「やんごとなき一族」第1話:義姉・松本若菜の顔芸にMVP!主人公夫婦が素晴らしすぎる
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土屋太鳳主演・松下洸平共演の木10ドラマ「やんごとなき一族」が2022年4月にスタート。
原作は講談社『Kiss』で連載中の、こやまゆかりさん作の同名コミック。庶民の家庭から上流社会の一族に嫁ぐことになった主人公が、理不尽な一族のしきたりや親族内の複雑な人間関係に翻弄(ほんろう)されながらも、夫とともに真正面から立ち向かい奮闘する“アフター・シンデレラ・ストーリー”をお届けします。
本記事では、第1話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。
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「やんごとなき一族」第1話レビュー
これは面白すぎる!面白そうと思っていたけど、期待していた何倍も面白かった!
佐都(土屋太鳳)は、恋人の健太(松下洸平)にプロポーズされる。冒頭、健太の服装はラフでパッと見いいところのお坊ちゃま感はない。結婚すると決まって実はとんでもない一族だったとわかるストーリーだ。
一方の佐都は、下町の大衆食堂を母と二人で切り盛りしており、父が亡くなったため大学も中退している。貧乏な土屋太鳳がお金持ちと結婚する、おとぎ話のような語り口で始まるシンデレラストーリーというと、映画『哀愁しんでれら』(2021)を連想してしまうが、このドラマの結婚相手・健太は本当にいい人だ。
やんごとなき一族で育ちながらピュアでまっすぐ、飾らない人柄。他の人が意見できない父親にもはっきり意見できる。一族が苦手で距離を置いていたが、結婚の話をきっかけに父に呼ばれ、実家に挨拶しに行くことに。
運転手付きの車で深山家に向かう二人。途中の大きな橋から先は深山家の土地で、西洋の映画やドラマに出てきそうな、実家は門から建物までがめちゃくちゃ遠い大豪邸だった。
門が開き、車から降りるとそこにいた健太の母・久美(木村多江)に突き飛ばされる。地面に倒れ、佐都が母に持たされた大量のもつ煮が地面に散らばり、門を閉められてしまった。何てことすんねん。
父・圭一(石橋凌)はインターホン越しに「わきまえているのなら、二度とこの家に足を踏み入れようなんて恥ずかしい真似はできないはずだ」と言い捨てる。怒った健太は父の元に走って抗議しに行く。
そこに集まっていたのは家族一同。健太は次男で、長男の明人(尾上松也)は老舗和菓子店の娘の美保子(松本若菜)と、三男の大介(渡邊圭祐)はホテルチェーンの娘のリツコ(松本妃代)とそれぞれ結婚している。二人とも、家のために結婚したようだ。さらに、末っ子の有沙(馬場ふみか)もいる。全体的に感じは悪い。
後日圭一に呼び出された佐都は数千万の札束を見せられ、健太と別れるように言われる。「お母さんを喜ばせてあげなさい」というセリフも腹立たしい。それに対する佐都の返しがかっこいい。
「そんなお金で母は喜びません。健太さんとは別れますが、それは彼を愛しているからです」「家に誇りを持っておられるように、私も父の遺した店に誇りを持っています」と毅然と言って去った。
別れを告げられた健太はすぐに佐都の店に行く。扉越しにわざと突き放す佐都だが、「俺の顔を見て言える?」と迫り、バックハグして「一緒になったら不幸になるんじゃない。一緒にならなかったら不幸になる」と伝える。かっこいい男だ。
一転、圭一からの許しが出、ふたたび深山家に向かった二人。佐都を「俺が心底惚れて絶対に離したくなかった人です」と家族に紹介する健太、最高かよ……!
