そうして人間の弱さを受け入れる強さを持ち、美しさや希望に変換していく魅力は、日本のロックを語る上で絶対に欠かすことのできない稀代のパンクバンドであり、〈ドブネズミみたいに 美しくなりたい〉と歌ったTHE BLUE HEARTSとも共通する。BiSHは「楽器を持たないパンクバンド」と呼ばれるが、それはやはり言い得て妙なのだ。
メンバーの歌詞ににじむ“生き様”
メンバーたちが書いた歌詞にも、そんな生き様は色濃くにじむ。
アユニ・Dは、〈みんなが僕をバカにすんだ ナメんな〉〈精神がおかしくなっちゃっても ゴミじゃない 知ってた? ここで寝てちゃだめでしょ to die or 生〉〈あの子がさほざいてた 人はいつか死ぬと 本当に本気を見せないと〉(『本当本気』)と、セントチヒロ・チッチは、〈あまりに脆いね 人間らしさって 傷つきやすいのね〉〈足りない足りない なんでもいいから 言葉が欲しい〉(『I’m waiting for my dawn』)と言葉を紡いだ。
6人6様の物語でそれぞれが初主演するオムニバス映画『BiSH presents PCR is PAiPAi CHiNCHiN ROCK’N’ROLL』が、6月10日に公開されるのだ。
アユニ・D『オルガン』
BiSHのドキュメンタリー映画『ALL YOU NEED is PUNK and LOVE』を手掛けたエリザベス宮地が監督を務め、アユニ・Dが主演した『オルガン』、行定勲監督でセントチヒロ・チッチが主演した『どこから来て、どこに帰るの』など、6本の短編映画は人間の業を、おかしみを、訳のわからなさを描きながら、やはり美しく、映像の中に彼女たちの生き様が宿る。