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【GW】大人に観てほしい「子どもの気持ちがわかるかもしれない映画」5選
【GW】大人に観てほしい「子どもの気持ちがわかるかもしれない映画」5選
ゴールデンウィークが始まった。その名称は、もともとは映画会社の宣伝用語である(という説が有力)なのは有名な話。今年はコロナ禍になって初めて緊急事態宣言が出されていないゴールデンウィークとなっているため、連休を利用して大作映画を観ようと考えている方もいるだろう。
ここでは、ゴールデンウィークの中日、5月5日に「こどもの日」があることを記念して、大人に観てほしい「子どもの気持ちがわかるかもしれない映画」5作品を紹介しよう。
『E.T.』や『グーニーズ』や『ホーム・アローン』など子どもと一緒に楽しめる映画ももちろん良いし、『スタンド・バイ・ミー』や『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』などのジュブナイル冒険ものももちろん良いが、ここで紹介するのは子どもの心情が繊細に描かれた静かなドラマ作品だ。
きっと、かつて子どもだった、酸いも甘いも噛み分けた大人が観てこそ、心に沁みるものがあるはずだ。
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1:『二十四の瞳』(1954)
『二十四の瞳』は同名小説の映画化作品であり、木下惠介監督の代表作であるが、名前だけは知っていても観たことがないという方は多いのではないか。
新任の女性教師と12人の子どもたちの触れ合いを描くほのぼのとしたドラマ……というのは序盤も序盤だけ。その後はごく普通の人たちが、同調圧力や画一的な価値観がはびこる戦争の時代の波に飲み込まれ、それでも懸命に生きていく人々の姿を追う反戦映画になっていくため、今では2016年のアニメ映画『この世界の片隅に』を連想する方も多いのではないか。
最大の特徴は、1928年(昭和3年)から1946年(昭和21年)までの18年間を描いていることだろう。
物語の始まりでは小学1年生だった子どもたちは、5年後に小学6年生になるが、それでも彼らはまだまだ子ども。そんな彼らに、貧困や戦争の影響は容赦無く忍び寄るし、戦争が起きればさらなる悲劇が起きる。
そうであっても、ただただ子どもたちのことを想う先生の姿と、やがて大人になる(なれない)子どもたちの人生を追う物語となっている。繰り返し流れる「仰げば尊し」のメロディも、ついつい涙腺を刺激されてしまう。
いつの時代も変わらない、人が人を想う気持ちを綴った名作だ。
■『二十四の瞳』配信サービス一覧
| 1954年 | 日本 | 156分 | (C)1954/2007 松竹株式会社 | 監督:木下恵介 | 高峰秀子/小林トシ子/月丘夢路/笠智衆/田村高廣 |
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2:『メイジーの瞳』(2012)
『メイジーの瞳』は離婚したロック歌手の母と、美術商の父、それぞれが親権を持っているため、お互いの家を行ったり来たりしている6歳の少女を主人公した作品だ。両親はメイジーを愛してはいるものの、自分の権利ばかりを主張し、自分の仕事との折り合いがつかないときには他人に押し付けるなど、独善的な面が目立つ。そうした大人の「大人げなさ」だけで反面教師的に学べることは多いだろう。
『メイジーの瞳』(C)2013 MAISEI KNEW, LLC. All Rights Reserved.