しかし一族の感じが悪いこと。佐都に対してひどいだけでなく、家族同士もいろいろとあるようだ。美保子とリツコと有沙は3人で取っ組み合いをはじめ、「ババア」「小娘」とののしり合い、物を投げ、ドレスの袖を破り合う。凄まじすぎて声を出して笑ってしまった。ここまでくると面白い。
その後そんな家族が情けなくて佐都の前で泣いちゃう健太、ほんとにピュアだし、そんな健太に「2人で頑張ってみない?あの家に入ってみよう。健太が健太でいる限り私は支え続ける。私、健太の背負った運命、一緒に背負うからさ」と言える佐都、かっこいい女だ。
佐都と健太、二人の人柄が本当に素晴らしくて、応援したくなる。
どぎつい一族の中でも特に強烈なのが、松本若菜が演じる義姉・美保子だ。一見言葉はおしとやかだが、実は腹の中は真っ黒。元々いい家の出ではない佐都を馬鹿にしていたうえに、自分が次になると思っていた”次期女主人”に佐都がなるとわかってエスカレートする。
明人が圭一の跡を継ぐと誰もが思っていたが、圭一は経営に向かない性格の明人ではなく、自分にはっきりとものを言える健太に跡を継がせたいと考えていたのだ。
さらに、深山家では資産を減らさないため、財産はすべて跡継ぎにのみ渡り、兄弟には渡らないのだ。佐都との結婚を許したのは、健太を自分の元に取り戻すためだったのだ。「おかえり、もう逃げられんぞ」を笑う圭一、怖い。
美保子はイヤミな言葉(言い方がすごい)だけでなく、すさまじい顔芸で佐都を攻撃。他の人がいないところではものすごい早口で
「この雨後のたけのこが! ずうずうしく 人の家にのこのこのこのこニョキニョキニョキニョキタケノコタケノコ ニョッキッキと生えてきやがって!」
とまくし立てる。もはや早口言葉でしかない、よく言えるな。ドラマ「ファーストクラス」のレミ絵(菜々緒)以来の早口を楽しみにできそうだ。
しかしやることがかなりひどい。お屋敷にきた客の息子が池に落ちたのを佐都が泳いで助け、祖母の八寿子(倍賞美津子)に「面白い子がきたもんだわ」と言わせたのがよほど気に入らなかったのか、小屋にあった瓶の中の水を頭からかけ、サウナのような部屋に閉じ込める。
床に落とした佐都のスマホに母・良恵(石野真子)が倒れたと連絡がきて代わりに出、ドアの小窓越しに顔芸で伝えただけで(ほとんど聞こえない)そのままスマホを持ち去ってしまう。小さい頃から積み上げてきたものを台無しにされたと怒っているようだが、佐都が悪いわけではないし、非常事態なのにひどい。
この顔芸がすごすぎて、もはや松本若菜の虜である。次回以降も彼女の顔芸と早口を楽しみにしていきたい。
でも佐都も王子様を待ってるお姫様ではない。道具を自分で探し出し、自分でドアをぶち破って出て「庶民なめんなよ」とつぶやく。佐都のこういうところ、すごく好きだ。
過激な嫁いびりは本作の見どころのひとつだが、ただいじめられるだけの悲惨で胸糞悪い話という感じにはならず、立ち向かう佐都と健太が爽快だ。
跡継ぎから外されたことに「お父さんが言うなら」「健太が継いでくれるなら助かるよ」と言い、「兄貴は本当にいいの?」と気にする健太にもいいよという明人だが、誰も見ていないときの表情がすごい。後々何かありそうだ。
母・久美ははじめの突き飛ばしから一転、家族の中では優しく「わたくしはあなたたちを応援していますから」と言ってくれるが、ママチャリと聞いて「それはどこの車?」と無邪気に聞いてくるあたり、やはり住む世界の違いを感じる。そして演じるのは木村多江、どこかでブチキレ演技も見たいと思ってしまう。
ちなみにナレーションは「鬼滅の刃」炭治郎などの声で知られる声優・花江夏樹。いい声を聞くのも楽しみだ。また佐都の実家の常連さんがダチョウ俱楽部だったりシュウペイが出ていたり、ちょいちょい出てくる芸人たちも気になる。
次回はどんな波乱が起こるのか、木曜日が待ち遠しくて仕方ない。
(文:ぐみ)
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