映画ビジネスコラム

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2022年06月25日

是枝監督らが設立を求める日本版「CNC」とは?|映画界にもサステナビリティを

是枝監督らが設立を求める日本版「CNC」とは?|映画界にもサステナビリティを


2つの支援で好循環を創出

CNCの支援には大きく分けて2タイプあります。

1)自動支援:後述しますが、CNCの財源は、映画の興行収入や放送局の収入、ビデオ販売や配信収入の一部から徴収される特別税から成っています。それらの売上から一定の割合で徴収されるのですが、その貢献度合いに応じて自動的に分配する仕組みが自動支援です。
すごく大ヒットした作品を作った会社は、それだけ多くのお金を徴収されますが、それだけCNCに貢献したことになるので、その分大きな還元が受けられ、次回作や次の事業の投資に充てることができます。つまり、映画をヒットさせれば高い税金を取られるだけじゃなく、それに見合った還元もあるよということです。

2)選択支援:選択支援は、市場の競争原理では淘汰されがちなタイプの作品への支援です。有望な新人監督の企画や、芸術性は高いが商業的には成功しにくいタイプの作品などを支援し、映画産業全体に多彩な作品が生まれ続けるようにバランスを取るためのもので、典型的な文化支援と言えると思います。

CNCは単に芸術的案映画への支援だけでなく、ヒット映画を作るモチベーションも生み出し、産業としても発展させることを考えて自動支援というやり方を持っているのが特徴です。ヒット作が増えれば財源も増えて選択支援も充実させられるという好循環を生み出そうということでしょう。

全体の予算に対して、自動支援の割合は概ね6~7割、残りが選択支援というバランスのようです。芸術性の高い作品を支援する額よりも、自動支援の方が割合としては大きいんですね。

財源は?

気になるのは財源です。すでに言及しましたが、CNCの財源は主に映画館の興行収入やテレビ放送局収入、ビデオ販売や配信の売上の一部を特別税として徴収することで賄っています。設立当初は映画館の収入の一部を徴収する形でスタートし、時代とともにテレビやビデオ、さらにはオンデマンドや配信からも徴収するようになっていきました。映像業界の変化に対応するように財源の徴収先も、支援対象も拡大・変化させてきているわけです。

具体的にCNCの年間予算はどれくらいかというと、日本円にして約913億円(2019年のデータ)だと会見で語られていました。一方、日本は国家の助成金は80億円だそうで、10倍以上の開きがあります。他の欧州各国や韓国と比べてもフランスの予算は突出して潤沢ですが、日本は逆に突出して低い金額と言えます。

ちなみに、CNCの財源で現在最も大きな割合を占めているのはテレビ放送からの徴収で、全体の約7割を占めています。したがって自動支援で割り当てられる額もテレビ向けが一番多いです。映画支援として有名なCNCですが、実はテレビが一番お金を動かしています。

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