえ演じる「りく」の見どころはまだまだありそうですが、果たして三谷幸喜によってどのように描かれるのかが楽しみです。
このように宮沢りえの経歴・出演作品をデビューから現在まで(駆け足ではありますが)辿ってみると、正直“停滞期”が全くないと言ってもいいのではないかと思います。
その時々が常に最高潮ということを維持し続けることは、その陰には並大抵の努力があるということでしょう。
一方で今の宮沢りえを見ていると、そんな努力をしている姿を感じさせないような余裕と頼もしさで、これからがますます楽しみです。
(文:村松健太郎)
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