『トップガン マーヴェリック』考察:“不可能”を“可能”にする男が出したアンサーとは?
『トップガン マーヴェリック』考察:“不可能”を“可能”にする男が出したアンサーとは?
無茶とやんちゃで国を救った英雄マーヴェリック(トム・クルーズ)が、教官としてギラつく訓練生を導く。これだけで泣けてくる話である。もちろん、前作を観ていなくても心配無用。ハイスピードで急旋回、急上昇、急降下する空中戦の没入感や、教官と訓練生がぶつかり合う熱いドラマ。そして、トム・クルーズの明るくも数々の修羅場を乗り越えてきたであろう面構えが、ハラハラドキドキの火を絶やすことなく131分華麗に舞い続けるのだ。
1986年の『トップガン』を観た上で観賞すると、あまりにパワーアップしたドラマとアクションにハンカチ必携、号泣必至である。そこで今回は、前作を踏まえた考察をしていく。
※『トップガン』『トップガン マーヴェリック』の核心に触れるネタバレ記事となっているため、観賞後にお読みください。
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ノスタルジーをバネに更なる高みへ急上昇
■あのオープニングを完全再現
『フットルース』や『アルマゲドン』など、1980〜90年代にかけて音楽が映画の看板になる作品が大量に製作された。『トップガン』は、そのマスターピースといえる作品である。製作のジェリー・ブラッカイマーはドン・シンプソンと『フラッシュダンス』を手掛けた。主題歌である「フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリング」を聴けば、誰しも『フラッシュダンス』をイメージするように映画と音楽を強力に結びつけた。
次作『ビバリーヒルズ・コップ』でその技術をものとし、3作目『トップガン』で究極に達した。特にオープニングは印象的だ。時代背景の説明が、重厚感ある金属音と共に流れ、黄金色に染まる飛行甲板で技術者たちが汗水を垂らしながらフライトの準備をする。そして、ケニー・ロギンスの「デンジャー・ゾーン」が流れる。
『トップガン マーヴェリック』では、これを超えるオープニングを生み出すことができるのだろうか。
音楽が流れ始める。重厚感ある金属音と共に以下の説明が表示される。
1969年3月3日米海軍はトップ1%のパイロットのためにエリート学校を設立した。
目的は、失われつつある空中戦の技術訓練。
世界最高のパイロット学校の呼び名は...トップガン
黄金色に染まる飛行甲板で技術者たちがフライトの準備をする。「デンジャー・ゾーン」が流れる。
お気づきだろうか?
『トップガン』のオープニングを完全再現するところから物語は始まるのだ。頂点を極めた演出に、真正面から向き合う。『トップガン』の音楽といえば「デンジャー・ゾーン」。それを完璧に踏襲することで、30年以上前を知る者には懐かしさが、今回はじめてこの世界観に浸る者は当時と変わらぬ高揚感を抱くことができる。
■教官目線の『トップガン』
トップガンを卒業してから海軍大佐になったマーヴェリック。彼はパイロットとして活躍し続けるために昇進を断り、引退もせず、30年以上現役で高みを目指してきた。しかし、時代の流れで海軍は無人機の開発に予算投入することとなり、マーヴェリックのプロジェクトが凍結される危機にあった。そこで引き下がる彼ではない。無許可でテスト飛行を行い、目標のマッハ10を出すことに成功するのだ。しかし、調子に乗って更なる速さを求めた結果、テスト機を大破させてしまう。これがきっかけでマーヴェリックは赴任を言い渡される。かつて、敵機MIG-28を追い払う成果をあげるも、パニック状態となった仲間を救うために命令を無視し、上官からの叱咤と共にトップガンへ赴任することになったマーヴェリックが、今回は教官として異動となるのだ。
核兵器開発用プラントを破壊するため、トップガンを卒業したエリートを集めて指導することになったマーヴェリック。様子を確認しにBARへ訪れる。BARはマーヴェリックにとって思い出の場所でもある。彼がトップガンの訓練生だった頃、BARでチャーリー(ケリー・マクギリス)に一目惚れした。グイグイ口説いて親密になったと思ったら、教官だったのだ。
若者で賑わい、混沌とするBAR。思い出と訓練生の未来を考えているうちに、飲み代が足りなくなる。そして、事情を知らぬ訓練生たちによってバーから追い出された。後日、教員紹介の場でマーヴェリックが登壇し、訓練生たちをニヤつかせる。本作は教官目線の『トップガン』であり、前半における話の骨格は同じである。
では『トップガン マーヴェリック』は、過去の再現にすぎないのか?
答えは「否」である。
ノスタルジーをバネに更なる高みへ急上昇していくのだ。
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