そのメイジーの友達になったのは、両親それぞれが新たに出会ったパートナーの2人だった。彼らは心優しい常識人であり、実の両親と同じかそれ以上にメイジーに無償の愛を注いでいくこともあって、複雑な関係性はやがて収束していく。
巧みな演技と演出によって、関係性や心情が伝わってくる、ドラマの面白さを堪能できるだろう。言葉に頼らずとも、複雑かつ鋭く物事を考えているメイジーの姿から、現実にフィーバックできることも、また少なくはないはずだ。
3:『友だちのうちはどこ?』(1987)
『友だちのうちはどこ?』のあらすじはシンプルで、「間違えて持ち帰ってしまったノートを返すために友だちの家を探し歩く」だけ。だが、そうしないと、友だちが退学になってしまうかもしれないという、深刻な事情も提示されている。
主人公の8歳の少年にとってもちろん一大事なのだが、母親は聞く耳を持たずに「宿題をしろ」と言うばかりであり、道中で出会う大人たちも彼の気持ちを蔑ろにするばかりか、邪魔をしてばかりだ。
『友だちのうちはどこ?』(C)1987 KANOON
その様には良い意味でイライラするが、だからこそ大人が一方的な価値観を子どもに押し付けてはいないか、その気持ちに気づいてはいないのではないかと、現実と重ね合わせて省みることができる。
何より、劇中で「責任」を持って、たった1人で友だちの家を目指し奮闘する子どもの姿から、大人が子どもを「みくびってはいないか」ということも考えられるだろう。
4:『ぼくの名前はズッキーニ』(2016)
『ぼくの名前はズッキーニ』は人形を用いたストップアニメーション映画。児童虐待など残酷な体験を経て、孤児院に暮らす子どもたちの物語であり、思春期に差し掛かる前の恋心や、周囲の大人たちの関係も丁寧に綴られている。
脚本を務めたセリーヌ・シアマは後に監督する2019年の実写映画『燃ゆる女の肖像』でも類まれな高評価を得ており、合わせて観れば限られたコミュニティでの関係性を描く、尊い作家性を感じ取れるだろう。
『ぼくの名前はズッキーニ』(C)RITA PRODUCTIONS / BLUE SPIRIT PRODUCTIONS / GEBEKA FILMS / KNM / RTS SSR / FRANCE 3 CINEMA / RHONES-ALPES CINEMA / HELIUM FILMS / 2016
9歳の主人公は孤児院に住む前に親からネグレクト(育児放棄)をされて、正常な親からの愛情を受けていなかったのに、親につけられた悪口であるはずのあだ名「ズッキーニ」を大切にしている、ということも胸を締め付けられる。
だが物語を追えば、大人が客観的に見ると「不幸」とも思えることは、子どもたちにとっては「必ずしもそうではない」こともわかるだろう。
子どもとの接し方はもちろん、「子どもはどのような考え方をしているか」についても、意義深い学びが得られる1本だ。
関連記事:『ぼくの名前はズッキーニ』は“子どもの考え方”を気づかせてくれる傑作アニメ!その意義と尊さを語る!
5:『カモン カモン』(2021)
『カモン カモン』は、 2022年4月22日より劇場で公開中の映画。ニューヨークでひとり暮らしをしていたラジオジャーナリストの中年男性が、妹から頼まれて9歳の甥っ子との共同生活を送るという内容だ。
主人公2人のやり取りはかわいらしくてホッコリするのだが、やがてシビアな現実が彼らを襲う。甥っ子は子どもらしい勝手な振る舞いもして困らせることもあるが、その「理由」を鑑みれば、彼の心情が切なく苦しいものして感じられるだろう。
『カモン カモン』(C)2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.
大きな特徴は、合間に利発な子どもたちへのインタビュー映像が挟まることだ。実は、それらは実際にインタビュー取材した、アメリカ各地の9~14歳の子どもたちの「生の声」。劇中の物語とリンクする形で、「子どもたちは未来のことを(もしかすると大人以上に)深く鋭く考えている」ことを思い知らされるだろう。
『カモン カモン』(C)2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.
『ジョーカー』とは異なるホアキン・フェニックスの存在感が癒し効果抜群であるし、ここぞという時の演技力が光る。モノクロームの映像も美しく、映画館で観てこそ「物語に浸る」感動が得られるだろう。
「大人と子どももどっちもどっち」「大丈夫じゃなくても、大丈夫」は作品の主題にぴったりの名コピーであるし、タイトルの「カモン カモン」の意味も実際に観れば「そうだったのか!」と心から感嘆できた。疲れた時に観ると前向きになれる映画として、心の底からおすすめしたい。
『カモン カモン』(C)2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.
<『カモン カモン』公式サイト>
この他、ディズニープラスで配信中の『私ときどきレッサーパンダ』も家族で楽しめるアニメ映画ながら「オタク」な子どもの気持ちに真摯に寄り添った内容であったし、AppleTV+で配信中かつ5月10日まで「ケルト三部作」のブルーレイ・ボックスセットが先行予約受付中の『ウルフウォーカー』も子どもとの接し方や大人としての振る舞い方を学べる傑作だ。
こちらも、合わせてチェックしてほしい。
(文:ヒナタカ)
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