「悪女(わる)」第10話:私たちはみんな“六等星”。麻理鈴が教えてくれた理想の会社の作り方
深見じゅん原作の人気コミック「悪女(わる)」が、30年の時を経て再びドラマ化。
今作がドラマ初主演となる今田美桜が三流の大学を四流の成績で卒業した、ポンコツだけどポジティブな新入社員・田中麻理鈴を演じる。共演に江口のりこほか。
本記事では、第10話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。
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「悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~」第10話レビュー
ポンコツだけど型破りな新入社員・田中麻理鈴(今田美桜)。できない、でもめげない。そんな彼女が憧れの人に近づくため、会社の最下層からステップアップを目指してきたドラマ「悪女(わる)」がついに最終回を迎えた。「女性の管理職五割計画」(通称:JK5)を巡り、ギスギスした空気が流れ始める「オウミ」。男性社員の中には早期退職を迫られる者もいれば、新しく管理職の座についた女性社員の足を引っ張ろうとする者も。
一方、女性社員の中には管理職を目指しながらも、理想と現実の狭間で思い悩む者。さらには、上を目指さなければ、会社から必要とされなくなると怯える者まで出てきた。そこには、どうやら「ガラスの天井」と「ガラスの地下室」があるらしい。
「ガラスの天井」とは、女性やマイノリティが組織内で十分な素質や実績を持っているにもかかわらず、昇進が制限されている現状。かたや、「ガラスの地下室」とは、男性が収入と引き換えの危険な職種や長時間労働につき、自殺・事故・病気による死亡率が高く、過酷な状況に置かれている現状を表す言葉だ。
これまで女性の働き方について問題提起してきた本作だが、ここにきて男性の“地獄”を突きつけてきた。じゃあ、なぜ彼らは自ら問題提起しようとはしないのか、弱音を吐けばいいのに、と思うかもしれない。
その理由は第10話の冒頭で麻理鈴の想い人であるT・Oさん(向井理)が語っている。「話したところで解決にはならないと、話す前から諦めてしまうからだ」。
峰岸と袂を分かち、独自に「JK5推進室・分室」を開設した麻理鈴はそんな現状を変えるため、だれでも匿名で悩みを打ち明けられるチャットをつくる。
そこには、続々と男性と思われる社員から色んな書き込みがあった。妻から家事育児のプレッシャーがすごい、PCの電源を入れると涙が出てくる、などなど。一つひとつの相談内容から男性が置かれている現状が透けて見える。
家事や育児に参加できない、仕事を休みたいと言い出せない。色んな「できない」がそこにある。JK5推進室はこれまで、女性社員の「できない」には真摯に向き合っていた。だけど、男性社員の「できない」には見て見ぬ振りをしてしまったから、不公平が不協和音を生んでしまったのかもしれない。
結果的に不倫と経費の不正利用を暴かれて退職に追い込まれてしまった社員に恨みを買い、週刊誌にオウミの現状をリークされてしまった。峰岸が責任を問われ、会社を辞めてしまうかもしれない。そこで立ち上がるのが、麻理鈴だ。
麻理鈴は緊急全社説明会の場で、峰岸の頑張りに救われた人たちの声を紹介する。男性社員からは育休を普通に取れるようになって嬉しい、管理職を目指さなくてもいいことが分かってホッとした、女性からは管理職を目指してみたいという意見も。一旦世間の常識が覆されたことで、色んな人が声をあげられるようになったのかもしれない。
「そして、この人たちの最大の悩みはロールモデルがいないこと」
「峰岸さんが険しい道を切り開いてくれたら、田中がその後を楽々と続きます。世界一ハードルの低いロールモデルになってみせます」
「ガラスの天井、みんなで破れば怖くないです!」
そんな麻理鈴の言葉が、どんなに頑張っても現状は変わらないと諦めかけていた峰岸の心を動かす。
「何も変わらないって諦めるのは楽です。でも、信じましょうよ。私たちだけでも。信じましょう、一歩ずつ前に進めるって」
性別や年齢にかかわらず、一人ひとりに人生がある。事情がある。困難がある。できませんって言うことは怖い。できないから助けてくださいって言うのはもっと勇気がいる。わがままだと思ってしまうから。
でも、もし誰かが口にしてくれれば、それに会社が対応してくれれば。後に続く人たちはもっともっと楽になる。できない、でもめげない。諦めず、時には図々しい悪女(わる)になって、自分の権利を主張できる麻理鈴みたいな人が増えたら、みんなが働きやすい会社に変わっていくのではないだろうか。
ポンコツ社員・田中麻理鈴の成長物語を描いたお仕事コメディかと思いきや、とてつもなく丁寧に男性と女性の両方からの視点で日本の働き方問題に向き合った社会派ドラマ「悪女(わる)」。
笑って、泣けて、最後に心が温まる。明日からまた頑張ろうと思わせてくれる。そんな作品だったと思う。最後に、このドラマを第1話から彩った主題歌「六等星」(J-JUN with XIA(JUNSU))のフレーズを一部だけ紹介したい。
〈暗闇の中で光れ 誰かを照らせるように/零れそうな 涙を堪えて わたしは生きてる〉
綺麗な星空や夜景の下で、誰かが今日も涙を堪えながら生きている。それぞれの人生に“地獄”があって、孤独や悲しみを胸に抱えて一日、一日を過ごしている。その事実を理解するところから始めればいい。みんな辛いんだからと、突き放すのではなく、隣に座って一緒にどうすればいいかを考える――本作はそんな優しいドラマだった。
(文:苫とり子)
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